第56話 どきどきして夜寝れなくなるかも

 学園祭が終わってから2週間近くが経過したわけだが、俺の学校生活は大きく変化していた。もはや俺への好意と自分達がヤンデレである事を隠す必要の無くなった玲緒奈と里緒奈は色々とやりたい放題だ。

 学校でキスを迫ってきたり、休日の行動を完全に監視されていたりなど挙げるときりがない。ちなみに後夜祭が終わった日の夜、実質的な初体験も2人に奪われる形で済ませた。

 一生童貞の可能性もあると思っていたので、高校生のうちに卒業するというのは完全に予想外だった事は言うまでもないだろう。

 ちなみに玲緒奈と里緒奈から将来責任を取ってもらうなどと言われた事を考えると、俺はもう2人から一生逃げられないに違いない。

 もし逃げだしたとしても地の果てまで追いかけてきそうな気がする。例え異世界転移しても玲緒奈と里緒奈なら何かしらの手段で追いかけてくるのではないだろうか。


「涼也君、あーん」


「……うん、美味しい」


「私とお姉ちゃんが一生懸命作ったんだから美味しいに決まってる、どんどん食べて」


 昼休みの現在、俺はで玲緒奈と里緒奈からお弁当を食べさせてもらっていた。玲緒奈と里緒奈は口移しで食べさせたがっていたが、流石にそれは断っていた。だから箸で普通に食べさせて貰っている。

 めちゃくちゃ周りに見られながら食べさせてもらうという行為も2週間経てば慣れてきていた。いや、感覚が麻痺したというべきだろうか。

 いつものベストプレイスでは無く教室でお昼を食べるようになったのは八神涼也が自分達のものであると周りにアピールするためだとか。

 後夜祭で俺の逃げ道を完全に塞いだけでは飽き足らないようだ。悪い虫が寄ってこないようにするためらしいが、俺のどこにそんな魅力があるのか自分自身ではよく分からない。

 ちなみに玲緒奈と里緒奈に俺のどこに魅力を感じたのか尋ねたところ、1時間以上も一方的に喋られた事はまだ記憶に新しい。


「そう言えば明日からついにお待ちかねの修学旅行だね」


「ああ、ちょっと前に学園祭が終わったばかりな気がするから本当あっという間だよな」


「京都には前々から行きたかったから楽しみ」


 教室内は明日から始まる修学旅行の話題で持ちきりだ。今回の修学旅行は北海道と沖縄、京都という3択だったわけだが、俺達は夏休み前に提出した希望調査で京都を選んでいた。

 初日である明日は朝から東京駅に集合して新幹線で京都駅まで移動、そこから京都ツリーや清水寺などを観光するスケジュールとなっている。

 2日目の明日は1日中自由行動で3日目の明後日は太秦シネマ村の観光というのが今回の修学旅行の流れだ。


「今夜はどきどきして夜寝れなくなるかも」


「そうなのか?」


「お姉ちゃんは小学校と中学校の修学旅行前日の夜に寝れなくなってた、多分今回もそうなる」


 大人びている玲緒奈だが、意外と子供っぽい一面もあるようだ。結局昼休みが終わるまで修学旅行に関する会話で盛り上がるのだった。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





 あっという間に一夜が明け、俺達は新幹線に乗って京都へと移動をしていた。ちなみに玲緒奈は案の定昨晩寝れなかったらしいが、元気いっぱいな様子だ。


「涼也君、里緒奈見て。窓の外がめっちゃ京都っぽいよ」


「本当だ、五重塔が見える」


「お姉ちゃん、テンション高過ぎ」


 東京駅で新幹線に乗ってから既に2時間が経過していたが、ようやく京都駅に到着するらしい。新幹線を降りた後は京都駅で集合写真の撮影をする流れとなっている。


「えっと……集合写真は京都駅ビルの大階段前で撮るみたいだな」


「あっ、あそこって確か空が見えるところだよね」


「そうそう、今日は晴れてるから絶対良い感じの映えそうな写真になると思う」


 旅行のしおりを見ながら玲緒奈とそんな事を話しているうちに新幹線が京都駅に到着した。周りと一緒に新幹線から降りて、そのまま駅ビルの大階段前まで移動を始める。


「やっぱり外国人観光客が多いな」


「京都は人気の観光地だからね。私達のおばあちゃんも京都は好きだって言ってたよ」


 その言葉を聞いて玲緒奈と里緒奈の祖母がイギリス出身だという事を思い出した。


「万が一話しかけられたれ助けてくれよ、俺の英語力だとまともな会話になるか分からないから」


「私とお姉ちゃんに任せて」


「うん、英語ならよっぽど訛ってない限りは基本的に大丈夫だから」


 日英クォーターの2人は子供の頃から英語に触れてきていたため、英語のテストは常にほぼ満点であり会話程度なら朝飯前なのだ。母親であるエレンさんというネイティブスピーカーの存在は大きいに違いない。

 そんな会話をしているうちに大階段前に到着した俺達は引率している教師の指示に従って整列をする。そしてそのまま写真撮影を行った。


「次は京都ツリーか」


「すぐそこみたいだね、もう見えてるし」


「京都市内で一番高い建物だから目立つのは当然」


 運が良いと京都ツリーの展望室から大阪方面まで見えるとしおりに書かれているため今から楽しみだ。

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お待たせしました、修学旅行編スタートです〜

小説家になろうやアルファポリスから来られた方は今話から分岐となります

また里緒奈のイラストを頂いたので紹介します!

https://kakuyomu.jp/users/Ash3104/news/16817330660074602931

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