★1500記念

外伝⑤ 二人を出し抜いた澪ちゃんによる涼也君監禁エンド



 高校を卒業してから早いもので2年が経過し、俺は大学3年生になっていた。第一志望だった倉敷市立大学に合格した俺は実家を離れて倉敷に住んでいる。

 まあ、玲緒奈と里緒奈も一緒に住んでいるため一人暮らしではないが。最初は3人で暮らす事に不安もあったが、2年も経てばすっかり慣れてしまった。もはや玲緒奈と里緒奈との共同生活は当たり前の事になっている。


「それにしてもこっちに帰るのは正月ぶりか」


 GWの初日の今日、俺は新幹線に乗って東京の実家まで帰ってきていた。新幹線を使っても倉敷と東京間は3時間半近くかかるため、移動だけでかなり大変だ。

 ちなみに玲緒奈と里緒奈は大阪であるライブに参加してから帰るとの事なので、ここ最近の俺としては珍しく1人で行動している。


「お兄ちゃん、久しぶり」


「あっ、澪も帰ってきてたんだな」


 玄関で靴を脱いでいると澪から出迎えられた。澪も県外の大学に進学して実家を出て暮らしているため、GWを利用して帰省してきたのだろう。


「まあ、今夜あっちに戻る予定だけどね。今回はちょっと用事があって一瞬帰ってきただけだから」


「そっか、澪も結構忙しいのか」


 澪の用事が何なのかは知らないが、わざわざ実家まで帰ってきたという事を考えるとかなり重要な何があるのだろう。この時の俺はその程度にしか考えていなかった。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「どこだここ……?」


 目を覚ました俺の視界には見知らぬ天井が飛び込んでくる。どうやらベッドの上にいるらしいが、ここがどこかは全く分からなかった。

 とりあえず起きあがろうとする俺だったが、なぜかベッドから上手く起き上がれない。よく見ると手足が手錠でベッドに固定されていた。


「……えっ、状況が全く分からないんだけど」


 澪と一緒に夕方までショッピングをして、それから居酒屋で食事した事までは覚えているのだが、そこから先が全く思い出せそうにない。

 澪から勧められるがまま強い酒を飲んでいたため、酔って記憶が飛んでしまった可能性が濃厚だ。そんな事を考えていると扉の開く音とともに誰かが部屋に入ってくる。


「あっ、起きたんだ」


「その声は澪か。居酒屋から後の記憶が全く無いから今の状況が全く分からないんだけど、とりあえず手と足の手錠を外してくれないか?」


「ごめん、それは無理。悪いけど外す気は無いから」


 なんと澪から速攻で拒否されてしまった。外す気がないという口ぶり的に澪の仕業である事は間違いないはずだ。


「いやいや、一体何が目的だよ。てか、そもそもここってどこだ?」


「ここは実家から遠く離れた場所にある私とお兄ちゃんがこれから一緒に暮らす新居だよ」


 はっきり言って澪が何を言っているか全く意味が分からなかった。俺と澪が一緒暮らす新居とはどういう事だろうか。ひょっとして1ヶ月遅れのエイプリルフールだろうか。


「あっ、そうそう。私とお兄ちゃんは一緒に駆け落ちした事になってるからよろしくね」


「えっ!?」


 とんでもない言葉が澪の口から飛び出してきたため、俺は自分の耳を疑った。駆け落ちなんかテレビの中でしか聞いた事が無い単語だ。


「じ、冗談だよな……?」


「これが冗談に見える?」


 真剣な顔でそう聞き返された俺は言葉を失ってしまう。澪のただならぬ様子を見て俺は冗談ではない事をようやく悟った。


「私の気持ちにいつまで経っても気づいてくれなかったお兄ちゃんが全部悪いんだよ。だから監禁して私だけのものにする事にしたから」


「か、考え直せ。いまならまだ間に合うから」


 このままでは流石にまずいと思った俺は何とか澪の説得を試みる。もしかしたら考え直してくれるかもしれないという淡い期待を俺は捨てきれなかったのだ。


「お兄ちゃんを監禁するためにずっと前から準備してきてたのに今更辞めるわけないでしょ。ようやく剣城先輩達とも引き離せたんだし」


「……ひょっとしてまさか玲緒奈と里緒奈に大阪であるライブのチケットをプレゼントしたのはお前か?」


「うん、そうだよ。あの2人が近くにいたら私の邪魔されそうだったからライブで足止めする事にしたんだよね」


 2人が好きなアーティストのライブチケットをSNSの知り合いから譲って貰ったと言っていたが、その正体は澪だったらしい。


「そろそろお兄ちゃんが行方不明になった事には気づいてるとは思うけど、私達の行き先については誰にも話してないから見つけるのは無理だと思うな」


 どうやら玲緒奈と里緒奈は完全に澪から出し抜かれてしまったようだ。


「それと言い忘れてたけど駆け落ちの時は警察に捜索願いを出されても基本的に捜索はしてくれないから。それに株とFXで結構儲けたから金銭面も問題ないよ」


「……詰んでるじゃん」


 もはや完全に八方塞がりであり、ここから助かる未来が全く思い浮かばなかった。だから抵抗する気すら起きなくなってしまった事は言うまでもない。


「お兄ちゃんの身も心も私だけのものにするから覚悟しておいてよね」


 こうして俺は澪に全てを奪われて監禁される事となった。

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以上、外伝リクエスト第五弾でした!

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