第34話 涼也とお姉ちゃんもそれでいいよね?

「……そろそろ今日は終わりにしよう」


「やっぱり机に向かいっぱなしだと結構疲れる」


「だよね、流石に集中力が切れちゃうよ」


 午前中から里緒奈の部屋で夏休みの宿題をやる俺達だったが、昼休憩を挟みつつ何時間もぶっ通しでやっていたため俺と玲緒奈はかなり疲れていた。

 平気そうな顔をしている里緒奈も多分表情に出していないだけで疲れているに違いない。だがそのおかげで宿題はかなり捗った。

 オープンキャンパスのレポート作成や数学の問題集、英語の作文など1人では苦戦しそうだった宿題がすんなり終わったのだ。


「このペースでいけば宿題も案外早く終わるかもな」


「確かに3人だと効率はいいよね」


 特に学年トップの里緒奈がいたおかげで詰まってもすぐ解決できた事はかなり大きい。はっきり言って悪戦苦闘した去年とは大違いだ。


「明日も今日と同じように勉強しよう。涼也とお姉ちゃんもそれでいいよね?」


「うん、勿論だよ」


「大丈夫、むしろ俺1人だと全くやる気にならないから頼みたかったくらいだし」


 里緒奈からの問いかけに対して俺はそう答えた。楽しい夏休みを過ごすためにも宿題という名の爆弾は早めに処理しておきたい。


「明日もよろしく、今日と同じで涼也が部屋に来たら始めるから」


「ああ、よろしくな」


「夏休みの宿題も明日で終わらせたいよね」


 そんな話をしながら俺達は机の上に広げていた問題やプリント、筆記用具を片付ける。


「じゃあ、俺はそろそろ帰るな」


「あっ、涼也君。ちょっと待って」


「……どうしたんだ?」


 カバンの中に荷物を全てしまった俺が帰ろうとしていると玲緒奈から呼び止められたため足を止めて振り返った。


「実は朝涼也君が来る前に里緒奈と一緒にチーズケーキを作ってたんだよね」


「自信作だから涼也に食べて欲しい」


 2人の言葉を聞いてめちゃくちゃ嬉しい気持ちになった俺は笑顔を浮かべながら口を開く。


「おっ、いいな。チーズケーキは大好きだからぜひご馳走になるよ」


「準備してくるから涼也とお姉ちゃんは座って待ってて」


 そう言い残すと里緒奈は部屋から出ていく。しばらく玲緒奈と雑談していると里緒奈がおぼんの上に3人分のチーズケーキと飲み物を載せて部屋に戻ってきた。


「お待たせ」


「2人とも作ってくれてありがとう、いただきます」


「うん、いただきます」


 早速チーズケーキを食べ始める俺だったがめちゃくちゃ美味しかったため、食がどんどん進んだ。大満足の俺だったが徐々に瞼が重くなってきた事に気付く。


「……なんか眠いな」


「多分昨日と一昨日の疲れがまだ残ってるんじゃない? 私もまだ疲れが抜け切ってないしさ」


「言われてみればそんな気がする」


 オープンキャンパスと倉敷観光は楽しかったが、それと同時にかなり疲れてもいた。一晩寝ただけでは休息が不十分だったのかもしれない。


「涼也結構眠そうだし、少し寝たら?」


「……そうだな、そうさせてもらうよ」


 俺は家族のグループチャットに少し帰りが遅くなるいうメッセージを送ってから、そのまま意識を手放した。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「……ねえ里緒奈、それいつまで続けるの?」


「私の気が済むまで」


 私は睡眠薬が効いて眠ってしまった涼也にキスをしていた。昨日お姉ちゃんと涼也が観覧車の中でキスした事があまりにも羨ましかったため、こうやって唇を重ねている。

 何度何度も涼也の唇を奪い、私はそれをひたすら堪能する。それだけで体を重ねた時と同じくらい心が満たされるから不思議だ。本当はお姉ちゃんと同じように意識がある状態の涼也とキスをしたい。

 だが涼也の意識がある時にする初めてのキスとエッチに関してはロマンチックなシチュエーションがいいと前々からお姉ちゃんと決めていたため、今回はこれで我慢をするしかなかった。

 ちなみに観覧車の中での涼也とお姉ちゃんのキスに関しては不慮の事故によるものであるためノーカウントだ。


「……もう満足した」


「じゃあいつも通り」


 私とお姉ちゃんは服を脱いで生まれたままの姿になろうとするが、ここで想定外のハプニングが起こってしまう。


「……今何時だ?」


 なんと涼也君が目を覚ましてしまったのだ。もしかしたらアイスティーの中に混ぜた睡眠薬の量がいつもよりも少なかったのかもしれない。


「あっ、涼也君起きたんだ」


「涼也、思ったよりも起きるのが早かった」


 起き上がる涼也に対して私達は平静を装ってそう声をかけた。完全に寸止めされる形になってしまったため私は今かなりムラムラしている。多分お姉ちゃんも私と同じ状態に違いない。

 私達がそんな事になっているとは想像すらしていない涼也はスマホの画面を見た後ゆっくりと立ち上がる。


「家族が待ってると思うし、今度こそ家に帰るわ。今日はありがとう」


「うん、また明日」


「またね涼也」


 本当は帰って欲しくなかったが、私もお姉ちゃんも涼也を黙って見送る事しか出来ない。結局私達姉妹は涼也の部屋から拝借してきた下着やボールペンなどのアイテムを使って興奮した体を慰める羽目になった。

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