第32話 優秀な妹がいてお姉ちゃんは嬉しいよ
お化け屋敷を出た俺達は空中ブランコ、迷路、ボートを楽しんだ後、フードコートで少し遅めの昼食を食べながら雑談している。
ちなみに倉敷ミラノ公園内には食事できるレストランが複数箇所にあるわけだが、メニューの幅が広いという理由でフードコートを選んだ。
「やっぱりテーマパークは楽しいね」
「時間が経つのが早い」
「普段中々来れないから余計にそう感じるのかもな」
コーヒーカップを回し過ぎて玲緒奈が酔ったり、お化け屋敷で里緒奈がキャラ崩壊するほど絶叫したりと色々あったが、俺達は何だかんだ楽しんでいる。
「食べ終わったら今度はどこに行く?」
「次はジェットコースターとかどうかな?」
「私もジェットコースターに行きたい」
食事の手を止めてパンフレットを見ていた玲緒奈がそんな提案すると、里緒奈も賛成の声をあげた。俺も特に反対する理由は無いためジェットコースターで決まりだ。
「オッケー、そうしよう」
「じゃあ早く食べて行こうか。多分順番待ちの列が凄そうだし」
「さっき見た時はかなり並んでた」
俺達は残っていた食事を完食すると、ジェットコースターへと向かい始める。そしてジェットコースターの前に到着すると予想していた通り長蛇の列ができていた。
「1時間待ちか……やっぱり結構待たされるね」
「人気アトラクションだから仕方がない」
「何をして時間を潰そう?」
「テーマパークに来たら毎回困るんだよね」
俺と玲緒奈がそんな事を悩み始めていると里緒奈が自信満々な表情で話し始める。
「こうなると思って暇つぶしに3人で遊べそうなクイズアプリをダウンロードしてる」
「里緒奈、ナイス。優秀な妹がいてお姉ちゃんは嬉しいよ」
「それでどんなクイズアプリなんだ?」
「ちょっと待って、今ルールを表示させるから……」
俺達は里緒奈のスマホ画面に表示されたクイズのルールを読み始める。どうやら1人が出題者になって残りが質問者兼回答者となり、出題者は考えさせるようなストーリーを話す。
そして質問者はYESかNOで答えられる質問を出題者にして、出題者が考えるストーリーを推測するクイズらしい。
ちなみに質問者が問題に関係ない質問をしてきたら関係ないと答え、ストーリーを解明出来たら終わりとなる。
「なるほど、ようは1人がアプリに表示された問題を読み上げながら質問に答えて、残った2人が質問しながら情報を集めて推理していくって事だな」
「そう言う事、涼也もお姉ちゃんもルールを理解したみたいだから早速始めよう。まずは私が出題者になる」
「涼也君、一緒に頑張ろうね」
玲緒奈はやる気満々と言った様子だ。もしかしたら玲緒奈はこんな感じのクイズが好きなのかもしれない。
「マイケルとソフィアはとある民家の床で息絶えていました。死体のそばには、割れた水槽。彼らの体に傷はなく、毒を飲んだ形跡もない。死亡時、民家には誰も居なかった。ではマイケルとソフィアはなぜ死んだでしょう?」
里緒奈がアプリから読み上げた問題を聞いて俺は早速質問をする。
「マイケルとソフィアが自殺したからとか?」
「NO、それは違う」
何かしらの方法で自殺したのでは無いかと思ったが、どうやら違うらしい。今度は玲緒奈が質問を投げかける。
「ひょっとしてマイケルとソフィアは恋人同士?」
「この問題には関係ない」
という事はマイケルとソフィア2人の立場や身分などはこの問題においては考慮する必要がないのだろう。そんな事を考えていると玲緒奈がまたまた口を開く。
「じゃあ割れた水槽はマイケルとソフィアの死因に関係してる?」
「YES。死因に割れた水槽はめちゃくちゃ大きく関係してる。
こんな感じで俺と玲緒奈は里緒奈にYESかNO、関係ないで答えられる質問をしばらくの間繰り返していった。
「……あっ、答えが分かったかも」
「じゃあお姉ちゃん答えてみて」
俺は色々と情報を聞いても正直まだ全然ピンと来てなかったが、どうやら玲緒奈は答えが分かったようだ。
「マイケルとソフィアは人間じゃなくて魚で、死因は水槽が割れて床に放り出されて、えら呼吸できなくなって窒素死したから」
「正解、こんなに早く当てられるとは思ってなかった。流石お姉ちゃん」
「……なるほど、確かに人間とは一言も言ってなかったもんな」
玲緒奈の解答を聞いてようやく納得できた。俺が答えにたどり着けなかったのはマイケルとソフィアを人間だと思い込んでいたからに違いない。
それから出題者をローテーションで交代しながらクイズアプリで遊んでいるうちに気付けば待ち時間の1時間が経過していた。
「おっ、ついに俺達の番だな」
「クイズアプリのおかげであっという間だったね
「楽しかった」
そんな話をしながら係員に案内されてジェットコースターに乗り込むと上からゆっくりと安全バーが下ろされ、アナウンスの後に発進する。
最初は大して怖くないと完全に油断していた俺だったが、すぐにその考えは誤りであると気付く。発進直後は比較的緩やかだったコースが中盤辺りから一気に激しくなったのだ。
俺は絶叫マシンがあまり苦手な方では無いが、それでもかなりの恐怖を感じていた。ちなみに隣に座っている里緒奈も怖いらしく顔をこわばらせている。
「めちゃくちゃ楽しかった」
「ああ……」
「……そうね」
ようやく乗り場に到着したジェットコースターから降りた俺達だったが、満面の笑みを浮かべた玲緒奈に対して俺と里緒奈は顔が死んでいた。
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