夏休み編

第23話 うん、涼也君のお手並みを拝見するね

 終業式が昨日終わりいよいよ今日から夏休みに突入したわけだが、実質的な休みはまだ先となっている。なぜなら夏休み初日から進学校特有のイベントである強制参加の補習が10日ほどあるからだ。

 しかも夏休み後半にもあるため半分くらいは補習で潰れてしまう計算になる。午前中で終わるとはいえ、いくらなんでも多すぎではないだろうか。


「これだけ補習で休みを潰すんだからもう少し課題を減らして欲しいよな」


「中学生の時と比べて休みは短くなってるのに課題は増えてる気がするもんね」


「でもやるしかない」


 俺はいつも通り玲緒奈と里緒奈と一緒に登校しながらそんな事を話している。ちょっと前までは2人と一緒に学校へ行く事にはかなりの抵抗を感じていたが、いまではそれが無くなってきつつあった。

 多分慣れてきたのだろう。美少女2人と一緒に登校するなんて少し前までは考えられなかった事なので、本当に人生何が起こるか分からないものだ。

 ちなみに毎朝彼女達に家まで迎えに来てもらう事は辞めて貰っていた。学校とは正反対の方向にある俺の家に毎朝寄るのは玲緒奈と里緒奈の負担が大き過ぎると判断したからだ。その代わり俺が2人を家まで迎えに行くようになっている。


「そう言えば涼也君は今日の放課後って何か予定ある?」


「ぼっちの俺に予定なんてあると思うか?」


 玲緒奈の質問に対して俺はすぐさまそう答えた。すると玲緒奈と玲緒奈はちょっと意地の悪そうな顔で口を開く。


「だよね、涼也君ならそう言うと思ってたよ」


「涼也だから仕方がない」


「……さらっと毒を吐くな、あんまり言われたら流石の俺でも泣いちゃうぞ」


 俺が泣き真似をしながらそう話すと彼女達は一応謝り始める。


「涼也、本当の事を言ってごめん」


「確かにぼっちの涼也君にそんな残酷な事を聞くのは可哀想だったね、反省するよ」


「謝られたはずなのに全然謝られた気がしないんだけど……」


 むしろ追加でダメージを与えられたようにしか感じられなかった。玲緒奈と里緒奈は意外とSなのかもしれない。


「ふざけるのはそろそろ終わりにして、放課後空いてるならさ、3人でフェイズワンに行かない?」


「フェイズワンか、ちなみに何するつもりだ?」


 複合型アミューズメント施設であるフェイズワンにはボウリング場やカラオケ、ゲームセンターなどがあるため色々と楽しめる。


「私と里緒奈はカラオケとゲームがしたいんだよね」


「実はクレーンゲームとカラオケが好き」


「分かった、一緒に行こう」


 どうせ家に帰ってもソシャゲとエロ動画を見てオナニーする事くらいしかする予定が無かったため、俺は二つ返事でそう答えた。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「……うー、悔しい。もう1回」


 放課後フェイズワンに来た俺達はとりあえずクレーンゲームをやり始めたわけだが、よっぽど景品が欲しいのか玲緒奈が台の前から動かなくなってしまった。

 もう既に三千円くらい使っているが一向に取れそうな気配は無い。ちなみに玲緒奈が取ろうとしているのは最近公開されたアニメ映画のグッズだ。


「そろそろ諦めない? これだけやっても取れないなら正直難しいと思うしさ」


「嫌だよ、絶対に取るから」


 俺の言葉に対して短くそう答えた玲緒奈は百円玉を台に入れ始めた。そんな俺達の様子を見ていた里緒奈が話しかけてくる。


「こうなったお姉ちゃんは昔から梃子でも動かない」


「そっか、玲緒奈は結構諦めが悪いタイプなんだな」


 しばらく玲緒奈を後ろから見守る俺達だったが、近くの台で同じタイプの景品を取ろうとしているカップルがいる事に気付いた。

 多分玲緒奈と同じように苦戦するに違いないと思いながら横目でチラチラ見ていたが、なんと五百円くらいで取ってしまったのだ。


「……なるほどな、そうやって取ればいいのか」


 この台の攻略法に気付いた俺は再び台に百円玉を入れようとしていた玲緒奈の隣に移動して口を開く。


「ちょっと俺にやらせて貰ってもいいか?」


「うん、涼也君のお手並みを拝見するね」


 俺は台に百円玉を数枚入れるとさっそくクレーンを動かし始める。玲緒奈は持ち上げて取ろうとしていたが、俺はアームを使って景品を少しずつ2本あるバーの上から少しずつずらす。

 そして景品がバーの間に半分落ちるような位置まで移動させてアームで上から押さえつける。それを数回繰り返してバーの間に押し込み続け、無事に落下させる事に成功した。


「よっしゃ、取れた」


 俺が取り出し口から景品を取り出そうとしていると後ろから玲緒奈が思いっきり抱きついてくる。


「涼也君、凄いよ」


「ち、ちょっと胸が当たってる!?」


 柔らかい胸の感触で下半身が元気になり始めていたため、かなりやばい状況だ。このままでは勃起している事が2人にバレてしまうかもしれない。


「お姉ちゃん、涼也が困ってるからそろそろ離してあげたら?」


「……ごめん、嬉しくてつい」


 里緒奈の言葉を聞いた玲緒奈は顔を少し赤ながら俺から離れる。とりあえず取り出し口から景品を取り出して玲緒奈に手渡した俺は、下半身が落ち着くまでトイレに避難するのだった。

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