1‐11後編


 新しく買った服でそのまま村を歩く。

 次に到着したのは金物屋だ。何かしらの武器もあると思うので、中に入ってみる。


「刀剣はあるかな?」


 早々にハセラがハチさんに問いかけた。店員さんに聞くべきではないかと思うのは、私だけでしょうか……


「うぅん、近接の武器は……」


 並べられている近接武器は、棍棒、金棒、短剣、ナイフ、斧、槍、鞭。長物の刀剣は無いみたいだ。他には縄や鋏などの罠系武器。


「罠系以外は扱えるけど……できるだけ頑丈な武器がいいかな。」

「斧と短剣でいいんじゃね。」

「そうだね。少し素振りもしておこう。」


 店内を見て回ると、鈴や鏡、皿などのものもあり、おそらく儀式にも使えるようなものがちらほらある。


「ツムグにも何か買っておこうか?」


 ツムグの戦闘スタイルは武闘派の近接系ブルーに近い。

 殴る、蹴る、組手、回避、柔術……それに魔術や搦手が加えられる。

 以前二人で暮らしていた頃(なんか語弊があるような気がしますねこの言い方)、彼が話してくれたことだ。なんでも、いくつかの体術、武術を習っていたそうだ。

 剣道やフェンシング、棒術、弓道などをある程度学んでいたため、武器相手にも組手や近接攻撃に出ることができる。


(そういえば、クロルとハセラが喧嘩てあわせしているのはよく見るけど、ツムグとはしないのでしょうか。)


 それにしても、彼に買う武器は何がいいでしょうか。

 ナイフ?棍棒?縄とかも使えるでしょうし……


「スペルとダッシュにも必要かな。」

「あー、そうだな。でもツムグとダッシュにはナイフと罠でいいと思うけど、スペルのはどうすん?」

「………縄か、鞭とか?」

「ぶっ飛ばすぞお前。」


 ナニに使わせるきですかそれ。


☆☆☆☆☆☆


「っ……」

「え、どうしたの?」


 真ん中に座るツムグが、急にビクンと震えた。


「なんか急にビクッて……」

「シャーキング?」

「うん……なんかちょっと寒気も……」

「ん~…平気~?」


 ダッシュはツムグに添削してもらいながら報告書を完成させた。ダッシュが気づいていないところもいくつかあったので、ウチもちょいちょいコメントした。

 そして、ラポトに頼んでここ最近の調査内容を見せてもらうことにした。


「お待たせしました。こちらがしばらく分の獣害報告です。」

「ありがとうございます。」


 受け取ったファイルを開き、ペラペラとページを捲る。


【日付:6269/5/17~】

【お化けかかしの出現】


【日付:6269/5/30】

【墓荒らし被害】


【日付:6269/5/31】

【駅設備における破壊の跡】


【日付:6269/6/5】

【別地区にて墓荒らし被害】


「本当に先月の17から毎日あるな……他に墓荒らしと、駅設備の破壊か…」

「はい。ただ、具体的にどんな魔物なのかは調査中なんですが……」


 この辺の地域は土葬、埋葬が一般的だそうだ。

 大地や海、空……自然の恵みを受け生活している。だからこそ、死んだのならその自然に還る……

 農業が盛んなところだから、そういう風習が強く根付いている。

 ただ気になるところがある。


「魔物記ある~?」

「えぇ、こちら…」


 火葬や冷葬、浄葬(白魔術による葬儀)ならばともかく、水葬や埋葬は問題がある。

 そう、この墓荒らしだ。魔獣の餌になりかねない。人間の肉体はほかの動物に比べて脳構造が数段複雑だが、生まれながらに魔術を有していないことが多い……脳構造に合わせた魔力の許容量を有しているが、冒険職でなければそれを消費しきれず死後も一定期間含み続けている。


「今回の獣害、私たちは明確に策謀が隠れていると思っています。」


 魔物や魔獣が組織を成すことはおかしくはない。

 ただ問題は、裏に手を引いている黒幕のようなものがいるかという点だろう。


「ダッシュ、魔物や魔獣の他種族同士が結託して組織を成すことはあるか?」


 彼が問いかけると、ダッシュはインベントリから『世界史簡潔集』と書かれた厚い本を取り出し、とあるページを見せる。


【6090年7月:緑獣軍の下克上ベジタブル・REフェス

【ザボス本領土で、植物系モンスターを中心とした魔軍が蜂起を起こす。魔王軍以外で、魔物や魔獣が組織をなした一例としてトップクラスに有名な事件として扱われている。】

【6097年4月に、〝闇勇あんゆう〟ナイト・クロハの尽力により沈静化。】


「この約7年間は、被害の拡大を抑えることに注力……ザボスは一時的に経済機能が完全に停止した。」


 ウチが生まれる100年くらい前か……知らないわけだ。


「これには裏で手を引いていた知性三族はいないとされてる。」


 ※知性三族=人類種族、精霊種族、悪魔種族


 ツムグは少し報告書や本に目を通した後、ラポトを見て問いかけた。


「ラポトさんたちから見て、手を引いている奴はいそうか?」

「……はい。」

「……そいつの見当がついている感じだな。」


 図星なようで、黙って俯いた。大きく息を吸い、ウチらの方を再び見る。


「今回の件、おそらく―――」


 彼の推察は、くだんのクエスト解決の根幹に迫っていた。



☆☆☆☆☆☆


ー報告ー

【6269/6/17】

【お化けかかしを含めた、あらゆる獣害がぱったりと止まった。】

【歩哨隊曰く、魔獣の気配はただの1つも無かったそうだ。】

【〝革命団〟が来村した昨夜は、先日よりも魔獣、魔物が多かったため、何かしらの関係があるのではないかと調査を進める。】


ー記録担当ー

【ヴァテンダ歩哨隊より】

【記録部長:マウァリ・Yヨークミル・ラポト】 

【革命団より】

【団長:ワガミ・ツムグ】

【団員:〝黎明れいめい〟ヒット・Fフューチャー・ダッシュ】

【団員:ホープ・SセフィロティアBバーム・スペル】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る