第17話 革命団


 お菓子の家ヘクセンハウスを倒したので、ギルドに戻ってきた。すると、ミミックのクエストに行っていた仲間達が居た。ツムグが声をかける


「おう、お疲れ。」

「あ!ツムグ!」

「ん。先に戻っててもよかったんだけど…」


 同居することになったので、私たちは複数のクエストへ同時に参加しやすくなった。先に終わったら、屋敷に戻っても構わないとしていた。クロルが口を開く。


「あ~、それがね?クエスト達成したのはいいんだけどさ?今回6人揃ってから、はじめて複数同時に受けたじゃん?」

「あぁ、まぁそうだな。」

「それで思ったんだけど、アタシらとして登録してたっけ?」


 ギルドでは、職業の管理や税金の管理を行っている。いわば役所だ。冒険者達が行った功績の記録を残していて、政府や他機関との連携を行っている。個人としての記録と、パーティーとしての記録は別物として扱っているので、未登録のままだと誰の功績か記録しにくくなる。


「それで報告の時に受付の人に聞かれたんだ。パーティーとして登録するかって。」

「ミミック置けよ。」

「え、なにその不審者…」

「あ、うん…あとで話す。」


 宝箱から体が生えた変な魔物?かなにかを背負ったハセラが付け加えた。これが新種のミミックだろうか?


「あぁ…じゃあ、登録するか。」


 私たちは円形のテーブル席に着く。反時計回りの順にダッシュ、クロル、ハセラ、スペル、私が座る。

 彼は受付から登録用紙と写真用紙を受けとって、こちらに向かう。彼がダッシュとクロルの間の席に座ると、スペルがあ~と小さく呟く。まぁ、書類を書くのに必要な知識が必要だからあの席に座ったのだろう。

 書類に必要なのは、登録する人の名前(全員自筆、代表以外は仮名可)と職業、生物学上の性別、そしてパーティー名、今日の日付、拠点住所。

 紙を回して、それぞれに名前を書いてもらう。


「パーティー名か…」


 彼が顎に手を添え、ペンを持ちながら少し悩んでいる。私たちの方を見て、何か意見がある人はと聞く。


「〝ツムグとクロルとスペルとテインとダッシュ。他一名〟」

「誰が他一名だ。えっと…六人だから単純に白き六芒星団ホワイト・ヘクトグラムズとか…」

「ダセェ。てか『ズ』で終わったら少なくとも12じゃん。」


 クロルとハセラが言い合いを始めた。そのとなりのスペルが続ける。


「〝ホープ夫婦と愉快な仲間達〟」

「いや、愉快なのはあの2人ですよ?」

「おいそこじゃねぇ。ホープ夫婦ってなんだ。」

「ウチとツムグ~」


 次に、私も何かないかと考える。ダッシュにも、良い案は無いかと聞いてみる。彼女は少し悩んで、ゆっくりと口を開いた。


「び、び、〝ビヨンド〟…〝ザ〟…ゆ、〝ユニバース〟」


 マジですか。側だったんですか。とはいえ、みんな共通して彼を想起させる言葉が入っている。私もなにか意見を…


「…〝ツムグーズ〟」


プフッ


 ボソッと言ったら、どこからか息を漏らしたような音が聞こえる。と言うか、笑った声だ。


「誰ですかぁ?」


 ニコニコと見渡すも、みんな目を合わせてくれない。ツムグは顔を片手で覆っている。


「じゃ、じゃあ…俺が決めて良いか……」


 彼が声を震わせながらそう言うと、皆が頷く。多分、私も言えた義理じゃないけど、皆ネーミングセンスが独特だ。というか、ちょっと大喜利みたいだった。

 彼は少し考え、紙に名前を書き連ねていった。私たちにこれで良いかと確認し、皆がいいよと頷く。その書類を、6人の魂札ライセンスと共に受付に渡した。

 私たちが考えている間に、他の手続きは済んでいたので報酬なども受け取り戻ってきた。

 返された魂札ライセンスの、個人情報の欄には新しくパーティー名が記されていた。


「じゃあみんな、改めて…これからもよろしくな。」


 彼が珍しく、ニッと笑った。私たちもそれにつられるように、朗らかに笑って答えた。


【6269年/6/9】

【リーダー】

冒険者アドベンチャー  :ワガミ・ツムグ / 男

【メンバー】

上級狙撃手フルガンナー:ヘルム・ヴァン・クロニクル / 女

剣豪けんごう   :ハセラ(仮名) / 女

妖術師マナイスト  :ホープ・セフィロティア・バーム・スペル / 女

天巫女メディウム  :フォーロ・テイン / 女

学者スカラー   :ヒット・フューチャー・ダッシュ / 女

【拠点:ショリィ湖にある小島の屋敷】


【パーティー名】

〝革命団〟


 この世界に来てから、色々とありました。


「よし、じゃあ帰ろうか。」

「あ、馬車使う~?」


 私のミスで、彼は言語の勉強から始めたり、


「あのミミックって、体の方どうなっていたんだろう…」


 冒険の仲間を集めるために死にかけたり、


「わ、分かんないけど…今度解剖したい…」


 そして、急に魔王軍に立ち向かったり…


「テイン~!お菓子ちょっと頂戴!」

「あ、はい!」


 でも、私たちはここで生きています。まだまだ、この世界を生きていきます。


 私たちの…革命団の冒険は、ここからです!

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