プロローグ〆 六人六色のパーティー
「つ、次はあて、当てる!当てるから!」
「ちょっ、ねぇ今わざと僕のこと狙ったよね!!?」
少年の目の前でまた喧嘩をする二人。
「うっさい!『ショット』!」
「アンデッドを狙ってよ!」
二階ほど上がったところにある、少し広い部屋にてアンデッド達が集まっていた。
クロルが先陣を切って攻撃したものの、知性が少し高いアンデッド達だったようで、持っているスコップや棒で矢を弾く。矢がスペルの方に飛んでいき、後は大体先ほどと同じ感じだ。
「〝一刀流〟…あっ!?砕けた!!?」
思い切り力を込めて刀を握ってしまったため、柄の部分が握りつぶれてしまった。
「はぁ!?おぉいっ!!今月何本目!?そろそろ高いの買えよ!」
「高いのも握り潰したら勿体ないじゃ…って危な!?」
ハセラの方に一直線に進んでいく矢。しゃがんで回避する。偶然、ハセラが目隠しのようになっていてたので、その奥にいたアンデッド1体が回避できずに命中した。
「しゃがめ!」
「いや遅いからね!!?」
「武器無いなら殴って戦え!わざわざ折れた剣二本ももってくんなし!取りあえずこっち見んのやめてアンデッドの方見ろクソ陰キャが!!」
「誰がクソ陰キャだこのクソメンヘラが!!」
アンデッドそっちのけで口論をする二人。二十歳くらいの美女がなんと大人げない。
少年は口を閉じたまま視線を移す。そこには、テインに抱きつくスペルがいた。スペルは少し顔色が悪く、眠そうだ。
「あ、あのっ、スペルっ、その、ね、狙えないので抱きつくのやめてもらえると…」
「ごめん〜…暗いとこ居すぎた~。萎れるかもしれな~い……テインならなんとなく楽になる〜…」
長時間暗いところにいたため、スペルの元気がない。テインに抱き付いていると、ある程度疲労感や怠さが和らぐそうだ。
「うぅ…あ、へ、『
「このままだとウチがデッドする…」
少年はすぅっと息を吸いつつ、続けて自身の右下に目を向ける。
「ごめ、おえっ…ごほっ、ごふ…うぅ…げほ…おぇっ…まっ…けほっ…つ、つかれ…おふっ…ゔっ…階段ヤバい…げふっ…うっ…ぜぇ……ごほっ…はぁ…はぁ…ぜぇ…」
「あ、うん。」
あと三歩歩いたら肺爆発するみたいな表情で息を乱しまくっているダッシュがいる。メンバー全員を一通り見渡してから、っつぁ~と息を吐く。
「ごめんツムグ!すぐコイツ狩るから!」
「ツムグっ、変わってもらっていいかな!ちょっと殴りつぶす相手見つけた!!」
「ツムグごめん〜、ここの植物枯れてる〜…あとウチも萎れるかもしれない〜…」
「あの、す、スペルっ…うぅ…つ、ツムグ!た、助けてくださいぃ!なんか服の中に手いれてきて、ま、やめてっ!やめ、やめろってば!くす、あ、だめっ…」
『つ、ツムグ…ごめっ…おね、お願い……』
呆れたような、落ち着ききったような声を溢す。一方でアンデッド達は若干引き始めている。
「よし。」
ツムグと呼ばれた少年は屈み、地面には四つん這いになっているダッシュの背中に手を添える。耳元で『
ツムグは立ち上がり、テインの方を見る。
「テイン、まずはそこの仲良し二人に『
「は、はい!」
「スペルはテインのそばにいながら周囲を確認。ダッシュは『テレパス』で俺の援護。二人とも、出来ればでいいよ。」
「う、うん、分かった。」
「ん~…」
彼の指示を効くと、三人ともゆっくりと息を整える。テインはクロルとハセラの方に手を向ける。詠唱すると、二人は薄く光った。続けて自身に抱きついているスペルに触れながら2つ詠唱する。
スペルはスキルを用いながら周囲を見渡す。ダッシュは四つん這いの姿勢から、座り込む姿勢に変え、ツムグの方を見る。
「ん~…いない~。前にいるアンデッドだけ~。」
「おっけ。」
『おいクロル〜、ハセラ〜。俺も行くから手伝って。』
「「!」」
ダッシュも使っていたスキルにより、通称仲良し二人に指示を出す。ツムグはそのままアンデッド達のとこへ駆け寄る。途中で落ちてる矢を拾い、一体のアンデッドの胸へ目掛けて刺す。
「『
「ゔぇ…!?」
少し吸収したあと、ツムグは二歩後ろに下がりながら掌を向ける。
「『フラワーシャワー』。」
低級の魔法術により、掌から花びらを放つ。舞い上がった花びらを狙いながら、アンデッドを数回殴り怯ませる。すると他のアンデッドもツムグに集まっていく。
『右、左…』
ダッシュのテレパスが頭に届いた。ダッシュの読み通り、右側のアンデッドが先に襲ってきた。叩くように腕を振り下ろしてくるが、右手でそれを左に払い、そのまま顔にジャブを当てる。勢いよく上半身を左に捻り、左側のアンデッドを殴る。
軽くジャンプするように後ろに行き距離を取る。一方ツムグの後ろでは、ハセラがクロルを担いでいる。
「天井にぶつけんなよ!?」
「はいはい!」
「あっ、ちょっ!!」
「せい!」
「わぁっ!?」
ハセラがクロルを上に向かってぶん投げる。「任せたぞクロル。」と、クロルは嬉しそうにニッと笑う。
「『クリムゾン・ショット』!!」
燃える矢が5発、上からアンデッド達へと放たれる。その矢によって眉間を打ち抜かれたアンデッド達は、物理的に脳を焼かれているためかなりのダメージを受け倒れる。
クロルは落下していくが、ハセラが駆けつけ受け止めた。
ツムグはアンデッド達に両手を向ける。
「『
光の柱により、再度消えていった。先ほど同様、遺品はある程度綺麗にしてから回収し、自身の『
「じゃ、帰るぞ。」
「うん!」
「君軽いよね。」
「え、何キモい。てかアンタが重いの。ツムグもそう思うよね?」
「答えられると思うかそれ?」
「ちょっとそれは…。あ、すまないツムグ、気を使わなくても構わないが、できれば重いとは…てかちょっとメンヘラ?君に重いって言われたくないんだけど。」
再びにらみ合いながら口論を始める二人。だが二人はしばらく口論をした後、強めにパァンッ!と互いの手のひらを叩き合わせた。
そのとなりではスペルがテインに抱きついている。
「テイン〜…このまま連れてって〜…ツムグ〜、外出たらおんぶね〜…」
「元気になったらな。」
「ツムグ!怪我とかは…」
「大丈夫。それよりスペル頼んだぞ。」
テインとスペルは腕を組みつつ、互いの外側の手をタンッと交わす。微笑みながら姿勢を整え前を見る。
一方で、多少マシにはなったようだが依然変わらずあと5歩くらい歩いたら膝崩壊するみたいな顔したダッシュがヨロヨロと歩いてくる。全身汗ばんだまま、ツムグの肩に手を置き、呼吸を整える。
「つ、つむ、ツムグ…しょっ、背負って…もらえる…?」
「いいぞ。」
少し高く手のひらを向けると、彼女は体重のままたたきつけるように手を交わし、そのまま彼の胸にもたれかかる。
「あーマジ疲れた……足死ぬ……」
「はい、お疲れ。」
彼がよいしょと屈み、彼女はその背中に倒れ込むように股がる。もたれ掛かりながら、華奢な腕を首に回す。腕をダッシュの脚に通して、おんぶの準備をする。「いいか?」と聞くと黙って頷くので、ゆっくりと立ち上がる。ダッシュは自身の顔を、ツムグの顔のとなりに置くように近付ける。安定する体勢のようで、弱くぎゅっと抱き締めつつ呼吸を整える。
ツムグは彼女が落っこちないよう、姿勢を前に倒す。首元に彼女の汗ばんだ腕や頬がピトっとくっついている。
「じゃ、行くか。」
彼が背負っているのはダッシュやスペルだけではなく、ここにいる仲間全員の信頼だ。
(タイトル仮ロゴhttps://kakuyomu.jp/users/milklupia/news/16818093074468669144 )
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