第319話 時が過ぎて湧き出す怒り

自由の森を脱出し、大学も出て、何とか学習塾に入り込み、

それなりに落ち着いて仕事が出来だした頃の、いつごろだっけ?

あるとき、ふと、すさまじい怒りが込み上げてきた。


言っちゃあ悪いが、短大出て間もないネエチャン程度に、何が出来る?!


そして彼は、その言葉を頭の中で何度も反芻した。

さらに、口にも出してみた。

最初は、人のいないところで。

やがて、それは自由の森の本体の児童指導員にも矢を向けることに。


それは・・・、養護施設の宿命じゃからなぁ・・・。


対手は、そのように言った。

それがポジショントークであることなど、どちらもうすうすわかっていた。

それが聞き苦しいレベルの言い訳に過ぎないことも。

元とはいえ同僚だった者を売ってさらし者にするわけにもいかないだろう、

ってか。


そのことは、それから約20年後に判明した。

元児童指導員の彼は、元入所児童のかの弁に対し、再度の回答をした。


君は、短大を出て間もないネエチャンに何が出来るかといったよな。


ええ、言いました。今思えば・・・、

今思えば、いささか言い過ぎた気持ちもあった元少年に、彼は言う。


いや、その通り。大したことが出来るわけでもないわな。


今度は、ポジショントークではなかった。元同僚らをかばう事さえなかった。

あの自由の森という環境は、否、養護施設という環境は、

そこに関わった人を不幸にする場所なのではないか。それも、構造的に。

そんなことを思わずにいられなかった元少年は、今や作家で詩人。


元少年のペンは、かつての対手たちを総括している。

ひょっとすると、対手を殺しさえしかねない勢いで。

無論それは、かつての彼らを殺すこと。生命を殺すことではない。

しかしそれゆえの怖さというものは、しっかりありますね。


~ 自分で言うのも(ハイハイハイ)難ですけ~れど♪@おニャン子クラブ

ってか?

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