第248話 蜜柑投げの顛末

1985年冬某日。

丘の上で名を体(たい)だけ合わせた、自称自由の森。

誰からとも、どこからともなくやって来た蜜柑を、

男子入所児童数名が、他の児童棟の壁に次々と投げつけた。


 だいだい色の残骸は、2階建児童棟の1階の下に落ち、

 さらにその一部は、2階付近の壁にへばりついていた。

 投げた少年ら、丘の一番上の平屋児童棟C寮に居住中。


蜜柑を投げないように。


 やんわりと注意を喚起してきたのは、

 蜜柑投げ犯人の少年らと数歳しか違わない、若い保母。

 能力のほどは、述べないでおいてあげよう。。

 

 蜜柑事件を聞きつけた、今や作家稼業の当時16歳の少年。

 聞いて、笑うしかなかったそうな。

 38年後のニチアサの夜明け前、その話を思い出して、

 くすくすケラケラ笑いながら、詩作中。

 酒なら、ヱビスのロング缶2本飲んでゴキゲン。

 もはや笑わずにいられない! 笑うしかない!

 何だ、笑い上戸のアル中か。知らんけど。


 こんなことでしか、自分を表現できない情けなさ。

 まともな表現力の持合わせなき、若いだけの職員。

 児童が児童なら、職員も職員だぜ。

 その地にいた最年長は、当時40代初頭の施設長。

 良くも悪くも、若い人ばかりの地。


投げられた蜜柑たちは、その小さき一身に、

何を託されてか、コンクリの壁に衝突した。


 悲しい物語のはずだが、笑うしかない。

笑いはいつか、むなしさと軽い怒りへと転化しましたとさ。

めでたくナシ、めでたくナシ。

 いややっぱり、メデタシメデタシ? ケラケラわっはっは。

嗚呼無常也。

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