第145話 一度破いて テープで貼った 夏休みの友

 別に、腕を組んでいる男女の写真ってわけじゃない。

 だから、ドラマにも、まして歌にもしようはないよ。

 してもいいけど、ギャグにも一発芸にもならんから。

 でも、あの年の自由の森で、そんな紙媒体を見たの。


夏休みの友


 なんか、そんな題材の教材を見たことを覚えている。

 自分自身がそれをこなしたかどうかは、忘れている。

 でも、あの夏の日の光景、私は明白に記憶している。


わたしがわるうございました。


 大学出たての児童指導員・中田彦一さん(仮名)が、

 破られた冊子を、セロテープで補修していたのです。

 それに至る経緯は、さっぱり、覚えておりませんし、

 そもそも、私がかかわった話でもないし、わからん。

 でも、あの光景だけは、しっかり、覚えているのよ。


一度破いて テープで貼った 夏休みの友(♪)


 あの歌に乗せて歌ってみようと思いはしましたけど、

 どうも、滑りまくったギャグにもならない気がする。

 やっぱり、替え歌にするのは、ちょっと無理じゃね。


わたしがわるうございました。


 そう言いつつ、テープで冊子を補修した児童指導員。

 彼は翌年度末、ある保母とともに、自由の森を退職。

 まあその、洒落にならないことができちゃいまして、


・・・、って、ね。

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