第81話 罰漢字(ばつかんじ)

 移転先の丘の上から通い始めた、郊外の小学校。

 今度は、学校ではなく帰る先が丘の上ってこと。

 平地に古くからあるその小学校の、おはなしね。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 同じ施設の6年生を皆集めた、6年X組H学級。

 確かに、H先生はベテランの男性教師でしたな。

 社会科が専門で、よく学ばせてはもらいました。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 その先生だけど、よく、児童にこんなことをしておった。

 なんか問題を起こした児童に対しての、懲戒の手法がね、


罰漢字(ばつかんじ)!


 要は、ノートに漢字を練習して書けということなのよね。

 それが500とか1000とか、軽くて100字とかね。


 それがな、不思議なこともあってなぁ。

 給食室まで何か重いのを運んだら、500のうち100字は免除とか。

 そんなこともあったっけな。なんや、恩着せがましいのう。

 ちょっとは気が利くというべきか、利かないというべきか。

 いずれにせよ、傍から見ても実にくだらない手法であった。

 少なくとも私は、そう思っている。


・・・ ・・・ 


 クラスの中には、気に入らない奴にこんなことを言うやつもいたぞ。

「罰漢字1万(バツカンジイチマン)、今すぐ座って書け!」

 とか何とか。大人がそのザマなら、子どももそうなるわ。

 およそもおよそベテラン教師の手法とは言えなかったな。

 以前の学校のほうがはるかに良かったと言いたくなるわ。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 このX先生の知人が、小5の頃の彼と今や映画監督のK君らの担任の先生。

 小説家になった彼に関して、H教諭は元担任の先生にいろいろ言うたとさ。

 あの少年はひでぇのヘチマの。Hセンセイ、何かくそ文句ぬかしよったわ。

 テメエらの学校経営こそどないなっとったんじゃと、彼は今も怒っている。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 そんな学区など、金輪際、死んでも住んでやるか!

 彼は今でも当時のT小学校に対して、心底怒っている。

・・・、ってよ。

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