第47話 免罪符1~ためを思って

あんたが憎くて言っているのではない、ためを思って言っているのよ!


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 テメエの能力のなさ、とりわけ問題解決能力のなさを棚に上げて、という意識も実はないのだけど、自由の森の大人ってね、社会的に見てさして能力が高いってわけでもない。残念だが、それが今から数十年前の現実だったのねん。

 誤解のないように言っておくけど、だからと言って特に無能でどうにもならない人間ってわけでもないし、むしろ、人間的には「愛すべき」人たち。


 そんな人が、子どもにこんなことを言っているのでありますわ。

 自由の森にいささか連なる大人にも、そんな人はいくらかいた。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 ためを思って言えば、何を言ってもいいってものではありませんよ。

 あなたがためを思おうが、内容のない話など聞く必要はありません。

 ただし、金儲けとか何かが目的であっても、内容があれば聞きます。


。。。 。。。 。。。。。。。


 ためを思っていろいろ言いたいこともあったであろうその男性職員は、元入所児童の言葉に、一瞬ひるんだ。そして、黙りこくるよりなかった。


 目前の青年の入所時代の自分たちの言動・対応を振り返れば、無理もないから。


 かの幹部職員は、何とか言葉を紡いだ。苦し紛れに、彼なりに。

 だが、目の前の青年の弁には、ぐうの音ひとつ、出せなかった。

 それまでも、そのときも、それからも。今なお、そうだろうな。


。。。 。。。 。。。。。。。


 古き良き時代の子どもたちって、子どもらしくて、素直だったよなぁ。

 ためを思っているとでも言えば、免罪符になっていたのになぁ・・・、

ってか?



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