全宇宙銀河連邦の失敗

やざき わかば

全宇宙銀河連邦の失敗

全宇宙銀河連邦は、地球を一員にするかどうかを決めあぐねていた。

あんな辺境の田舎者である、同族による殺し合いが多すぎる蛮族を、誇りある連邦に迎え入れるのか、というのがその理由である。


そこで、審査会会員の一人である技術者の男が、自分がその問題を解決すると言い、旅立っていった。全宇宙銀河連邦審査会にしても、仲間が増えるのは非常にありがたいことなので、大いに期待していた。


していたが、もしそれが叶わない場合、この際だからそんな野蛮な地球民族は滅ぼしてしまえと、惑星破壊兵器も男に渡していた。


宇宙を航行すること一週間、男は地球近隣に到着した。

さてどうするか。実は男には一つの案があった。同族で殺し合っている地球を半分に切断してやれば、それも治まるのじゃないかと。いかんせん乱暴ではある。


そしてそれを男は実行した。宇宙最先端の技術により、惑星を壊すことなく、地球を真っ二つにした。


犠牲者はいなかったが、地球は大混乱。あっち側とこっち側でなんとか通信が取れるレベルだ。

男の思ったとおり、争いは止まったが、男はもう少し様子を見ようと放置してみた。


両側の科学者や研究者が断面を調べ、今まで謎に包まれていた地球の内部部分の研究成果を両側で提出、精査、議論、研究し、惑星というものの本質を理解できた。地球が産まれて何億年、初めての全世界一致しての事業である。地球は二つに分かれていながらそれを成し遂げ、全地球民族が沸きに沸いた。


男はそれを嬉々として眺めていた。

これで地球はひとつになる。まぁ今は二つに分かれているけども。


それからの地球民族の動きは驚くべきであった。あれだけいがみ合って仲の悪かった連中同士が、手に手を取ってまた元の地球の姿に戻そうと動き出したのだ。


もちろんすぐには二つに分かれた地球を一つには出来ない。地球全体の科学者や技術者が躍起になって解決方法を探った。

最先端の技術によって寿命を数千年伸ばしていた男は、それらを全て調査観察していた。


それから100年弱経って、やっと地球はまた元の姿に戻った。地球民族全て、涙を流してこの快挙を祝った。そこには敵などなく、全ての生きとし生けるものが喜ぶ美しい世界があった。


そして、男は満を持して地球へ赴き、事の経緯と、全宇宙銀河連邦への誉れ有る加入を申し出た。

地球民族はこれを大喜びで快諾したが、まだ混乱があるので5年待ってほしいと伝えた。


男は了解し、近隣の惑星で5年待った。

これでまた俺は出世できるな。洋々たる未来を夢見ながら待った。


そして、地球からの使節団を連れて、全宇宙銀河連邦本部へと旅立った。

銀河連邦議会に招待された地球民族使節団は、満面の笑みで地球の意思を堂々と読み上げた。

その場にいる地球民族以外の全員が平和を実感した瞬間であった。


「全宇宙銀河連邦に告ぐ。此度の騙し討ちにも取れる行いに、我々地球はそれを貴方方の宣戦布告と受け取った。今現在、この議会場を我々の宇宙船や宇宙機雷といった兵器が取り囲んである。速やかに降伏すればそれで良し、しなければ相応の行動に移る」


全宇宙銀河連邦は一瞬理解が遅れた。こいつらは何を言っているんだ?


地球側は、男の成した地球真っ二つの件を解決するにあたり、宇宙戦争に備えた兵器開発も平行して行っていたのだ。もう何年も争いのない全宇宙銀河連邦など、敵ではなかった。


男が持たされていた惑星破壊兵器。これが全宇宙銀河連邦の最大の兵器だったのだが、それすらも無力化されていた。もはや全宇宙銀河連邦に成す術はなかった。全宇宙銀河連邦並びに加盟銀河及び惑星は、あっさりと地球民族の傘下になり、宇宙は地球のものとなった。


そして、全宇宙銀河連邦は解体され、その利権と権力を求めて、各銀河による戦争が起こった。

全ての銀河のトップには、戦勝星である地球人がおさまっていたのだ。


田舎者であるはずの地球民族に、全宇宙が負けた。地球を下に見ていた全宇宙銀河連邦は、彼らが田舎者と見下していた地球人という戦闘民族によってあっさりと滅ぼされた。


戦わずに権力に居座ることがどんなに愚かか、全宇宙に認知されてしまった。

そして、宇宙は大戦争の道をたどることになるのであった。

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