第三十三話 From ここじゃない何処か
なんやかんやあってヒイラギは私たちの家に来ることになった。
1時的とはいえなんだか仲間が増えたみたいだ。
「お邪魔します」
「あれ〜?お客さま?」
現実同様に家事周り担当になって今日も家で待っていたユノが出迎える。
「おや、これはまた可愛らしい使用人さんですね」
「えへ、可愛い?えへへ」
相変わらずの無機質な対応のヒイラギと緩みっぱなしな雰囲気のユノのなんとも言えない温度差が。
「紹介するわ。ヒイラギさんっていうの。相手国からの使者だからくれぐれも粗相はしちゃダメよ?」
「はい」
ヒイラギは靴を脱ぐとそのまま靴を揃えてからリビングの方に進む。
やっぱり使者として来てるだけあるなと思いつつ、よく見たらアヤも同じような行動をとっていることに今更ながら気づいた。
私やユイは正直周りのことを意識するようなタイプの人じゃなかったからこれからはちょっとそういった細かいことも意識しようかななんて。
「ん?また新しい人がここに来たのか?」
「ユイが靴を脱ごうかという時に後ろから源の声が聞こえて来る。
「源さん。今日の用事はもう済んだの?」
「ん?ああ、用事って言っても別に仕事やるわけじゃなかったしな。ちょっと話あって今日は終わりだ」
源は履いている靴を玄関にほっぽるようにして脱いでリビングの方に向かった。
……ま、ここでならそんなに気にしなくてもいいかな!
「そうだ。ほれ」
源はユノに手に持っていたものを手渡す。
「一緒に働いているみんなから色々貰ってきたんだ。俺が調理するよりは君が調理した方が美味くなるだろう」
源から野菜を受け取ると余程さっきの言葉が嬉しかったのか、上機嫌気味にユノはキッチンの方へと向かっていった。
「いやー、ここはみんな素直で真剣に話聞いてくれるからついつい話が長くなっちゃってなぁ」
源の方も上機嫌気味にリビングに方に向かって適当なところに座った。
と、そこでヒイラギの存在に気づいたようで
「うぉっと。これはこれは。お客さんに気付けなくて申し訳ない。
胡座をかきかけた足を寸前で正座の形に直してヒイラギと対面する形で座り直した。
「ああ、いえいえ。私はそんなお客様として来たわけではないのです」
「そしたらとりあえずこれで全員揃っているし、諸々の情報を共有しようか」
そう言ってユイはヒイラギのことや今後のことをあの場にいなかったユノと源に説明した。
「なるほどな。そしたら俺とユノが留守番としてここに残るってことか。最初の予定通りだし、特に問題とかもなさそうだな」
「交渉がどれくらいの長さになるかは分からないわ。行って帰るだけでも数日かかるかもしれない。でも、きっと帰ってくるわ。だから、信じて待っていてくれる?」
「はい」
普段はただの女子友達の雰囲気だけど、こういうのを見るとやっぱりお嬢様とメイドの関係なんだなってのが言葉の端からでも伝わってくる。
「あのー」
それまで畏まった口調で話していたヒイラギの声で、くだけた口調の言葉が聞こえてくる。
「みなさんってここの人じゃなかったりします?」
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