Create

shi

第一話 おはよう、世界

「おはよう」

そんな声で私は目を覚ました。

そして、同時に自分の体が宙に浮いているような感覚を覚える。

この重力に支配されない何とも心地よい感覚が…


………あれ?

そう。宙に浮いているようではなく、本当に宙に浮いていた。


「えーーー!?」

慌てて体を動かしたものだから私の体が保っていた絶妙な安定感は失われそのまま地面へと落下した。


「いったぁ……」

落下したことによってボンヤリしていた意識が少しハッキリしてきた。

と、同時に自身の置かれている環境に気づいた。


「ここ、どこ……?」


辺りを見渡してみると、現実のようではあるがどこか違うような景色が広がっていた。

どこまでも澄み切った空にどこまでも広がる草原がそこにはあった。

こんな景色は世界中を探せばどこかにはあるだろうが、少なくとも私が住むところにはこんな景色は無い。

それが現実ではない感じがした理由である。


私の住んでいるところはこんな自然溢れるような場所というよりかは、人工物と雑踏がそこかしこにあるような所だ。

だからこそ、このような自然的で静かで奇麗な景色に違和感を感じたのだろう。


「…どこなんだろう。ここ…」

私の頭は目の前の情報で混乱しているが、ここで立ち止まっていてもこれ以上の情報を得ることは出来ない。

私は立ち上がって辺りを散策し始めることにした。


「うーん。やっぱり現実とは思えないなぁ」

私がそう思うのは目が覚めた時の状況だ。

目が覚めた時に私は『宙に』浮いていた。

宙に浮くなど現実において到底考えられる事ではない。勿論、無重力なら話は別なのだが。

まあ、その後落下していて未だに腰が少し痛むあたり無重力の線も消えるだろう。


「そうなるとここは今流行りの異世界って事かな!?」

ここが異世界であるならば、突然こんな場所で目が覚めた事も起きた時に宙に浮いていたことも説明が付く。と思う。異世界ならそういったご都合主義的展開はあるような気もしていた。


「じゃあ私も何か超能力みたいなもの使えるんじゃない!?」

ここが現実ではないと確信し始めた私は少し気持ちが舞い上がったが、現状ではぶっちゃけ何も分からない。

それでも、このまま散策を続けていれば何か新しい発見や変化があると思って歩き続けた。


しばらく歩いていると遠くの方に何か大きな塊があるのが見えた。


「ん~~?」


遠すぎてその塊が何かは分からないが、とりあえずこのまま何もない景色の方に歩き続けるよりはいいだろうと思い、その塊の方へと歩き始める。


近づいていくとその塊が何であるかが分かった。

イノシシだ。

その瞬間、私は近くの茂みへ身を隠した。

そのイノシシは普通のイノシシとは明らかにおかしい所があった。

そもそも普通のイノシシが遠くから見える訳がない。

そのイノシシは普通のイノシシの数倍の大きさがあった。


(やっぱこの世界は現実じゃない…!)


あんなものに襲われたらひとたまりもないと、私は茂みの中で息を殺し何とかやり過ごそうと決めた。


(ヤバいって!あんなのに襲われでもしたら死ぬって!)

心の中でそう思った私の首元に生温かい風が当たったのが分かった。

恐る恐る振り返るとさっきのイノシシが私の目の前に。


「ハ、ハロー…」

自分でも何を言ってるんだろうとか思う暇もないうちにイノシシが雄叫びをあげた。


「ギャアーーーーーーーーー!!」

私は一目散のその場から逃げ出した。それはもうとんでもない速さで。

走りながらもチラっと後ろを再び振り返ると少しずつ近づいてきているイノシシがいる。

このまま逃げ続けても埒が明かないと思い、


「どうせ異世界なんでしょ!なんか技とか出るんじゃない!?」

と言いながら、向かって来るイノシシに向かって両手を構えて

「なんか出ろーー!」

と叫んだ。


その直後に私の体は宙を舞っていた。

能力など出る訳もなく私の体はイノシシに呆気なく吹き飛ばされていた。


「ぐぅっ……」


吹き飛ばされた時の衝撃に加え落下の衝撃で私の意識は朦朧とした。

しかし、朦朧とした意識の中、治癒系の能力なんかが使えないかと祈ってみたが、さっきも能力なんか出てないんだから治るはずもなかった。

次第に意識が遠のいていく。

吹き飛ばされた時に打ち所が悪かったのか、体が思うように動かない。

骨も何本か折れているような気もする。


「あーあ…。このまま終わるのかな…?せっかく異世界にでも来れたと思ったのになぁ…」

最早、意識も消える寸前に私はそんなことを思った。


「能力も使えなかったし死にそうだし結局なんなんだよ、もう…」

そう思ったところで私の意識は途切れた。




再び目を覚ましたと思ったら、そこには見慣れた天井があった。






あとがき

初めてカクヨム様の方で投稿させていただくもので勝手が分からずこのような形で後書きを差し込ませていただきました。

さて、ここで皆さまにお伝えさせていただきたいことは「小説家になろう」の方でも同作品を投稿させていただいているということです。

これを記載しないとよろしくないらしいので。それでは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る