とある誕生日の探偵とそれを祝う助手の小話

自由らいく

2023 シエスタバースディss

「「おかえりなさいませ、ご主人様」」

「左がシエスタだな」


 家に帰るとメイド服に身を包んだ白髪の少女が二人、立っていた。

 彼女の容姿は瓜二つ、髪留めまでどちらも同じだった。


「なんですぐわかるかなぁ」

 そういいながらシエスタは髪留めをいつものものに付け直す。ノーチェスは用事が済んだらしくどこかへ行ってしまった。

「渚たちに見てもらったときはバレなかったのに」

「若干髪質がお前の方が柔らかそうなのと、ノーチェスからはにおいがしなかったからな。あとお前、俺のこと『ご主人様』っていうの少しためらっただろ」

「まぁ私が君のご主人だからね。私の雇人の性癖は怖いものだ」

 いや、いくら《発明家》が創ったとはいえ人間とアンドロイドの見分けぐらいつくよな。別に俺がシエスタのこと見すぎとかじゃないからな。

「またどこかの魔法使いの使いペットにでもなってこようかな」

「そう言いながら私のところに戻ってくるくせに」

 それは否定できないな。

「君、やっぱり私のこと好きすぎじゃない?」

 ばつが悪いので手に抱えてたものをとっととシエスタに渡す。


「ほら、これやるよ。今日誕生日だろ」

「別によかったのに」

 そういってシエスタは俺からのプレゼントを左手で受け取る。花束だ。

「よかったのに」という割にはかなり嬉しそうにしている。というかずっとそわそわしてただろ。


 今こそ少なくなったがシエスタは世界中を回る探偵だ。手荷物は極力少なくしている。その手荷物はもう揃いきっている。なのでなるべく残るものではない方がいい。今となっては事務所にとどまることも多いため飾れる花というわけだ。


「シザンサスね」とシエスタがつぶやく。この花の名だ。

「やっぱ空港での誓いはあったてことでいいのかな」

 そっちの花言葉を思い出したか。まったくやけに勘のいい探偵だ。


「ほら、ケーキも買ってきたから。苺と栗、どっちがいい」

「どっちも」

「そうなると思ってたからな。俺の分は別に用意してある」

「じゃあ君の分まで食べようかな」

「理不尽だ」

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