第12話 震度7強

 そう言い始めた男は少し背が低く、幼い顔立ちをしていた。

「まずは、僕か、、、」


 その少年が話しはじめようとした時、

 急に話を遮る者がいた。

 ヴァンだ。


「そんなことをしてる暇があるのか?」

 ギロッとした目で他の全員を睨み始める。


「僕の素性はみんな知っていると思うし、

 何より今は、、、僕自身気分がとても悪い。

 このゲームに対しての嫌悪感でな。

 それと、このゲームが"いい機会"だと思ってる奴もいるかもしれないが、、、、

 その気持ちはしっかり殺しとけ、、、」


 ヴァンはキッパリいい放つ。


(思ってたよりもこいつは人間味があるやつなのかもしれないな。

 しかし、いい機会?どういう意味だ?)


「俺も同感だ。」

「私もいいわ。」


 それからヴァンに続き、勇者一行、リアス•アディ(魔女)、ヒルメ•アマテラス(聖女)が抜けていった。


「...さて!残りのメンバーで自己紹介を進めようか。

 まずは僕から、僕の名前はウルフ•サニー、

 一応、精霊王の恩恵を受けていて、精霊教会のトップにあたる男です!

 仲良くしてください!」


 精霊、この世に存在しない、神と動物の狭間に位置する強大な力を持った者たちで人々に加護を与えることもあるという。


(精霊王、、、精霊の中でも断トツでトップのものが成れるという最も神に近いもの。

 そんなやつが加護を与えるなんて一体どれほどの研鑽を積めばいいのか、、、)


 しかし、その経歴とは裏腹にとても無邪気な印象を全員が感じた。


「次は私が自己紹介をするよ。

 私は、早めにしときたい主義でね。

 私の名前はパスラ•ペス。ペスと呼んでくれ。

 正直、普通の自己紹介なら言うか迷うが、、

 ここはデスゲームだしな、私は、



 "怨霊"


 である。」

 

自分をペスと名乗る女は背は少し低い感じで雰囲気は紫に近い。

髪は黒く、服装も紫と黒が混じり合ってる感じだ。

そして、ペスが放った言葉に全員が唾を飲んだ。


「怨霊?

 何故、怨念や悲しみなどの負の感情が集まって形成される霊がここにいるのですか?

 いや、、、実態化できるほどの負の感情がどうやって、、、この国に?」


 さっきまでやつれていた聖女がまた水を得た魚のように喋り出す。


「はぁ、こうなるからいいたくはないんだ。

 私が言えることは、私は怨霊だけどしっかり実態化できるし、魔法も使える。

 ちょっとばかし、が使えるだけだ。

 精霊王がいるなら何も不思議じゃないし、少なからずみんな、ここにいる時点で何かしらヤバいんだからよ。ハハハ!」


 全員、妙に納得してしまう。

 いや、ここまでのデスゲームで疲弊していてもう何も驚けないのかもしれない。


「じゃあ、次はお前な!」


 そう言って、ペスが指差したのは俺が先ほど

 ヘリオスから助けた少女だった。

 先ほどは一瞬しか顔が見えなかったが、改めて見ると、どこか見覚えがあるような、ないような、、、、


「わ、私?

 うーーーん。あんまり、自己紹介はしたくないんだけど、、、、

 まず、最初に言っとくと、、、」


 そういいながら、何故か俺に近づいてくる。


「私とコイツは、、、、



 恋人同士でーす!!!」


(うん?今なんて言った?)


 腕を組みながら彼女は言う。


「ええーーー!!!恋人同士でこの学園に入れたの!?」

 ウルフ•サニー(精霊教会のトップ)が驚いている。

 脳内の俺はそれは俺のセリフだと言わんばかりに驚いた。


(えええーーー!!!

 なんで?俺とコイツ初対面だよ?

 確かに顔はタイp、、、

 いやいや!俺!惑わされるな!)


 小声「おい!俺とお前は初対面だろうが!」


 小声「ええー!そんなこと言•わ•な•い•で!」


 上目遣いで俺を見つめてくる彼女の目に正直俺の心は震度7強で揺れていた。


 その時、また放送が入る。


「ただいま、15分の休憩が終わったよ〜ん!

 今からまたデスゲームに参加してもらうからねぇー!楽しんでいって!

 それじゃあ、ルール説明から始めるよー。

 まず、場所はここね。」


 全員耳を傾ける。


(ということはこの森で、このメルヘンな服装で何かするってことだよな?)


 放送は続く。


「ルール①

 これからは"物語"に身を任せてください。

 ルール②

 げぇむ中は記憶が無くなります。

 ルール③

 げぇむ終了後には記憶は戻ってきて、さらに記憶を失っていた間のことも全て記憶として残ります。


 ルールは以上だよ。

 何?ルールはこれだけかって?

 そんなに心配しなくても"物語"に身を任せれば自然となるようになるから!!!

 じゃあ、良い旅を!

 いってらっしゃい〜!」


 そこで俺の記憶は途切れた。













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