第3話 復讐って何?

 俺は学園からの手紙を握りしめ、山にある練習場にいる魔族の残党を一同に集めて、一言いい放った。


「俺は今から俺の"役目"を果たしに行ってくる。果たして俺が行く先が正解かはわからない。

 でも、俺は進む。

 そこに正解が現れるまで、、、

 じゃあ、行ってくる。

 みんな、今までありがとう。」


 魔族のみんなは何も言うことなく、怒ることもなく、ただただ俺を笑顔で見送ってくれた。


「人間と魔族でどっちが悪い、なんていう陳腐な善悪の基準なんて所詮は"常識"に囚われて、見かけでしか判断できない奴らの戯言なのかもしれないな、、」


 俺はそう呟きながら荷物をまとめて足早に練習場の門をくぐった。


(ここから俺の歯車が動き出す、、、

 俺は師匠から与えられた役目である"師匠の娘を守る"という役目を果たす、、、

 そのためには他の奴らのこと《命》なんて





 "どうでもいい"





 かつて師匠がそうだったように俺も、)


 俺はフラジャイル王国を目指して山を降り始めた。

 "降りる"と言っても闇魔法の最上位である、


 影操作シャドウ


 を使って影の中を移動しているからかなり楽だ。

 俺は山を数十ほど超えて、時々、王国が見えるようになった。


 俺は驚愕した。


 俺は闇属性の勇者、、、

 だからこそ闇魔法を極限まで極めた。

 その副作用なのか効能なのか俺には人の


 "闇"


 が見えるようになった。

 闇は嫉妬、妬み、怒り、などの負のエネルギーと捉えてもらって良い。


 俺が時々見える王国は、、、

 魔族の国とは比べ物にならないほど栄えてた。

 しかし、、、立ち並ぶ建物に比例するかのように"闇"もまた魔族の国とは比べ物にならないほどに膨張していた。


 いつの時代も王様が悪いのかなんなのかは知らないが、、、人というのは負のエネルギーで動いている、ということが妙に説得力を持つ。



 山を完全に降りきり、俺は王国の中に侵入した。

 関所のようなものもあったが、影の中を移動する俺を見つけることはできるはずない。


 影を移動している最中たくさんの学園にまつわる噂を聞いた。


 ガタガタ、ガタガタ、ガタガタ

 その噂を聞いた俺は影の中で震えた。


 "今年は4人の""勇者""様が入学するらしい"


 聖魔ディスティニー学園は特殊な方法で入学者を選んでいる。

 それは、"ディスティニー"と呼ばれる鳥が手紙を届けたものが入学するというものだ。

 なんでも、その鳥は才能あるものにしか飛ばないらしい。


(俺が招待されたということは、

 もしかするとは思ったが、、、)


 俺の中で怒りに近いような、複雑な感情が芽生えていた。


 そうこうしているうちに王都が見えた。

 王国の中心部にあるだけあってとてつもない大きさの建物ばかりだった。

 その中でも目を引く建物が見えた。

 ディスティニーの大きな文字、、、


(やっとついたな、ディスティニー学園、)


 俺は裏路地で影操作シャドウを解除し、馬鹿でかい正門をくぐった。


 ザワ...ザワ...ザワ


 周りが少々ざわつく。


(まぁそりゃそうだ、

 黒いマントで顔を隠しているヤツが入って行くんだからな、)


 と思ったがそれは違うようだった。


 俺の後ろから歓声が聞こえて来た。

 俺は即座に後ろにパッと振り向く。


「勇者様〜今日もカッコいいー!!」


「キャーーー!!カッコいいわーー」


 そのなんとも光り輝いているオーラを纏った4人組を見た時、即座に分かった。


 "勇者こいつらだ"


「ん?なんか怪しいやついねぇ?」


「確かにーw、何だこいつ?」


 明らかに俺のことを言っている声が聞こえてきた。

 俺は静かに手紙を出し、見せた。


「これが手紙です」


 俺は満円の笑みでそう言った。


 何故かはわからない、、、でも自然と何の感情も湧かなかった。

 いや、俺はそう自分に思い込ませているだけだったようだ。


「な、なんだよ、そのアホみたいにひきつった笑顔、、、気持ちわりぃ。

 もう、行こうぜ。」


 俺はその場に立ち尽くしてしまった。


(おい、ロキ!

 お前は"復讐"がしたくてここにきたのか!

 いや、違う、、、俺は、俺は、、、)


自問自答を繰り返した。



「復讐って何?」




 俺はまた歩み始めた。


(復讐が何かなんて今はどうでもいい。

 今は考えるな!

 まずは師匠の娘、アイドス•レリエルを探そう、、、)


 教室の前に立った俺はその異質な空気感に飲まれそうになる。

 教室のドアに手を触れることさえ億劫に感じた。

 覚悟を決めてドアを開けた。


 教室には勇者4人の他に異様なオーラを纏った奴らがずらりと座っていて、空席は1つ、俺以外は全員来ているようだ。


 制服なんてものはなく、それぞれがそれぞれの服を着てきている、その光景はこれからの学園生活ストーリーを諭しに語りかけてきているかに思えて仕方なかった。












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