第26話 世田谷夕貴(せたがやゆうき)との出会い

 九月一日。 夏休み明けの初日でもあり、八月三十一日から最も隔たりを感じさせよう日でもある。

 夏休みという長期休暇は一見、特効薬やカンフル剤みたいな役割を果たすと思うのだが、それは真逆である種の「毒」のような中毒性があり、未だに休みに戻りたくなる。

 今はエンドレスエイトが羨ましくなる程である。いや、マジでタイムリープとか起きませんかね?しかし、現実にはそんなことはあり得ないので畝間苗太の憂鬱は続いていく?のだ。

 そんなこんなで心の叫びも虚しく、夏休み明けの初日は、太陽も出ていて晴天で少しだけ残暑感が体感出来るくらいであった。

 そんな晴天の中俺は、とぼとぼと学校へと足を向けていた。

 少しだけ汗が滲む。やはり、九月とはいえまだ暑さは現在進行形で継続中だ。

 徒歩一分で玄関の下駄箱までたどり着く。何千回も繰り返すであろう靴を脱ぎ、上履きを履くという夏休み前からのルーティーンを行う。

 いつも通り二階の教室まで向かう。

 教室の中に入ると、ぼちぼちクラスメイトが来ているようだった。

 鞄を机の横に掛けると、喉が渇いていたので飲み物を買いに行くことにした。財布を持って一階の自動販売機のところまで行く。そこには誰も居らず俺がぽつんと居るだけであった。いつも通り、いや、今回はアイスの方のココアを買うので少し違う。平素通り、砂糖ましまし、クリームももりもりと追加でボタンを押す。三十秒ほどで筐体からアイスココアが出てくる。

 一気にぐびぐびと飲み干す。やはり、ココアの風味も最高で砂糖を追加で入れた分、甘さが際立ちクリームを入れたことにより、数倍まろやかな味わいになっている。百円そこらの値段でこのクオリティなのだから、つくづく日本は良い国だと思う。これぞジャパンクオリティ。ただし、チャ○ナてめぇはダメだ。(※個人的な価値観です)

 飲み終わった後、お腹が少し空いたのでパン専用の自動販売機でパンを購入することにした。

 イチゴジャムパンやカレーパン、メロンパン等様々なバリエーションのある自動販売機で、よく生徒や教職員の人が利用している。甘いものを摂取した後は、俺的には当然甘いものを取りたくなるので、メロンパンをセレクトする。

 メロンパンといっても普通のものとは差異があって、中にメロン味のクリームが入っている。外はサクサクで中はふわりとしていて、それでいてクリームの相性が絶妙だ。クリームも濃厚で珠玉の一品である。

 すぐに食べ終えた後、時間を確認する。どうやら十分くらいここにいたようだ。そろそろ戻らねばと使命感?に駆られ教室に戻ることにする。 教室に戻るとさっきより人が増えており、これぞ学校!というような喧騒があった。

 席に座りいつものように本を読もうとすると、「畝間君だったよね?何の本を読んでるの?」と声をかけられる。

 ブラウンの髪に中性的な容姿、すらりとした体格。確か名前を世田谷夕貴と言った筈だ。


「あー、確か世田谷夕貴君だったよな?これか?これは、ライトノベルってジャンルの本でタイトルは、『俺、ツインテールになります。』ってやつだよ」

「へー。ライトノベル?ってのは、読んだことないんだけどマンガなら読んだことあるよ。NARUTOとか有名な作品とかね」

 意外な共通点に胸が高鳴る。

「おー!俺もNARUTOは好きだぞ。主人公のナルトの成長を追っていくのが毎週の楽しみだったな~」

 やっぱり、ジャンプは最高。はっきりわかんだね。

「僕はイタチが好きだったな~。あのラストのシーンは感動したな~。やっぱり、NARUTOは最高だよね!」

 少年の共通項ジャンプだからこそ、会話が盛り上がる。ちなみに、サンデー、マガジン、ヤングジャンプも好きです。はい。

「だよな!分かるわ~!夕貴君良いところに目を付けるね。あのシーンは泣けたわ」

 詳しくは過去のジャンプか単行本にて。

「そうだね。あっ、僕のことは夕貴でいいよ」

 はにかみながらそう言う。

「じゃあ、夕貴って呼ぶな。よろしく。俺のことも畝間か苗太でいいよ」

「うん、じゃあ、畝間君って呼ばせてもらうね。これからもよろしく」

 どちらからともなく手を差し出し、握手をする。

「じゃあ、連絡先交換しないか?」

 携帯を取り出すと、

「うん、そうしようか。ラインとメールアドレス、電話番号教えるね」

 そう言いながら、お互いの連絡先を交換する。

「そうだ。他にはジャンプとかで好きな作品ないのか?」

 先程の話の続きを始める。

「うーん。ONE PIECEとかかな?」

 おっと!出たー!少年誌の王道、ひとつなぎの秘宝、ワンピースを巡る物語。毎回展開が熱いんだよな~!

「おー!王道だけどいいよな!エースの名シーンでは、泣いてしまうよな~。他には好きな作品ある?」

「そうだね~。ヒロアカとかも好きだよ。ヒーローになるのはそんなに簡単じゃないってことがよく分かる良い作品だよね」

「いいよな!ヒロアカ!デクの成長過程とか出てくるヒーロー達がカッコいいんだよな。それと、映画も観たぞ」

「僕も観に行ったよ。普段あまりアニメ観ないんだけど、ヒロアカは面白くて全部観ちゃったよ」

「他にも面白いアニメっていっぱいあるから観なきゃ損だとおもうけどな」

「じゃあ、今度オススメのアニメ教えてよ!畝間君のオススメなら観たいと思うからさ」

 すると、HR(ホーム・ルーム)開始のチャイムが鳴る。

「おう、分かった。今度オススメのアニメをリストアップしてから教えるわ。じゃあ、また後で夕貴」

「うん、また後で畝間君」

 そう言って席に帰る夕貴。

 それはそうと、新しい友達が出来て嬉しい。

 中学校までの友達は何人かいるが、卒業後は連絡を取ってない。

「俺達ずっ友でいようぜ!」と言われたことを思い出すが、ずっと友達ということはなく、ラインという希薄な繋がりしかない。

 大抵の友達というのは、そういうものだ。

 チャイムが鳴ってから暫くして長谷川菜月先生が教室に入ってくる。

 いつも通りの様子で「HR始めるぞー」と言ってからHRが始まる。

 それからは、いつもの流れで一時間目、二時間目と授業が行われる。

 前日に夜更かしをしたということもなく、真面目にノートを書いたり、問題を解いていく。

 授業の間の休み時間は、夕貴と話したりして一喜一憂していた。

 時間の流れというのは早いもので、もうすぐでお昼のチャイムが鳴る。


 今日も今日とて一日の半分が終わる。

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