第13話 林間学校へ

 夏休みの最初の週から三日間、林間学校のボランティアはある。

 今日がその初日だ。大きめの鞄の中を最終チェックする。どうやら必要な物は、抜かりなく入っているみたいだ。下着を忘れたとかなったら山の中では、調達する手段がないので大惨事である。

「おにぃ、どうしたの?どっか出掛けるの?」

 不思議そうにポニーテールに髪をまとめた女の子が話しかけてくる。俺の妹の日菜だ。反抗期か何なのか俺に話しかけてくること自体珍しい。

「今日から林間学校のボランティアなんだよ。お兄ちゃんは朝から重労働だ」

「そうなんだ。まぁ、おにぃのこととかどうでもいいけど、頑張りなさいよ」

 ふぃ、とそっぽ向きながらエールを送るマイシスター。

 ツンとデレ具合が面白く感じ、つい日菜の頭をワシワシと撫でてしまう。

「う、ウザいからやめてよね!じゃあ、バイバイ!」

 顔を真っ赤にして、撫でる手を振り払い、踵を返しリビングまで歩いていく彼女。

 そんな妹の様子を尻目に、いってきます、と小さく声をかける。

 扉を開けると夏の太陽の光が容赦なく燦々と降り注いでくる。

 大きめの鞄からUVカットの日焼け止めを取り出すと、顔から腕、足と全身に満遍なく塗りたくる。

 暫くすると、玄関の前に迎えの車が来る。黒の乗用車の窓から長谷川先生が顔を出す。いかにも出来る女という感じだなという感想が出てくる。

「待たせたな、畝間。乗りたまえ」

 そういうと後ろのスライドドアが開く。峠崎が真ん中で左側に杉並が座っている。戸惑いつつも、先生を待たせたら悪いので車に乗り込む。

「おはよう、畝間君」

「おはよ~、畝間~」

 峠崎、杉並と続けて挨拶をする。

「おう、おはよう」

「昨日は良く眠れたみたいね」

「ああ、良く眠れ過ぎて目が普段の二倍大きいまである」

「ふふふ。なによそれ。畝間君の目はいつもと変わらないわよ」

 微笑みながら、いつもの調子で返す彼女。やはり、彼女の笑顔は魅力的だ。

「私は、昨日楽しみすぎてあまり寝れなかったよ~」

 彼女の方を見ると確かに眠れてなかった様子で、その証拠にうっすらクマがあった。睡眠不足はお肌に大敵よ。(オネェ風)

「じゃあ、寝たまえ。林間学校の場所までは片道二時間あるからな。仮眠には十分だろう」

 そう言われると俺も、杉並、峠崎も眠りに入る。

 車の時折揺れる感覚が何故か心地よく、すぐに睡魔がきた。

 高速道路は使わず、下道を約六十kmで向かう。

 少年と少女達を乗せた車は、オーシャンビューを背に走っていく。

 どんな感じの林間学校になるのか楽しみだ。

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