第9話 杉並かおりとの出会い
「事物の中で最悪なのは決断できないことである」
世界史を飾る偉人・英雄の中でも有名な、かのナポレオン・ボナパルトの言葉である。
この言葉から学べることは、決断することが大切ということである。
某アニメでも言われていた通り、人生は選択の連続だ。
どんな場面でも、選択するということが訪れる。
そんな時、自分はこの選択肢で間違いないと決断できるだろうか。
あの時俺は、栗色の髪をした彼女に告白するという決断をした。
きっと、告白せずにずっと友達ルートという選択肢もあったのだろう。しかし、俺は決断した。それに間違いはないだろう。あの頃の思いでも、挫折も喪失感も糧にして生きている。
人生は、何かを得たり、失ったりして歩んで行くものだ。その度に、決断しなければならなくなる。
ならば、俺と彼女は、一歩を踏み出すという決断を出来るのだろうか?
そして、決別の時が訪れるのだろうか。未来は、分からない。だからこそ、これからの選択で変えていけるのだとそう思う。
そんなことを「高校生になって」と書かれた用紙を見つめながら、考える。季節は、六月の中旬。梅雨入りは、とっくにしており、連日雨が降る。梅雨前線しゅごい。紫陽花が綺麗に咲き誇り、カタツムリがノロノロと首を出す。雨の音がザアザアと反響し、教室の湿度を上げる。
未だに書くことが決まらない。今日は、雨ということもあり、普段より早い電車に乗って登校してきた。
朝のHRが始まるまで時間があるので、自動販売機がある一階の方まで向かって歩いていく。上履きの音がキュッキュッと鳴り、THE・雨を感じさせる。雨の音を反芻しながら歩いていく。ちょっとだけ滑り、オーバーヘッドキックを決めそうになったのは秘密だ。
自動販売機は、ペットボトル型の飲料を販売するのと、カップ型の飲み物を販売する二種類がある。今日は、暖かいココアが飲みたい気分だったので、カップの方の自販機を選択し、砂糖を多めにクリームを多めにする。
暫くの間待つと、ココアが甘い芳醇な香りをさせ出てくる。フーフーと、ココアの温度を冷ましながら啜る。冷えた体を芯から温める。一気に飲み干すと、近くにあるゴミ箱に入れる。すると、見たことのある生徒がこちらの方まで歩いてくる。
一年C組で同じクラスの、杉並かおりだ。髪は茶色で緩くパーマがあてられている。顔は、少しだけつり目で綺麗な顔立ちをしている。スカートの丈も短く、生足が大胆不敵に露出されている。
特に話すこともないので、彼女の後ろを通り過ぎて行こうとすると、
「畝間は、何しに来たの~?」と呼びかける。
い、いきなりだな。
「あー、ココアを飲みに来てたんだよ」
少しだけ、めんどくさそうに答える。すると、それを感じとったのか彼女は、
「ちょっと、なんかめんどくさそうじゃない?」
と言ってきた。
「べ、別にそんなことはないぞ。多分…」
少しだけ動揺する。
「へー、そうなんだー」
少しだけ怪しいという風な雰囲気だ。
「じゃあ、教室に帰るな」
そう足早に立ち去ろうとすると、
「待って」
と杉並かおりから声をかけられる。
「私、実は部活動どうするか決まってないんだよね~。ねーねー、畝間は、どの部活にしたの?運動部?それとも文化部かな?」
私、気になります! と言わんばかりに質問をする。
「文芸部だ」
手短にそう答える。
「へー、文芸部か~。いいね!私も、そうしようかな~?ねぇ、私も文芸部に入部していいかな?」
水を得た魚のようにピチピチ(別の意味でも取れる)とした様子で問いかける。個人的にピチピチのJKって言い方がエロいと思うんです。
「じゃあ、放課後一緒に部室までいくか?」
ナチュラルに誘う。なにこれ、プレイボーイなの?チャラ男なの?
「うん、行く!」
元気にそう答える。
「じゃ、また放課後な」
そう言うと、その場を後にする。
雨風が頬を撫でる。少し生ぬるく、気持ち悪い。でも、こんな天気も悪くないなと思いながら教室に向かう。
これが杉並かおりと、畝間苗太のファーストコンタクトであった。
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