ヤりたい放題シ放題(五味先輩視点)

俺は有名企業の叩き上げで成り上がった重役の息子に生まれた。母親は読モから芸能界の中堅女優まで行った女で、外見は母親の、地頭は父親の遺伝子を受け継ぎ、幼稚園の頃からイケメンだと地元じゃ話題になった。


さらに天は二物も三物も与えてくれたようで、運動神経が良かった。そのおかげで小学校時代は徒競走で6年連続1着。リレーもアンカーを任され自分の組を勝利に導くと、学校中の女子が俺に夢中になった。小5の頃には小6の女子がこぞって俺にバレンタインデーのチョコを渡し、告白までしてくるヤツもいた。


中学ではサッカーを始め、たった3ヶ月で部活のレギュラーを獲得。中2でエースストライカーとして地区大会を優勝しMVPにも選ばれた。その頃には俺の噂が学外でも知られるようになり、他校の部活の女子マネージャーから告白されることもあった。

しかし付き合うことはしなかった。女たちがホイホイよってくるだけで俺の欲は満たされたし、当時の俺は年上の女性と付き合いたかったため、同年代の女には興味がなかった。


高校ではサッカーを辞め、学外のボクシングジムに通った。ちょうどその頃に日本人ボクサーが世界タイトルを取ったとかで話題になっていたので始めたが、思いのほか楽しくて続けていた。


そんなある日、路地裏で襲われそうになっていた女性を助けたら、その人が同じ高校の先輩だったようで、それをきっかけに人生初の彼女が出来た。


しかし、快楽の味を繰り返し味わってしまうと、飽きてくるものだ。


俺はその女を捨て、そのルックスと頭脳を活かし女を厳選することにした。


勝ち気な生徒会長を雌犬に堕としたり。


メガネをかけて地味子になっているいわゆる隠れ美人を発掘したり。


最終的に俺の中で最も楽しいは女を抱くことになっていった。


もちろん嫌がるヤツを無理やり襲ったこともある。


だが札束で頬を叩けばすぐに黙る。所詮カネの力には勝てない。


幼馴染のカップルを寝取ったときは最高だった。


男のほうが逆上して襲いかかってきたが、ボクシングを習っていた俺に勝てるはずがない。


しかし相手は顔面をブサイクに腫らし倒れ伏しながらも、縋るように女の方を見上げていた。


『あんたみたいな奴が、五味くんに勝てるわけ無いじゃん。容姿でも、成績でも、力でも。ちょっとは男らしくしたらどうなの?』


まるで汚物を見るような目で這いつくばるゴミを見下ろした後、まるで人が変わったかのようにツートーンも挙げた声で『行こっ? 五味君』と言ったときには流石に同情した。ただ、可哀想だとは思わなかった。


その後、不当な暴力を振るわれたと男のほうが学校に訴えたが、親父が手を回していたのでソイツは泣き寝入りする事になった。


『もし裁判沙汰になっても、権力とカネがあればどうとでもなる』


幼少期は貧乏人だったという父がその後言った言葉だ。


『そしてお前はそのカネと権力をもう持っている』


その日から俺の考え方は今までより単純明快になった。


――俺に楯突くやつは悪。


その考えが俺のモットーとなり、俺の邪魔をするやつは容赦なく叩き潰していった。


そして大学に入学。格闘技サークルに入った俺は普通にモテた。というかバリバリモテまくりだった。


順風満帆のキャンパスライフ。俺の脳内には様々な女を侍らせ、まさに学生の王として君臨するビジョンが確かに見えていた。


しかしここで邪魔をするヤツが現れた。


一年後輩のソイツの名前は灯織漣。顔が良いのと口数が少なくアンニュイな雰囲気がウケているらしい。


どうやら友人である大野と同じサバゲーのサークルに所属しているらしく、一度会うことにした。


第一印象は覇気のないやつ。たしかに物憂げな表情を常に浮かべていて、俺と話してるときも俺を見ているようでどこか遠くを見ているように感じた。


これは俺の計画の邪魔になるかと思ったが、どうやらこいつは女性が苦手らしい。俺が女を連れているときに会ったときは、女に話しかけられるとビクビクしながら受け答えしていて、笑いを堪えるのに大変だった。


しかしそういった部分が庇護欲をそそられるらしく、主に年上の女にアプローチをかけられるようになっていった。


漣も漣で同い年や年下の女は苦手なようだが、年上の女性なら話しやすいらしく、俺が狙っていた年上の女性を中心に親交を深めていた。



気に入らない目障りなやつ。



俺は評価を改めた。俺以外のやつがチヤホヤされているのは気に入らない。


さらに漣は俺が狙っていた一つ上の先輩の女と仲良くしだした。


俺の堪忍袋は限界を迎えた。


手始めに軽い嫌がらせを始めた。


『灯織漣は万引きをしたことがある』『灯織漣は高校時代に女子をレイプしたことがある』


などなど。


あること無いことを学生の掲示板サイトに匿名で書き込んだ。


数日後、漣に話しかけに行く女子は減ったが、目当ての先輩は変わらず接し続けていた。


当の漣も気にした様子はなく、サークル活動に向かっていった。


今度は先輩に仕掛けることにした。


カネで半グレ集団共を雇い、誘拐。監禁されているところを颯爽と俺が助け、吊り橋効果で距離を縮める。


予定通り先輩は連れ去られ、都内の廃ビルに閉じ込めた。


さて、ヒーローの登場だぜ。と意気込んで監禁されている部屋に入ろうとすると、突然扉が爆発して迷彩服を着た数名の人間が銃を構えて突進してきた。


突然のことに為す術なく吹き飛ばされた俺は、監禁していたはずの先輩が謎の集団に抱えられ連れ去られていくのを呆然と見ていることしか出来なかった。


しばらく唖然としていると、全員出ていったと思った部屋から1人、ガスマスクを装備した漣が出てきた。なぜ連とわかったかというと、普通に話しかけてきたからだ。


「何やってるんですか五味先輩。普通に犯罪ですよ? 自作自演で誘拐事件のヒーローにでもなろうとしたんですか? 本当に愚かですね。両親が泣きますよ?」


一瞬で血が逆流したかのように煮えたぎり、思わず立ち上がっていつものイケメンスマイルをかなぐり捨て、漣の胸倉を掴み上げた。


「お前が邪魔してくるのが悪いんだろ? 付き合ってもないくせに、俺の邪魔すんなよ。目障りなんだよ!」


「付き合ってはないですが。あの先輩からは直接頼られていますから。どうやら最近、ある1人の学生さんの視線が纏わりついていて不快感を催しているそうで、俺に助けを求めてきました。相当追い詰めていたみたいですね」


漣は俺の手を払い除けると、足早にビルを出ていった。


「…もしこれからもなにかするようであれば。俺が全力で防ぎます。少なくとも貴方が卒業する日までね」


その日から俺が女に世間一般で言ういわゆる犯罪にあたる行為を仕掛けようとすると、どこからともなく屈強な男が現れ、妨害していった。


俺は断腸の思いで大学でこれ以上女を囲うことを諦め、いい女が集まる就職先を探すことにした。


やはり一番初めに思い浮かぶのは芸能事務所。女優などのマネージャーになれば様々な美人と接点を持つことが出来る。


親父に口利きを願い出たが、母親に反対された。スキャンダルとしてすっぱ抜かれた際に面倒なことになるということらしい。


俺も社会的地位を失うリスクは背負いたくない。しかし芸能人のような美人と付き合いたい。


そこで俺が目をつけたのが、不本意にも漣がよくスマホで見ていたVTuberの配信だった。


――そういえば、声優の人って美人も多いよな。


VTuberとかならまだカルチャーとして浸透していないし、今のうちに入社して囲ってみるか?


そうと決まれば一都屋に改めて口利きを依頼。ちょうど人事部長に伝手があるとのことで、手を回してくれた。


そしてタレントとの距離が一番近いマネージャーとして就職した俺は、一人のタレントに目をつけた。


藍原葵。VTuber天色空音として活動している女で、小柄で可愛らしく無口なところが唆った。


前任のマネージャーがタイミングよく辞めるということで俺が空いた席に座った。


ただ、この女は思ったよりもガードが硬い。俺がどんなに気さくに話しかけても、一線を引いた対応をしてくる。


親友であり同期の鞍馬こはくという女に話を聞くと、どうやら男が苦手らしい。


というわけで俺は葵との距離感を見直さなくてはならなくなった。


そんなとき、中途採用で1人の男性社員がマネージャーとして入社してきた。


どうせタレント目当てでやってきたキモオタだろう。


そんな浅はかな余裕は一瞬で吹き飛んだ。


社員の名前は灯織漣。


2年ぶりに会った漣は少し痩せていたが、前よりも遥かに人を見透かすような気味の悪い目をしていた。


そして、当然のように、俺の邪魔をしてきたのだった。



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なんか文量伸びちゃった。五味先輩の経歴的なやつです。漣くんとの因縁も書けたし

、以前指摘があった、「なぜ女性問題の多い五味先輩がマネージャー職に就けたのか」が書けたと思うので満足(ちょっと無理やりだったかも)

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