60日目 ウグイスの着信音



 妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。


 妖精なので、ほとんどの人間には見えない。



 ぺぺが神社でのんびり飛んでいると、


 ホーホケキョ! 


 どこからかウグイスの声が聞こえてきた。


「あ! ウグイスだ」


 嬉しくなりウグイスがどこにいるか探し始めた。


「どこだ? ウグイスはどこだ?」


 ホーホケキョ!


 声は聞こえるが姿は見えない。


 ホーホケキョ! ホーホケキョ!


 やはり近くで聞こえるが、姿が見えない。


「ウグイスさん、隠れん坊してるのかなー。全然見つからないよー!」


 それを見ていた他の妖精と小さな神様がある参拝者のおじいさんを見て言う。


「小さい神様ー。ぺぺが探しているウグイスってたぶん、あのおじいさんの携帯電話の音だよね?」


 おじいさんが、携帯電話をかばんから取り出した。


 すると携帯電話から


 ホーホケキョ! ホーホケキョ!


 と鳴っている。


「もしもしー」


 おじいさんが電話に出ると、ウグイスの声は聞こえなくなった。


「ぺぺに教える? 小さい神様」


「いや。あのままで良いだろう」


 ぺぺはまだずっと探しているのだった。


「ウグイスー! どこだー!」



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