55日目 注意書き



 妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。


 妖精なので、ほとんどの人間には見えない。



 今日のぺぺはいつもと感じが違った。


 本殿で目を閉じ、すまして顔の前に指を1本たてて座っているのだ。


 小さな神様が不思議に思い、ぺぺに尋ねた。


「ぺぺ、何をしておる?」


 ぺぺはその格好のまま小さな神様に言った。


「神様の真似をしているの」


 小さな神様は首を傾げる。


「なんの神様の真似じゃ?」


「あの神様」


 ぺぺは神社の壁に貼られているポスターを指す。


 見ると、そこには「境内はお静かに」と書かれたポスターがあった。


 小さな神様は笑う。


「ぺぺ。あれは神様ではないぞ。あれは、注意書きの絵じゃ」


「え?」


 ぺぺの時間が止まった。


「……………………」


「まあ間違いは誰でもあるぞ」


 小さな神様が笑いながら言うと、


「しー! お静かに!」


 ぺぺはここぞとばかりに神様に注意した。


「神様にむかってなにするんじゃー!」


 またぺぺと小さな神様との追いかけっこが始まったのだった。


 すると神様が言う。


「2人とも 静かにしなさい」


 と。

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