別日⑩ 月の神様



 妖精ぺぺは、ある山の上にある小さな神社に住んでいる。


 妖精なので、ほとんどの人間には見えない。



 ぺぺ達妖精は夜暗くなると眠りにつく。


 神様達も、夕方からは魔の時間になるので力が弱くなるため、姿を消している。


 そんなある日、ぺぺは珍しく夜に目が覚めた。


 夜なのにとても明るい。


 空を見るとお月さまがあった。


「きれいー」 


 と見ていると、いつもいない神様がいた。


「神様ー。夜いてもいいのー?」


 ぺぺが尋ねると、神様は頷く。


「今日は満月だからのう。月の神の力が強いから大丈夫なのだよ」


「神様、お月さまにも神様いるの?」


「いるぞ。ぺぺにはまだ見えぬかのう」


 神様は笑いながら空を見上げる。


 ぺぺも神様に見習って空を見上げると、大きな大きな月が光り輝いていた。


「月の神は、暗い夜を唯一照らしてくれ、浄化をしてくれる優しい神じゃ」


「そうなんだ。神様は分からないけど、お月さまを見ると笑顔になるよ」


「それは、今ぺぺの心が浄化されたということじゃ」


「ふーん」


 ぺぺはあまりよく分からないので、曖昧に返事をする。


「ぺぺには難しかったかのう」


 神様は笑う。


「でも、きれいなのはわかるよ」


 ぺぺは笑って言う。


「それでよいよい。月の神もそう言っておる」


「そっか。 お月さま、ありがとう」


 すると、少し光りが強くなったように感じた。


「神様、今答えてくれたね」


「そうじゃな。今日はとてもよい夜じゃ」


 そう言って神様とぺぺはしばらく月を眺めているのだった。

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