誕生日

第1話

３月３０日

今日は誕生日だ。

といっても、僕の誕生日ではない。

この日が誕生日の人は、世界中にいるだろう。

この日が誕生日の皆様、おめでとう。

でなくて・・・

身近な方で、とても大切な方の誕生日だった気がする。

でも、その誰かが思い出せない。

両親や兄弟ではない。

友達でもない。

芸能人や、増してや２次元の人物でもない。

だれなんだろう？

思い出せない。

あっ、そうだ。

思い出せないということは、たいした人ではないんだ。

気にしないでおこう。

「あなた、どうしたの？」

妻から声をかけられる。

「丁度良かった、これあげる」

「何これ？」

「ネックレス。じゃあ、そういうことで・・・」

妻は泣き出した。

【覚えていてくれたのね、私の誕生日】