第6話 遊園地後編
カフェに入り席に着きコーヒを飲みと彼女は無邪気に尋ねてきた。
「なんで
恵という人は知らなかったけれど文脈からして前私に話しかけてきた子だろう。思わず早口で答えた。
「別にただの私の中の事実じゃないかな。それに友達っていうのは定義の曖昧な言葉だし、そんなのは私の主観でしかないでしょ」
事実私の中では彼女が一方的に話しかけてくるだけで、決して友達とは思えなかった。
「も―――、つれないなー。私は石井君のこと友達だと思ってるのに」
「君はクラスの友達と話してるほうが有意義に過ごせるんじゃないかな」
たぶん彼女は勘違いをしているんだろう。自殺現場で珍しい反応を示し話しかけたら一応対応した私を。普通の人はそんな状況に出くわしたらさっさと立ち去るだろうし。そうやって会話をしたから何となく気になってるから彼女は私に話しかけてるだけだ。ここで勘違いして彼女が私を好きだとか何らかの好印象を持ってるとか思ってはいけない。彼女は私に話しかけてくるのではなく私にも話しかけてくるのだ。普段の彼女の様子を見ればわかる。私はただのモブ。ここで勘違いをしたらいくらかの精神的被害は免れない。そうやって自分を戒めた。
彼女は私が長い間黙ってるのを見た後くすりと笑いどこか物憂げな表情をしていた。
「私石井君が思ってるほど友達は多くないよ……それにクラスに人とより石井君と話してるほうが楽しいよ」
「はー……」
よくわからず思わず困惑しながら答えた。彼女はクラスの中ではかなり多くの人と交流を持っているはずなんだけど。一瞬追及しようと考えたがやめた。彼女に積極的にかかわる気もないのにこんなことを聞くのは筋違いだろう。不用意に関わってできもしないのに人と支えあおうなんて思うのは傲慢だ。それは共倒れになって周りを不幸にするだけだ。ぼっちの私は人に迷惑をかけないことが信条だからね。
しばらくくだらない会話をしてると(もちろん彼女がふってきた話に私がそれなりの熱意で返してただけだ)きずいたら30分がたっていた。そして私たちはどちらが決めたわけでもなくカフェを出た。
###
カフェから出ると聞いたことがある騒がしい声がきこえてきた。
「あーー奈巳じゃーん」
思わず振り返って顔を見ると前に話しかけてきたクラスメイトと知らないクラスメイトだった。ええと……見覚えのある方の名前はめ、め、まあいいや。
「えー恵ちゃんじゃん。凄い偶然!!」
彼女が話してる間私は何もせず少し離れて立ちつくす。ぼっちが修学旅行に行って知らない班の人と一緒になった時と同じ要領だ。3歩後ろをついていく。ぼっちのたしなみだな。あーあだけど中学の時のクラスは割と民度良くてよかったな。アニメみたいに修学旅行の班決めでボッチを押し付けあわずにしっかり先生が早めに陰キャグループに頼んで入れてもらえたし。まあ結局誰と一緒の班でも話さないんだけど……ていうか私ボッチだからかあいつには話しかけちゃいけないみたいな雰囲気あったんだよな。
そんなことを考えてると話がひと段落したのか例のクラスメイトがふときずいてこちらに話しかけてくる。
「えーー石井君じゃん。珍しー。休日外出とかするんだ。てか石井君と奈巳ってどうした!?まさかデート!?」
口まで開いて名前の知らないクラスメイトはすごい驚いてる様子だ。そんな勘違いにすぐさま彼女も訂正する。
「そんなんじゃないよー。ただの友達だよ」
「へ―そうなんだー。ああ私急いでるんだったじゃあねー」
台風のように立ち去っていった後彼女はほっとしたように息をもらしていた。きっと変な誤解をされてクラスでの立場が悪くなるのを回避できて安堵したんだろう。
「じゃあ私たちも解散にする―?」
私はそれにうなずいて返答し解散になった。彼女がクラスメイトと話してるのを間近で見て彼女の顔に少し緊張の色が浮かんでるのに気づいたことに気になりつつもきっと下手な返答をしないか少し緊張してただけだったんだろうと結論付けた。そう思いながら私は帰途についた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます