第4話 クラスメイトの追及
昨日うちから別の学校に他クラスで転校した人がいたらしい。もちろんクラスの人の話を小耳にはさんだだけだ。それについて寺尾はクラスの人と「転校って楽しそうだなー!」と話していた。
相変わらず彼女の考えは理解できなかった。いちいち新しい人と関わることの何が楽しいんだろう。
この日は一つイレギュラーなことがあった。誰かが昨日クラスで友達が多く性格も明るい彼女とボッチ陰キャの私が廊下で一緒に楽しそうに話しているのをみて、その謎を朝からクラスメイトとひそひそと解き明かそうとしていた。別にあっちが一方的に話しかけてきて適当に相槌を打っていただけだし、楽しく話したわけではないのだけれど。こちらもなぜ私が彼女に付きまとわれているのか、彼女と仲のいい人ならわかるかもしれないと思い、少しクラスの誰かに訊いてみたいと思った。だけどその関心はいつもの私の行動を変えるほどではなかった。クラスの話は図書委員の仕事の帰りだろうという話にまとまったようだった。正直人に噂をされるのは気分がよくないのでそのまま話が終わることを私は願っていたけれど、噂好きの彼女の友達と思われる女の子が直接彼女に質問した。
「友達だよ」
一応私の状況が悪化しないかクラスメイトの会話には注意を向けていたので彼女の余計極まりない発言が聞こえた。当然クラスのみんなのこちらへの視線は気づいた。なので私はトイレに逃げようとクラスメイトと目を合わせないように教室から逃げようとした。しかしそれが逆に良くなかったのか教室の入り口で噂好きの女の子が目をぱっちりと見開いていかにも興味津々な様子で私に訊いてきた。
「ちょっといい?石井君って
口調が穏やかだしきっと彼女は悪い人じゃないんだろう。ちなみに奈巳は寺尾の下の名前だ。少し人に余計なことを訊くだけで。クラスの人ともめても嫌なので名前も覚えてない(覚える気もない)彼女に答えてあげる。
「違うよ。図書委員で一緒なだけ。」
「へー」
素直そうな彼女は納得したようにクラスのみんなのもとに帰っていった。彼女とははた迷惑な脅しから話してあげてるだけで友達ではない。損得関係が混じった人間関係は友達とは言わないと思う。
ばれなそうであれば私は平気で嘘をつく。彼女の自殺未遂の秘密を守るためだし仕方がない。彼女もいざとなったらこっちが秘密をばらせることを考えて話を合わせてくれるだろう。
というかボッチって目立たないって思われがちなんだけどボッチって逆に目立つんだよね。だから今みたいにこっちが名前を覚えてなくても相手は覚えてる場合ってよくあるんだよな。
とりあえずちょっとした危機は切り抜けいつも通り楽しくもない授業を受け終えた。
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家につき私はいつも通り本を読み始める。毎日世間一般では暇と思われがちなぼっちだけどYOUTUBEなどの暇のつぶし方を知ってるのでそんなに気にしてない。むしろ予定があるほうが苦痛だしね。
ごろごろしてると彼女の発言を思い出した。なんで私のことを友達というんだろう。たぶん自殺をとめなかったか気になるからとか私と正反対の価値観を持ってるからとかだろう。
そうしてると夕飯に呼ばれたのでリビングに向かった。
「今日もテニス部大変だったわー。球拾いばっかさせられんだもん」
一歳違いの妹がいかにも疲れた表情で話しかけてくる。
「まあ、最初はそうなんだろ」
「いや、だけど部活の顧問も嫌なんだよなー」
「じゃあ、退部するのも選択肢なんじゃないか」
「そうじゃないんだよー、帰宅部のおにいちゃんにはわからないよー」
あきらめたような口調で返してきた。妹の発言もよくわからなかったが、食事を終え部屋に戻った。
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