第3話 図書委員の仕事

司書さんのいない学校の図書館で私は、寺尾と放課後に図書委員の活動をしていた。その活動中彼女はいきなり話しかけてきた。


「石井君には、彼女はいたの?」

「よし、図書委員の仕事も終わったしそろそろ帰るか」

「まだ、全然仕事終わってないでしょ」


帰ろうとしたら、彼女に腕をつかまれた。腕をつかむ力がいらつきからか少し強い。無理やる帰ることもできたが後で面倒になりそうだったので仕方なく仕事を再開する。仕事の手を止め彼女はこっちを見て話しかけてくる。

「『人が嫌がることは進んでやれ』って格言があるでしょ」

「それは使い方が完全に間違ってるよ」

「で、続き、続き。そんなに私と話すのが嫌なの?」

「別に君に限った話じゃない。私は基本的に自分の話をするのが好きじゃない」

「なんで?」

実に不思議そうな表情を彼女はした。

「自分のことを話しても情報が増えないしそれに聞いても面白くないし興味も持たれない話をさも相手が興味があるようにしゃべりたくないんだ」

「なんで相手は興味をもたないって決めつけるの?」

「私自身が人に興味がないからだよ。皆、基本的に人に興味がないんだ。自分のことに集中したいしね。もちろん、全員にってわけじゃない。君みたいな特殊な行動をとろうとする人に興味がないって言ったら嘘になる。けど私自身は、他人に関心を待たれる人間じゃない。だから、他人の時間を無駄にするような自分のことをしゃべりたくはない」


彼女に背を向けたまま、普段考えてることを独り言を言うような感覚で話す。こういう持論は、普段は自分の中にしまわれ人目につくことはない。もちろん、話す相手がいないからだ。


「私は関心があるよ」


なんでこんな持論を持ったのかを考えていたので、彼女の言ってることを理解するまでに時間がかかった。返答を少し意外に思い彼女のほうに振り返った。人と関わらない私でも、彼女がかなりイラついてるのはわかった。


「急にどうしたの?」

「君の言ってることは違うって言ってるの。私は、関心のない人と同じ委員会に入ったりはしない。からかわないで」


彼女の言葉の真意はよくわからなかった。なんでこんな私に関心を持てるのかもわからなかったし、まして彼女をからかってるつもりもなかった。


「あ、あのからかってはいないよ」

「君はそう思ってるのかもしれないけどね!わたしは腹が立ちました!」

「ええっと、……ごめんなさい」

納得してなくても私は謝る。こういう時にプライドを発揮するような行為は非合理的だ。納得してなくても誤っておくのが一番有効だ。予想道理目線をそらしていた彼女はまたこっちを見るようになった。



「じゃあ、こっちの質問に答えてよ」

「聞いてもつまらないよ」

「聞かせて、興味あるから」

彼女は軽く微笑みながら、しゃがんでいる私に合わせてしゃがんだ。


「私は、生まれて友達がいたことがない。だから、もちろん彼女なんていたことがない」

「今まで一人も友達がいなかったの?今だけじゃなくて?」

「人と関わる気がないから話しかけないし、相手も話しかけようと思わないんだろうね。誰の迷惑もかけてないから私はそれでよかった」

「友達が欲しいと思わなかったの?」

自分とは異なる世界の住人を見るような顔で彼女は聞いてきた。


「思わなかったよ。私は友達がいることによる幸せがあることを認めてるけれど友達がいない人も同じくらいの幸せが得れると思ってるから。つまり友達がいるいないじゃなくて、どんな友達を作るかとかどう一人の時間を過ごすかが大事だと思ってるから。そして私自身本を読むことで幸せだし」

「だからいつも一人で本を読んでるんだ」

「そうだね。これで私の戯言ざれごとのような話は終わり。」

「どうして戯言ざれごとだと思うの?|

「ええと……」

質問の答えは自分で自分を傷つけとけばこの件はこれ以上突っ込まれないだろうという逃げみたいなものだけど、これを言って彼女が機嫌をそこねて先の脅しを行使されたら困るから思わず答えに詰まった。


そこで私は話題を変えるために仕事が終わったから帰るといった。彼女もそこまで気にしてないようで教室に帰りの荷物を取りに二人で帰った。もちろんその間私から話しかけることはなかった。少し余計なことを言い過ぎたかと脳内一人反省会をしていた。

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