第26話

「すごい増えてる! モンスターにオークにピクシー、アンデッドまで!!」


 浜にきていたクエリアは驚いている。 


「なにこいつあんたの恋人?」


 マゼルダがそう腕を組んでいう。 


「な、なにいってる! 違う! 違うぞ!」


 クエリアは顔を真っ赤にして否定した。


(そんなに否定しなくても) 


「トラさま! お帰りなさいませ!」


 ミリエルがかけてくる。


「おお! ミリエル!」


「んん? こっちか本命か」


「はい? ピクシーさんですか! 始めてみました。 サキュバスのミリエルです」


「さ、サキュバス!!? あんたとんでもないのそばにおいてるじゃない! このど変態普通顔!!」


「ち、ちがう! お前らまでサキュバス誤解してんのかよ!」


「なんだ。 ずいぶん賑やかになったな」


 ギュレルがハンマー片手に現れる。


「ど、ドワーフまで! あんたなんて節操ないの......」


 マゼルダはドン引きした顔でいった。


「ち、ちがう!」


 

 オレたちは拠点に戻った。 そこは石畳がひかれ町並みも人間と同じかそれ以上の建物が整然と並んでいた。 その家々にはガラスが張られている。

 

「うお!! またきれいになってる! もう町じゃん!」


「これはまた...... さすがドワーフどのたちですな」


「ゴブリン、マーマン、マーメイド、ワーキャットたちも腕のたつものがいてな。 そのものたちに技術を教えたら、こうなったのだ。 ガラスは浜より採取した砂から、工房で魔力精製した」


 ギュレルがそういうと、マゼルダ、ブルルたちが呆然としている。


「信じられない...... こんな町を作るなんて......」


「はい、現実とは思えません......」


「じゃあ、ギュレル、オーク、ピクシーとスケルトン、ゴースト、他のモンスターたちの住居も頼めるか」

 

「ああ、任せてくれ」


「あっ、それとオークたちは料理人が多い、厨房や食材の貯蔵室なんかもあると助かる」


「うむよかろう。 オークたちの家は一応作っておる。 かまど、パンの焼くかま、あとはお前がいっていた冷蔵庫、何とか作ったから試しておいた」


「あれできたのか!」


「うむ、ここの鉱物は魔力を伝える魔鉱石が多かった。 それで冷却を保てる金属板を作れたのだ。 本来少量しかとれんレア鉱物だから武具に使うが、ここは脅威も少ないからな。 まあこんな風に使うのは始めてだったがな」


(これで食材の長期保存も可能か)


「じゃあ、ブルル、オークたちの料理、他のものたちにも教えてくれ」      


「はい、みなで料理を作ります」 


 そうブルルは楽しそうに、みなをつれて家に向かった。


(ふむ、元気になってよかった。 それなりに踏ん切りがついたのか)


 そして城に向かう。 


「でかくなってる!!」


 明らかに数倍の規模になっていた。


「これはすごい!!」


 わーちゃんも驚いている。


「ああ、増築をしてな」


 ギュレルはそういった。


「いや、こんなに大きかったら迷うよ...... 迷宮だよ」


「はははっ、まあいざとなったらみなをここに避難させようと思ってな。 まあそんなことも起こらぬがな」


 ギュレルがミリエルやわーちゃんと談笑しているのをみながら、昨日船で聞いたバスケスの話をおもいだす。



「バスケスお前たちって、そもそも誰が封印したんだ」


「ワイエラン王国のグランディオス王子です」  


「グランディオス? それって勇者じゃないの」


「そのようですな。 元々はワイエラン王国の王子でした。 が国が滅んで魔王を倒してから帝国を建国したはず」 


 わーちゃんがそうあごを触りながらいった。


「そうでしたか...... 我らはアンデッドとなってから、王の暴走によりよくわからない状態でして...... その時王子が現れ我らを封印してくださいました」


「ほう、いいやつか」


「我らにとっては恩人です。 しかしそれから長き年月がたつと何者かが目覚めさせた。 いえ、あやつが......」


「えっ? あやつ? 知り合い、いやそんなことないよね。 だって大昔のことだし」


「そうでしたな。 すみません。 あまりにも似ていたもので」


「似ていた? 誰に」


「王に儀式をするようにそそのかした魔法使い、確か名をレギレウスと......」

 

「レギレウス...... なんかどっかで......」


「マスター、ルキナどのが村でリュガインと取引したという男ですぞ!」


「ああ、あの魔法使いか、帝国か...... それに似てた昔の同じ名前の魔法使い、まさか本人ってこともないだろ。 子孫かな。 もしかしてアンデッド!?」


「......いえ、アンデッドとは思えません」


「だな俺もそう思う。 ワケわからんが、ただわかったことは帝国が絡んでるってことだ」


(気を付けないとな...... でもクエリアがこちらにいるならそう簡単に動けないはずだ)



 城にはいり、みんなを集めマリークから状況を聞く。 ギュレル、クエリア、ミリエル、ワーキャットのファガー、マーメイドのリシェエラ、バスケス、ブルルそして一応マゼルダもだ。


「縫製機械の製作と技術者の増加により、衣服の大量生産が可能になりました。 また果物や野菜などの作物も我らドワーフが交易してみました。 しかし販売するには、船舶、人材が足りておりません」


「うーん、わざわざ交易する必要ある? 食べてはいけるんだし、ここで閉じこもってちゃだめなのかな」

 

 オレがいうと、ミリエルは首をふる。


「少ないものたちで生きていくのなら、それでいいと思います。 でもこれだけのモンスターたちがここにいる以上、よりよい場所をつくるべきなのかと、そして他にも困っているモンスターの保護なども必要ではないでしょうか」  


 その言葉にクエリアはうなづいた。  


「そうだな。 更に回復魔法では対応できない病など、外部の薬や技術が必要になるかもしれん。 自然のままに生死を受け入れられるならばそれもいいが、やはり助けたいという気持ちは生まれよう」 


「確かに...... 病気になったら、外の知識は必要になるか、ということは通貨、お金も必要だな」 


(それにいずれ前の世界のような科学文明になっていって、医療の進歩で外科的な手術も必要になるかもしれない)     


「外部の情報は遮断しないほうがよいでしょうな。 帝国がどんな手段をとるかわかりませんし、ここを狙って来るものがいないとも限りません」


 バスケスに補足して、ファガーがつづける。


「そうですね。 それに新たな魔法や武具が、開発されるやもしれませんな。 その情報がなくて対処できなければ、いかにトラさまたちのように強き力を持とうとも、危険が付きまといます」


「そうか...... 新魔法や魔法を使った武具、兵器、確かに脅威だな。 帝国のように暴走を使った兵士もいるかもしれない」

 

「......それと関係して他の場所の確保はしておいたほうがいい」


 ギュレルがいう。


「他の場所? ここから離れるっていうの?」  


「ここは確かに安全ではある。 今はな...... 我らは人間を襲わぬからだ。 しかし襲われなくなった人間は、ここに向かってくるやもしれん。 その時、トラは人間を殺せるのか?」 


「......そ、それは」 


「確かにトラどの性格上それは難しい。 何度か退却させても更に多くの兵などを送り込まれては犠牲なしで守るのも難しいですね」


 リシェエラは眉をひそめそういった。


「......でもこれ以上の場所ってあるの?」


「ふむ、ひとつだけ知っておる。 人々が絶対近寄らん場所」  


 そのギュレルの言葉に場がどよめく。


「ま、まさかバルバランディアですかな!?」


 わーちゃんは慌てて聞いて、ギュレルはうなづく。


「バルバランディア?」


「そうだ。 そして別名、魔王城ともいう」


「魔王城!?」  


「かつて魔王が統治していたという城含む空に浮かぶ大地、大国なみの大きさだと伝え聞いております」


 わーちゃんがそういった。


「ふむ、勇者に魔王が倒されたあと、何処かへと消えたという話しですが......」


 ファガーがいうと、ギュレルはそうだといい話しをつづける。


「地上のある場所からそこに転送できるらしい。 その場所を知る可能性があるのは、おそらくトロールたちだろうな」


「トロール? なんで?」


「魔王ゼグリナクレスはトロールです」


 ミリエルはそう教えてくれる。


「うそ!! でかいけど臆病な種族じゃなかったの!? やっぱり怖い種族なの!」


「いや、トロールはおとなしく臆病よ。 私もみたことあったけど、私の力におののいてすぐ逃げていったわ」


 マゼルダが自信ありげにそういった。


「お前のいう言葉はにわかには信じられないな」


「なによ!! いる場所だって知ってんだからね!」


「どこだ?」


「いやよ! もう教えたげない!」


 プイと横を向いた。


「そういわずマゼルダどの」

 

 わーちゃんがそういうも、マゼルダはすねて無視している。


「あれだろ。 知らないだけだろ」


「知ってるわよ! 東のミクレンチ大陸のマヴィン大洞窟よ! あっ!」


「はい、ありがと」


「あんた! はめたのね!」


 マゼルダはポカポカオレの頭を叩いている。


「とりあえずこれからどうするか? すぐに魔王城を探すか」


「正直、現在の交易上、船と町に行く人材がたりません。 そちらを対応していただけると助かりますが」


 マリークがそういうと、わーちゃんもうなづいた。


「そうですな。 今は交易をしてお金を得ておく必要がありましょう。 バスケスどのたちスケルトンを使いたいが、さすがに全身鎧は異様ですしな。 私のようにローブでも、多くなればさすがに怪しまれましょう」


「ならば人に変化できるのはオーガか? 居場所を知るものは」


 ギュレルがそういうと、バスケスが手を上げる。


「昔の話ならば、オーガは遥か北トリエン大陸の果てのエルフの失われた王国近くに住むといわれておりましたな。 今いるかはわかりませんが」


「まあ、オーガも長命だからいる可能性はありますね」


 ブルルがいう。


「エルフとかホビットは?」


「エルフは今は滅ぼされた王国から南の森にひき込もってんのよ。 魔王が暴れてたとき、なんもせずいたら、自分達が滅ぼされちゃったわけ。 あとホビットなんて知らない聞いたこともないわ」


 マゼルダがあきれたようにいった。


(ホビットはいないのか......)


「あとはヴァンパイアだが...... とても強く気高く、他の種族を下に見ているとても仲間になりそうにはありませんな」  


 わーちゃんがいった。


「たしか、西の黒き大陸に住んでいるとは聞いたことがありますが」


 ミリエルは思い出すようにいうと、クエリアもうなづいた。


「ああ、聞いたことがあるな。 昼でも暗い闇の大陸の話だな」


(ヴァンパイアは無理か)


「よし! 分けて行動しよう。 オレとクエリアはトロールの捜索、わーちゃん、ミリエル、ルキナ、バスケスはオーガの捜索、そしてドワーフ、ワーキャット、オーク、ピクシー、マーマン、マーメイド、アンデッドたちは交易と国の発展だ」


「我も久しく外にでたい、トラと同行する」


「私も退屈だからついてってあげてもいいわ」


 ギュレルとマゼルダがいった。


「えーー!」


「行くといったらいくぞ!」


「そうよ! ついていくからね!」


 二人は無理矢理ついてくることになった。

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