第15話
「よーしそこに木を並べて、こっちに石を!」
わーちゃんが朝から精力的に指示を出している。 モンスターたちが建設に従事していた。 他のものたちも果物や野菜を確保するために動いている。 海ではマーマンやマーメイドが貝や魚をとる。
「さて、この大量の野菜やキノコ、果物、魚を貯蔵するための場所がないと、腐ってしまうな」
「では、町へと売りにでますか」
「よし! いこう!」
ミリエルがいうとルキナは嬉しそうにそういった。
(確かに道具は欲しいな。 ここのことがばれるのは絶対にだめだが、お金は必要だ......)
「よし! 行くか!」
オレたちは船に少しだけ荷物を積み込み、船を出した。
「この少し離れたところにはひとつ港町ディフロがある。 そこまでは三日だ」
「でも、魚とか腐らないのか」
ルキナがそういう。
「大丈夫だ。 ミラーエイプたちにきてもらって氷を作って冷やしてもらってる。 あおまる! バッタン! なにか見えたら教えてくれ!」
「クァ!!」
「ギャギャ!!」
「魔王島は大丈夫でしょうか? いつか人間が大軍で押し寄せてくるのでは」
ミリエルが不安そうに聞いてきた。
「わーちゃんとトライがいるんだ。 並みの人間なら排除できるよ。 海にはマーマンにマーメイドたち、軍隊でもそう簡単には手出しできない」
(オレと同じ力を持つやつが来なければだけど...... そういやルキナや他のモンスターもなってたな。 帝国の魔法使いが絡んでるのか...... まあ今はすぐになにかあるってわけじゃないだろう)
そうやって航海して三日、何事もなく港町へ着いた。
「さあ、小舟で港に向かうよ」
「でも、船を空けてる間、誰かがこの船に近づいたらモンスターだってばれるよ。 操船してるのゴブリンだもん」
ルキナはそういった。
「大丈夫、ミラーエイプに出ていく他船の船員の姿を真似させたから、普通の船だと思うよ」
ミリエル、ルキナと荷物を積んだ箱を乗せて小舟で港に着く。 かなり大きな町で人も多くにぎわっている。
「すごい人ですね」
「こんなに人間みたの始めてだ......」
「ルキナは耳だけ隠してよ」
ルキナはフードを被りなおす。 オレたちは店に野菜や果物を売りに行ってみる。
「おお! かなり新鮮だね! 魚はここにもあるけど果物と野菜は新鮮なものはなかなか手に入らない...... 特に今は...... 買わせてもらうよ。 またあったら持ってきてくれ!」
そういって店の親父さんに魚以外は売れた。
「やった1000ゴールドか、かなりの額で売れた! この量でこの額なら全て持ってくれば20000にはなるかも! 残った魚は干物にして自分達で食べるか」
「......だったら、た、食べていいか」
よだれを垂らしているので少しルキナに食べさせた。
「前の仕事の残り2000と今の1000ゴールドで3000か...... どうするミリエル何を買おう?」
「いくつか工具を島に持ってきてましたが、もう痛み始めています。 多分航海中、潮風で錆びたのでしょう。 それと予備、あとは縫い針と機織り機、糸車があればコットンタートルのわたさん、バブルシープのばぶたんさんの綿で糸をつむぎ、織物が出きると思います」
「よし! 工具と機織り機と糸車、縫い針を買おう!」
機織り機、糸車と針は簡単に見つかった。
「だめでしたね......」
ミリエルはがっかりしていた。
「ああ、輸送にお金がかかるから20000ゴールドもする...... しかも何か問題があり、うまく今は輸送できないらしい、工具も同様だ。 やはり高い」
(鍛冶がいれば道具を作ってもらえるのに...... オレの剣も刃こぼれがひどい)
そんなことを思いながら、町を歩くと屋台が前にみえた。 どうやら何か卵を使った料理のようだ。 とてもいい匂いがしている。
(鶏とか欲しいな。 牛や豚も欲しいが、でも販売はしてない...... 手に入らないからやはり貴重らしいな)
「美味しそう......」
屋台にへばり着くようにルキナがみている。
「少し島と船のものたちにお土産を買うか」
「ですね」
「ほんと!!」
ルキナは喜んではしゃいでいる。
「ふ、あふい、 ふまい!!」
ルキナは猫舌だからだろうか、ふーふーしながら美味しそうにたべている。 オレとミリエルも顔を見合わせ食べる。
オレたちが町を歩いていると、人が集まりざわざわしている。
「なんだ?」
近くにいき聞き耳を立てた。
「どうする?」
「いや、どうするって、やはり冒険者にでも頼むしかないだろう」
「むりよ。 大勢しかもこんな遠くまできてもらうのにいくらかかると思うの」
「しかし、このままだと......」
そう困っているのか言い合っていた。
「何だろう?」
「なんでしょうね......」
ミリエルとそう話していると、町の人たちの中、一人の老人がみんなを制する。
「仕方あるまい。 冒険者を呼ぼう」
「町長! いくらなんでもお金がかかりすぎます」
「しかし、このままだと、この町が絶えてしまうぞ」
「まあ...... そうですが、しかしクラーケンはさすがに、並みの金額では受けてはもらえませんよ」
町の人たちがそうはなしている。
「クラーケンってモンスター?」
「ええ、巨大なイカのようなモンスターです。 かなりの強さを誇るモンスターです」
オレたちが小声で話していると、村長はうなづく。
「百万ゴールドなら何とか...... やはり足りないか」
「百万ゴールド!!」
つい大きな声を出してしまう。 みんなの視線がこちらに集まった。
「あなたは......」
「い、いや、冒険者を昔やってまして...... つい話が聞こえて」
「冒険者さま! 本当ですか!」
つい町の人に迫られて、冒険者カードを見せる。
「本物だ!」
「クラーケンを何とかしていただけませんか!」
「い、いや、今はやってなくて......」
「冒険者さまお願いします...... 海域にクラーケンがでて船を沈められるのです。 このままではこの町もいずれ、たちいかなくなってしまいます」
町の人や町長が懇願してくる。
(ここがたち行かなくなると、困るが......)
「どうする? ミリエル。 トライがいる今なら戦えると思うんだけど......」
「......確かに他の町まではかなりの距離、大量のお野菜や果物を保存するのは無理でしょうね。 暴走の力をお使いならない、危険だと感じたら撤退するとお約束していただけるなら」
そう小声でミリエルが耳元で話す。
(そうだな。 百万ゴールドもあれば家畜と道具も楽に手に入るし、ここは賭けても悪くない)
「わかりました。 一応討伐に達成すれば報酬をいただく、ということでお受けしますが、よろしいですか)
「ええ、ぜひ! お願いします!」
「お願いします!」
みんなにそう頼まれる。
(早速かえってクラーケン討伐の対策をとる!)
オレたちは魔王島へと戻った。 草原には掘っ立て小屋ぐらいの家が無数にできていた。
「なるほど、クラーケンとは...... それはなかなか」
わーちゃんがそう思案している。
「何かしってる?」
「そうですな。 島のように巨大で船を沈める強いモンスターですが、昔人間の勇者に倒されたはず......」
「勇者とかいんの!?」
「ええ知りませんか?」
「知らん、始めて聞いた」
「そういう話しがあるんです。 かつて魔王たちが支配していたこの世界を神の力を得て倒したといいますね」
ミリエルが綿を紡ぎながらそういう。
(魔王までいんのか、まあ、いまはいないから心配はないか......)
「でも百万は欲しいな......」
「ですな。 家畜やら道具はここで自活するにも必要不可欠ですし、何とか作戦を考えましょう」
「頼むよ」
それから一週間たち、オレたちは船で出向した。
「このメンバーかわーちゃん」
「ええ、マーメイドやマーマンたち、は海戦には必須、あとはトライどの、ルキナどの、ミリエルどの、あおまるどの、バッタンどの、スラリーニョどの、スピどの、ポイルどの、わたどの、ばぶさんどので戦いに望みます」
「わたやばぶさん? それほど戦い向きじゃなくない。 癒し用?」
「彼らは防衛や補助能力に優れているのです」
「ほう」
「では作戦の確認を」
それから四日あと、クラーケンのいるという荒れた海域に向かう。
「天気も悪いな...... 波も荒れている」
「ええ、ここら辺は海魔の海域と呼ばれ、昔から荒れる場所なのです」
大きく揺れる船の上、わーちゃんがいう。
「ぷはっ! トラどの! 来ます!!」
海面から頭を出しリシェエラが叫んだ。
「ミリエル!!」
「はい! マテリアルガード! デイフェンスオール!!」
すると海面から無数の巨大な青い触手がとび出し、船にまとわりついた。
「みんなで攻撃! マーマン、マーメイドは海中の本体を!」
オレたちは船を沈めようとする触手を攻撃する。
「固い!! なかなか切れない! ラキナ! あおまる! バッタン! スピ! 頼む!」
「わかった!!」
「クァ!!!」
「ギッタン!!」
触手をラキナが爪できりさく。 ギッタンは超音波であおまるは風をまとい滑空して切り裂いた。 スピはその炎のハサミできる。
「やった! いや! 再生している!」
切った触手がまた生えだした。
「かなり再生が早い! 私は詠唱を行います!」
触手で船が揺らされる。
「くっ! みんな! 危ない!」
落ちそうになるが、綿と泡がどんどん増えて、落ちるのを防いだ。
「わた! ばぶたんナイス! よしトライ! あいつが浮かぶまで攻撃を続けろ!」
空に上がったトライがその爪でいくつかの触手をきりさく。 すると海面が盛り上がり、青い巨大なイカのようなモンスターがその姿を現した。
「きたか! トライ! ブレスを!」
トライが三つの頭から炎と風そして氷を吹き出した。 船から触手、腕を離したクラーケンが暴れ回っている。
「よし! 船を離した! まだかわーちゃん!」
「いけます! シャドウレイク!!」
大きな影がクラーケンを呑み込み始める。
「よし! いくぞ!!」
オレたちもその影へと飛び降りる。
影のなか巨大なイカ、クラーケンは腕と体を再生させていた。
「また再生するのか! ここまではわーちゃんの計算通りだが、ここからは出たとこ勝負だ! トライ攻撃を頼む! オレたちはトライを援護する!」
トライは暗い上空を飛びながらクラーケンにブレスを吹き出している。 オレたちは腕を攻撃する。
「くっ! 固いな! 切れない! 筋肉の塊みたいだ! 仕方ない!
ダークネスフォール!」
何とか腕を切ってもまた再生が始まる。
「切っても、切っても再生する! 何かないか!」
その時あることに気づいた。
「あれ!? あそこだけ再生してないし、色が...... あれは、そうか! スピあの腕を切り裂いてくれ! みんなはスピに攻撃を通すな!」
スピは腕に近づき炎のハサミでその腕を切り落とす。 そこは赤く焼け再生しない。
「再生しません!」
「本当だ!」
ミリエルとラキナは驚いていった。
「やはり焼けると再生できないのか! ラキナ腕を攻撃! トライは炎をラキナが切った腕に! スピとラキナをみんなで守れ!」
オレたちはスピとラキナを守り、腕をどんどん切り落としていく。
クラーケンは口からすごい水圧の墨で応戦する。
「わたとばぶたん! 泡と綿で防げ!!」
大量の綿と泡が前に壁となりその墨を防いだ。 すべての腕を切り落とすと、胴体をみなで攻撃を集中させる。 ゆっくりとクラーケンは倒れていく。
「契約...... は無理か......」
こうしてオレたちはクラーケンを倒すことに成功した。
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