第10話
「うーん、いい島はないなぁ」
就航してから一週間、オレたちはまだ定住地をみつけられずにいた。 スラリーニョたちは楽しそうにはしゃいでいる。
「そうですね。 人がすんでいるらしい島はありましたが、これだけのモンスターを住める島はかなり外洋まででないとないのでは」
「あおまるどのとバッタンどのが確認してくれておりますゆえ、しばしお待ちを」
ミリエルとわーちゃんがそういう。
「でもそろそろどこかに着かないとまずいな」
「水は魔法で出せますし、食料もまだあります。 果実がなくなり始めましたが、最悪魚もとれますよ」
ミリエルは首をかしげた。
「うん、その果実が問題なんだ。 確かビタミン不足で病気になるって聞いたことがある。 多分、柑橘系の果実が必要だ」
「ビタミンは何なのか無知ゆえわかりませんが、確かに長期に海に出る船乗りが病気にかかるとは聞いたことがありますね」
わーちゃんはそういう。
「モンスターたちがどうなのかはわからないけど、気を付けておかないと」
「マスター、ならば一度どこかによって補給しましょう。 地図を見ると確かこの辺りに小さな港町があったはず......」
「だな」
わーちゃんの提案を受けた。
「クァ!!」
空からあおまるが降りてきた。
「クァ、クァ」
翼で先を指している。
「何かあったのか、町かな」
「ではそちらへ」
オレたちは港町を目的地にすすんだ。 しばらくして陸が見える。
「沖に停泊しておこう。 小さな小舟でオレとわーちゃんミリエルで上陸する」
「わかりました。 ごーぶ、お主がみんなの指示をとるのだぞ」
「わかった」
ごーぶはうなづいた。
そして小舟で港に近づいた。
「ごーぶに頼んでたの」
「ええ、かのものはかなり優秀でゴブリンのリーダー的存在なのです」
「確かにゴブリンさんたちはごーぶさんに従っていましたね」
(ほう、知らないうちにそんなことになっていたのか)
「わーちゃん、魔法のほうはどうなっている」
「ええ、覚えられるものには覚えさせています。 半分ぐらいのゴブリンは使えるようになりましたね」
「そうか、自分の身を守れるようにして欲しいしな」
「私もわーちゃんさまに新たな魔法を教えていただきました」
ミリエルが笑顔で答えた。
「それはよかった! でもわーちゃんなんでそんなに魔法に詳しいんだ?」
「ふむ、それがよくは...... 私は目が覚めたらこの姿で、何とか人を襲わぬようあの教会までいたった次第、おそらく過去に学んでおったのでしょう。 自分でも使えぬ魔法を知っておりますゆえ」
「ふーん、まあいいか、帰ったらオレにも新しい魔法教えてよ」
「わかりました。 見たところかなり魔力が上がっておられるようなので、より上位の魔法を伝授いたします」
「うん、頼むよ」
そうはなしていると船着き場へとつく。 だが人通りはない。 遠くに町が見えている。
「人もいないな。 町までいこう」
町までいくと、まばらに人がいるが閑散としていて活気がない。
(大抵港町って活気あるけどな)
「あっ! ありました果実ですよ」
ミリエルがそういう。
みるとある店に果実が並んでいた。 しかし値札を見て驚く。
「えっ!? こんなにすんの!!」
「ああ、危険を冒してここまで運んでいるからな」
そう店の大柄な店主が胸を張る。
「危険を冒して?」
「まあ観光客にはわからんだろうが、ここはモンスターが出るのさ。 だから誰もきたがりゃしない。 そこで我がリュガイン商会が危険を冒してまで運んでやっているってわけだ」
そう店主は横柄に言った。
「モンスターが出るって、どんなやつだ」
「ワーウルフさ! 大木すら爪で切り裂く危険なモンスターだ」
「それ一体? 倒せばいいんじゃないの」
「おいおい、あんた、もしかしてその剣といい冒険者かよ! やめとけ、やめとけ。 あいつは何人もの人を殺した危険なモンスターだ! 他の町にいたが、この島にわたってきたのさ」
「それでも通常の値段の五倍だなんて、普通の人はかえません......」
ミリエルは眉を潜める。
「なら、ほかをあたんな。 ここしか売ってないがね」
そういってにやついた。
(こいつ、足元みやがって! でも果実は必要だしな。 しゃーない)
「わかった。 箱ごともらうよ」
「はい、毎度!!」
オレたちが去ろうとすると、子供がかけてきた。
「またかディノ! 金がなきゃ売らんといってるだろう!」
「お願いだよ! これうちにあった真珠! これで」
「......しゃあないな。 ほれ」
「ひとつだけ! 父ちゃんが寝込んでいるんだ。 あと一個でも!」
「だめだ! だめだ! もっと金目のものをもってこい!」
そういってリュガインは取り合わない。
ディノという少年はとぼとぼと果実を持って帰った。
オレはミリエルたちと顔を見合わせうなづいた。 そして少年をおう。
「君ちょっと!」
「えっ?」
オレはディノ少年に追いつき声をかける。
「あの......」
「ああ、ごめん。 果実がいるんだよね。 ほら」
オレは果実の箱をみせる。 少年は戸惑っている。
「必要なだけ持っていってくれていい」
「えっ!? どうして?」
「そのかわり、少し話を聞かせて欲しいんだ」
「う、うん...... とりあえず、こっち僕の家に来て」
ディノの家につくと、父親が伏せっていた。 ミリエルはエクスヒールを使う。
「どう?」
「ええ、体力は回復させられますが、治ってはいません」
「おそらく、病気なのでしょう」
「うん、父ちゃんは漁師なんだけど、近海で魚がとれなくなったから、長く沖まで出ていってたんどけど、果実が高くなって買えなくなったら、他の漁師たちも同じ様に倒れてて」
(ビタミン不足になった...... か)
「ディノそれはモンスターのせいかな」
「そう、半年前ぐらいこの島の奥の洞窟にワーウルフが出たんだって、それで山にある果実はとれなくなったんだ......」
「それであの商人が他から運んでくるのか」
「うん、近くの島にある町から運んでくるんだ。 船を操れる人が少ないし、海にはモンスターも出て危ないんだ」
「わかったありがとう。 この果実はつかってくれ」
「でも、こんなには......」
気を遣っているようだった。
「余ったら他の人たちに配ればいいよ」
「ありがとう!!」
ディノは涙をながさんばかりに喜んて受け取った。
そしてディノの家を出る。
「ふむ、不可解ですな......」
「ああ、だがまず、ワーウルフを討伐するとしよう」
「そうですね。 このままではこの島の人たちは、生活がたちいかなくなってしまいます」
オレたちは森の奥へと向かった。
「なあ、わーちゃん、ワーウルフってそんなに強いの」
「そうですな。 普通の人を両断するぐらいの腕力と爪はあるでしょう。 それに速い。 しかしマスターならば容易いでしょう!」
(わーちゃんのこのオレへの評価の高さよ。 身びいきが過ぎるな)
「でも、他の町にいたんですよね。 どうやってこの島にきたんでしょう」
ミリエルは不思議そうにいった。
「確かにそうだ。 おかしいな......」
「まあ、それもワーウルフをみつければわかること」
わーちゃんはそういう。
オレたちはディノに聞いた方に歩く、すると太い木が数本倒れている。
「これがワーウルフがやったっていう木か」
「すごい爪痕がありますから、何者かに倒されたのは確かですね」
切り裂かれた木を見ながらミリエルがいった。
「人ならざる何かがいるのは間違いないですな」
そこからしばらくあるくと洞窟があった。
「トーチライト」
ミリエルが使った魔法の灯りをたよりに中にはいる。
「あの爪なら一撃で殺されかねない。 みんな気を抜くなよ」
「はい」
「ええ」
「......何か、いる」
奥から何かが飛び出してきた。 衝撃で体に痛みが走る。 見ると胸に傷があり血がにじんできた。
「ぐっ、 見えなかった...... 」
「大丈夫ですか! 今ヒールを!」
わーちゃんが前にたち、ミリエルが近寄る。
「いや、傷は浅い...... でもかなりの衝撃があったのに、この程度なのか?」
「一応、はいる前にマテリアルガードという物理耐性の魔法をかけていましたから」
「なるほど、それでか、でもそんな魔法を連発して平気なの」
「ええ、イータさんがマジックチャージをしてくれるんです」
そういって鞄からイータをだした。
「キィ!」
「そんな力を持ってたのか」
「ええ、どうやら周囲の魔力を吸収して私に補充してくれているようなのです」
「えらいぞ。 イータ」
「キィ、キィ」
「マスター! あれを!」
見ると真っ黒の人型の何かが牙をむいて、こちらに威嚇している。
「グルルルルル!!」
「目が赤い、やはり暴走か」
(でもなんか小さいな)
その人型のモンスターは風のように移動し攻撃してくる。 何本かの切り傷から爪で攻撃してきているようだ。
「くっ、速い! 捕らえられない! ミリエルの魔法はむりか」
「はい、魔法を撃とうにも洞窟内では崩落の危険性がありますので無闇には使えません! せめて足を止めないと!」
(くそっ! 何かないか)
「おふたりすみません!」
ーー暗黒の力よ、その大地に、光すら飲み込む影を生み出せーー
「シャドウスワンプ」
そうわーちゃんが唱えると、地面に黒い影が拡がり地面に足をとられ沈んでいく。
「よし!! ダークスフィア!!」
オレは魔法を唱え、動きを止めた黒い人型を撃ちぬいた。
「ギャァ!!」
そういって声をあげた黒い人型は地面の闇に沈んだ。
「ではこちらに」
わーちゃんにオレたちは引き上げられた。
「もうしわけありません。 この魔法は細かな範囲指定ができないのですよ」
そういって黒い沼を解除した。
「この子、女の子か!」
倒れている少女は獣のような耳をしている。
「どうやらそのようですね。 この黒いのは泥のようです」
ヒールしたあと、ミリエルは持っていた布で顔をふいた。 その体の大きさや顔の幼さからオレたちよりかなり年下のようだ。
「う......」
はっと目が覚めた少女は飛びのき、こちらにうなり声をあげた。
「目が赤くなくなってるな」
「お前たちは何者だ!!」
「言葉がわかるのか? お前と契約したいんだ」
「契約なんだそれは!? お前はあいつらの仲間か!」
「あいつら!? いや違うが、まずはその魔力の暴走だ。 オレと契約するとその苦しみから解放されるぞ」
「なにを! お前が私の村を!! ぐっ!」
すると、目が赤くなり始めた。
「マスター! また暴走が始まっています!」
「怒りを抑えろ! 出ないと取り込まれるぞ!」
「ぐぅ、ぐぁぁぁあ」
少女は苦しみ始める。 オレは近づき手を差しのべる。 その手に少女は噛みついた。
「ぐっ!! オレを信じろ! 契約するんだ!」
「ぐぅ!」
手から血がにじんでくる。 それをみた少女は苦しみながらも、口をはなすと、オレに震える手を差し出す。
「た、助けて......」
オレはその手をつかむと、胸の辺りに模様が浮かんだ。
「はぁ、はぁ、はぁ」
少女はその場でうずくまった。
「ミリエル!」
「はい!!」
ミリエルにすぐ治療してもらった。
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