第2話
「ふぅ、言葉はわかるようでよかった...... なんとか中に入れたな。 お前を隠してて、衛兵に見とがめられたときは一緒に殺されるかと思った」
「ぴー」
町にはいるとき隠していたスラリーニョが見つかり、衛兵に囲まれるが、モンスターと契約したことを伝えると、驚きなからも中に入らせてくれた。
(どうやら契約とはかなり絶対的なものらしいな)
ただ町をいきかう人たちは若干怯えているようにもみえる。
「とはいえ、これからどうするかだ? お金もないから宿にも泊まれんし......」
「んペッ、ペッ」
チャリン
「こら! そんなところにつばはいたらだめ...... ってチャリン!?」
スラリーニョが金色の硬貨をいくつか吐き出した。
「これお金か!? やった! すごいぞスラリーニョ!」
オレはそれを拾い宿へと向かう。 宿の店主はスライムに驚いていたが、契約の模様をみて落ち着いたようだ。
「いや、まさかモンスターをテイムできる人がいるなんて」
「他のはテイムできる人間もいるってこと?」
「ええ、獣とか鳥とかのビーストテイマー、魔法の人形を操るドールマスターとか、でもモンスターテイマーなんてきいたこともない、まあ契約は絶対だからいいんですがね」
そう説明してくれた。
(ふーん、それでみんな驚いてもなにも言ってこないのか)
「おじさん、これで足りるかな?」
オレが五枚の硬貨をみせる。
「えっ? ええ、これひとつで100ゴールド、一泊分ですよ。 なんかこれネチョってしてません?」
(なるほど、なら五日は泊まれるか......)
「それで、オレが働けるような働き口とかないかな。 なんでもいいんだけど」
(最悪なきゃ、スラリーニョを操る大道芸でもしながら金を稼ぐしかないな)
店主は少し考えている。
「まあ、危険ですがね。 モンスターをテイムできるんなら、冒険者はできるんじゃないですかね」
「冒険者?」
「ええ、依頼を受けて仕事をする何でも屋ですよ。 モンスターと戦うことも多いから、強ければなれますし、資格なんかもいらないですからね。 ただ当然危険ですからおすすめはしませんが......」
(冒険者か...... 明日調べてみるか)
オレとスラリーニョは宿に泊まる。
次の日、朝から店主に聞いた冒険者の団体【冒険者ギルド】があるという場所へと向かった。 大きな白い建物が見えてきた。
「あれかな。 町の中心にあるでかい建物つってたしな」
オレは白い建物へとはいる。 入ると中の男女が一斉にこっちをみる。
(いかつい奴らばかり、なんか剣とか槍なんかの武具を持ってんな。 そうかスラリーニョをみてんのか)
カウンターの受付にいる若い男に話しかける。
「あのぉ、冒険者ってオレでもなれますか?」
「ええ、なれますが、ただとても危険ですよ。 君のような少年では、辞めた方が......」
そういう男にスラリーニョを持ち上げてみせた。
「ひっ! スライム!?」
「オレの仲間です」
「契約したんですか!? モンスターをテイムするなんて......」
男は驚いて口を開けている。
「ま、まあ、そんな特殊な能力を持っているなら、大丈夫かもしれませんね。 それならここに署名の方おねがいします」
そういって何かの皮のような紙を出した。
(うむ、やはり読めるし書けるな。 なになに契約か、えーと冒険者のランクとギルドの紹介料としての取り分、失敗したときのペナルティか......)
オレは名前をかいた。 どうやらこの世界の文字もわかる。
「これは契約となりますので、破ることはできませんがよろしいですか、今なら取り消すことも可能ですよ」
「破ったらどうなるの?」
「死にますね」
そう事も無げに言った。
(な、なるほど、それで契約に絶対に信頼度があるのか)
「はい、確認しました。 トラさまを冒険者として当ギルドはお迎えします。 ではあちらの掲示板から張られている依頼の方、確認してください。 そしてこれ」
銀色のガードを一枚差し出した。
「これは冒険者カードとなっております。 倒したモンスターなどはこのカードをかざしていただければ、その魔力を確認し、こちらで回収させていただきますのでお納めください」
「はい、ありがと」
オレはカードを受けとると早速掲示板へとむかう。
「なるほどな。 モンスター討伐に植物や鉱物あつめ、護衛に配達、確かに何でも屋だな。 さてどうするか......」
「ぴーぴー! ぴー!」
スラリーニョが体の形を変えてなにかを伝えようとしている。
「左右に伸ばしてパタパタ...... そうか! 鳥にリベンジしたいのか、確かに討伐対象のこのウィンドバードってあいつのことだな...... しかし昨日の今日、対策をしないと昨日と同じだ」
周囲を見るとみなが武器を持っている。
「やはり武具を手に入れるしかないな」
「ぴー」
「よし! 武器を買おう」
オレはギルドをでて町を歩く。
「ふむ、ヨーロッパのような町並みだな。 しかし部屋には灯りや風呂もあったし、町には街灯やガラスなんかもある。 宿の親父は魔法でできているといっていたけど、かなりいびつな文明だな」
そうあるいていると剣や槍を並べている店があった。
「ここか」
入ると店主らしきおっさんがぎょっとしている。
「ああ、大丈夫、このスラリーニョは契約しているから」
「そ、そうなんですね。 それにしてもモンスターをつれ歩けるとはお客さん大したもんですな」
「まあそうかな。 でなんか200ゴールドぐらいで手頃な装備が欲しいんだけど」
「200か...... ならこの木の盾と銅の剣ぐらいですね」
「なんか軽いな! 本物? 剣も木製じゃないの」
渡された剣を振り回すと軽さに驚いていった。
「いえいえ、魔法がかかっていて軽くなっておるんですよ」
「ならこれちょうだい」
「ぴー!」
「なにお前も欲しいのか、なんかスライムが持てそうなものある?」
「ス、スライムがですか? えっと、手もないしな...... ああこの兜なんてどうでしょうこれなら被れるはず、古いからおまけでつけますよ」
「ならそれで」
「毎度」
スライムに兜をはめるとピッタリだった。 ピョンピョン跳び跳ねている。
「ぴーぴ!!」
「ふむ、気に入ったか、よしあの鳥を倒しにいこう」
「ちょっとまってください!」
店主がそう話しかけてきた。
「なに? ちゃんとお金払ったけど」
「ええそれは、モンスターを倒しにいくんですか?」
「そう冒険者になったんだ」
「まさか、そのままいくつもりですか。 魔法のアイテムせめてポーションがないと死にますよ」
「ポーション?」
(ゲームにでてきた回復薬だな)
「いや、それほんとに回復すんの? 栄養剤とかじゃなくて」
「ええ、魔法を使って作りますからね。 持ってるのと持ってないのとでは生死に関わりますよ。 あの道具屋に売ってますから買っておいた方がいいです」
「そうなのか、わかったありがと」
オレたちは道具屋でポーションを5つばかりかい、さっそく町の外にでてウィンドバードを探しにでた。 町の外にでて草原を歩く。
(これ一個20ゴールドするから、もう装備とこみで300も使っちまった。 残り100ゴールドだから宿一日しか泊まれん。 なんとしても依頼をこなさないといけないな)
青い液体が入った瓶のポーションをみる。
「あの鳥は通る人に無差別に攻撃しているらしい、確実に500ゴールドの報酬をもらうぞスラリーニョ!」
「ぴーぴー!」
スラリーニョが跳び跳ねている。
「ん? どうした。 うわぁ!!」
その瞬間突風がおこり飛ばされて地面を転がった。
「ぐっ! なんだ! あれは!!」
少しはなれた空に青い鳥が羽ばたいている。
「ウィンドバード!! くそ! 空に剣が届かない!」
ウィンドバードは滑空し高速で横を通る。
「いて!!」
痛みで腕を見るとかなり切れて血が流れている。
「なんだ!! これ風の刃か、お前は大丈夫かスラリーニョ!」
「ぴー!!」
少し切られていたが再生している。
「ふぅ、再生するのかよかった...... いやどうする」
空に舞い上がり旋回してこちらに向かってきた。 その目は赤く光っている。
「速すぎて切れる気がしない......」
「ぴーー!!」
近づいてくるウィンドバードにスラリーニョが跳ねてぶつかる。 突然ぶつかられてウィンドバードは止まり羽ばたいた。
「いまだ!」
オレは片翼を切り裂いた。
「ギャッ!!」
ウィンドバードは地面に落ち、オレは木の盾で押さえつけた。 最初暴れていたが、体力がなくなったのかおとなしくなった。
「死んだのか......」
だがかすかに体が上下している。
(死んでない。 今なら簡単に切れるが......)
「ぴー......」
スラリーニョが悲しそうに鳴いた。
(この依頼は町の人を襲うからだから、襲わせなきゃ無理に殺す必要もないか)
「......おい、言葉はわかるか、人を襲わないなら助けてやる。 もう二度と人を襲わないとオレに誓え」
「ク、クァ......」
ウィンドバードは赤い目から黒い目になっていた。 オレは直感的に理解したと思い、ポーションをウィンドバードへ飲ませる。
「おお! 翼の傷がなおる! 本当に効果あるんだな!」
ウィンドバードは立ち上がり、動かずにこちらをみている。
「いいか約束だぞ。 人を襲うなよ。 でないと殺さなきゃいけないからな」
そうオレが立ち上がると、ウィンドバードが後ろから足をついばむ。
「ん? どうした?」
見るとウィンドバードの翼に模様が光っている。
「これ契約か!」
「クア!」
ウィンドバードは羽ばたいた。
「お前もくるのか!」
「クア、クア!!」
「おお!! 仲間が増えた! よし! お前はあおまると名付ける」
「クァ!!!」
オレはウィンドバードのあおまるを仲間にした。
そしてギルドへと戻る。
「また、増えてる!!」
ギルドの受付の男、マクロは肩に乗るあおまるをみて驚いていった。
「倒さなかったけど、襲わないように契約したから依頼達成でいい?」
「え、ええ、まあ、契約して襲われるのを阻止したので達成と見なします。 では冒険者カードをお預かりします」
そしてカードを返してくれる。
「このカードに入金しましたので、ご使用ください」
「これにお金はいってるの?」
「ええ、それでお店などで購入できますよ」
(電子マネーみたいだな。 魔法のアイテムか)
オレは掲示板へと向かい、依頼を物色する。
「なにかいいものは...... 正直モンスターを殺すのはあまり気がすすまないな」
「クァ!」
「ん? どうしたあおまる」
あおまるがひとつの依頼書をつつく。
「これは、かつて祖母が落とした白金のペンダントを探してください。 落とし物か、報酬は高いが見つかるか...... あっ! まさかあおまるみたのか!」
「クァ」
うなづいているようだ。
「よし! これにしよう報酬10000だ! ラッキー!!」
オレたちは依頼を受け宿に泊まると次の日さっそくむかった。
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