あの約束のモンスターテイマー ~異世界転生モンスターテイム活躍譚~

@hajimari

第1話

「はぁ まじか......」  


 見渡す限り背の高い草が生えている草原にいるオレは、大きなため息をついてたたずむ。


「......まあ、ここにいても仕方ない。 何とかして生きていかないとな」


 オレはそう思い立ち上がろうとする。 


 その時草の茂みから何かが動いた。


「なんだ!? まさか!!」


 ゆっくりのぞくとそこにいたのは、プルプルと柔らかそうに動く、半透明の球体状の何かだった。


(こ、これスライムじゃないのか、モンスターか!!)


 それはこちらに気づくと飛びかかってきた。


「くそぉ!! 異世界に来るなんて、やっぱりやめときゃよかった!!!」


 そうオレは異世界にいた。 


 その話しは少し前にさかのぼる。



「えっ!? オレが死んだ!?」


 ある神殿のような場所でオレはそういった。 目の前には威厳ある白髪で立派な白いひげをたくわえた老人が、大きな椅子に座っている。


「そう...... 戸隠 虎 お前は死んだのだ。 よく思い出してみよ」


 老人に言われて思い出そうとする。


(確か高校にいこうとして、十字路を歩いていた...... そうだ! 子猫が車に!)


「そう。 お前はその猫を助けようとして車に跳ねられた」


「なっ!? そんな......」


「そしてここにいる」   


「そうか...... そういえばあの時の衝撃を覚えている。 くそっ! あっけない人生だ。 夢も叶えられなかったな...... それでここは天国なんですか? 神様」 


「天国などないし、私は神でもない......」


「ええ? じゃあここは?」


「ここは狭間の地、生と死、その間にある場所だ」


「なんでオレはそんなところに......」


「......お前は生き返りたいか」


 そう静かに老人は呟くようにきいた。


「生き返られるの!!?」


「......ある場所、そうお前からみて異世界に転生してもよいならば可能だ」


「異世界......」


「......そうだ。 構わぬか」

 

「でも異世界なんてどうすりゃいいんだ......」


「......トラお主に与える力がある」


「与える力?」


「そのままの体、記憶での転生、そしてモンスターテイムの力だ」


「モンスターテイム? その世界ってモンスターいんの!?」


「ああ」


「そんなところで生き残れるわけないだろ!」


「モンスターテイム、契約して使役することだ。 この力があればモンスターを操れる」


「ほぉ、仲間になるってことか」


「どうする、お前が決めよ」


「うーん、まだ叶えたい夢もあったしな...... わかった......」


 まだ生きていたかったオレは老人にそういった。


「では、契約だ。 手をとれ」


 椅子から立ち上がった老人はオレに手をさしのべた。 その手をとると胸の辺りが光り模様が浮かんだ。


「それで、その世界のこともっと詳しく......」


「転生......」


 そう老人が杖を振るうとオレの体は光り始める。


「ちょっとまって! まだ他に聞きたいことが......」 


「頼む。 かの地を救ってくれ......」


 そう老人の声が遠くにきこえた。


 そして気づいたらここにいた。 そしてオレはいまスライムと対峙している。


「モンスターと戦うなんて、本当にできんのかよ! でもスライムといえば大抵、ゲームなんかでは最弱のモンスターだ!」


 スライムは体を引っ込めると跳ねてぶつかってきた。 オレは転がる。


「いた!! なんだ!? かなりいたい!! 弱いんじゃないのか!」


 また引っ込んで飛んでくる。 なんとかかわした。


「こいつ!! スライムのくせになまいきだぞ!」

 

 オレは拳を握り殴り付ける。 


「どうだ!! オレの拳は!」


「ぴ!」


 スライムは小さくなくとプルプルとふるえ、ぶつかってきた。


「ぐふっ! フッ、この程度でやったつもりか! オレをなめるなぁぁぁ!!」


「ぴぴぴ!」 


 オレとスライムは熱くぶつかり合った。 そして日もくれる頃、ついに互いに地面に倒れた。


「......やるじゃないか」


「......ぴぴ」


 そういってオレが手を伸ばすとスライムは、ニュッと体を伸ばしその手に触れた。 その瞬間スライムの体が光る。 


「なんだ!? スライムの体に模様がうかんだ!」


「ぴー! ぴー!」


 スライムは体を起こすとピョンピョン跳び跳ねている


「これオレの胸にある...... そうかこれが契約、スライムをテイムしたのか!」


「ぴーぴーぴー」


 オレはスライムを仲間にしたのだ。


「よし! いくぞ! お前とオレなら容易くモンスターを倒せるだろう!」


「ぴー!」


 オレとスライムは草原に入ると、風をまとう青い鳥をみつけた。


「あれはモンスターか! いくぞ!! オレたちの友情パワーをみせてやろう!!」


「ぴーぴー!!」


 二人でモンスターにたち向かうが、こてんぱんにされ傷だらけで逃げ帰る。


「こ、これは負けたわけじゃない。 せ、戦略的撤退だ......」


「ぴー......」


 スライムが落ち込んだのかグニャリと平たくなっている。


「落ち込むな! 明日やればいい! 明日できなければ、明後日やればいい!! 生きてさえいればいつかは勝てる!」


「ぴーぴー!!」


 スライムは理解したのか跳び跳ねている。


「まずは今日近くに人がいるか探すぞ」


「ぴー」


 オレたちがよたりながら、そこらを辺をさまよっていると、遠くに町らしきものがみえる。


「よ、よし町だ! いくぞ! あっ! 名前、スラリ...... いやスラリーニョだ。 お前の名前はスラリーニョだ」


「ぴーぴーぴー!!」


 そう跳ねて、喜んでいるように見えた。


「よし、スラリーニョはやく町にいこう」


「ぴーー!」


 こうしてオレたちは町へと向かった。


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