毒舌美少女が鏡に向かって誰が一番美しいのか聞いていたからおちょくったら、なんか惚れられたんですけど。
猫丸
黒ってえr……
ある日の放課後、引き出しに宿題を忘れた俺は学校まで取りに来たんだ。
空は夕焼けが指していて、9月のわりに少し肌寒かった。
トン、トン……
誰もいない廊下に自分の足音が大きく響く。
外は部活動で騒がしいのに、どうして校舎は静かなんだろう。
静かな校舎。騒がしい校舎しか知らない俺にとっては、もはや異世界のようにも見えた。
「早く取って帰ろう」
俺は急ぎ足で階段を上った。
3階まで上がった俺は廊下を進む。
もう少しで俺の教室だ。
「……ん?誰かいるのか?」
どこからか声が聞こえた、ような気がした。
女性の声だ。
少しドキッとした俺はゆっくりと物音を立てないように進んだ。
「……まだ聞こえる。というか、俺の教室からだ」
俺は教室の前まで来て、身を隠して耳を立てる。
「ふふん、やっぱり今日も私は可愛いわね」
……。
やべぇの聞いたわ。
この声は、
とんだナルシストじゃねえか。
とも、言い切れないんだよな。実際美少女だし。学校で一二を争う程には。
毎日、誰かしらに告白されるとか噂されてる。
にしても、入りずれぇ。
つか入れねぇ。
もう帰ろう。ここにいるのバレてもまずいしな。相手が相手だしな。
俺はまた物音を立てずに帰ろうと腰を上げる。
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」
うわ、まじか。何か教室にある鏡にしゃべりかけてる。
ちょっと引くわ。
「それは、聖女と呼ばれとても優しくて笑顔が美しい
うわ、まじか。ついつい返してしまったわ。いつもの悪のりが出たな。
引くわー。
そして、この場からすぐさま引くわ。
俺は走る。
「え、だ、誰?!」
遅れて、教室の扉が開き、顔を出す清水さん。
くそっ、もう少しで曲がり角なんだ!バレるなバレるなバレるな!!
「待ちなさい、
あ、バレちゃった。
◆◇◆◇◆◇
「で、どこから聞いていたの、変態さん?」
清水さんが教室の床に正座をする俺に問いかける。
このまま逃げても明日問い詰められて殺されるだけだと思い、素直に捕まりました。
俺はゆっくりと立ち上がり、例の鏡の前に立つ。
「ふふん、やっぱり今日も私は可愛いわね」
裏声になりながらも鏡に向かってそう言う。
「誰が実演までしろって言ったの?!日本語すら分からないの?子供の相手したくないんだけど」
清水さんが顔を赤くして怒る。たぶん、照れて赤くなってる。相変わらず殺傷力強いけどな。
「ごめんなさい」
俺は再び正座に戻る。
余談なんだが、清水さんは今机の上に膝を組んで座っている。そして、俺の通う高校のスカートは短い。
つまり、もう分かっただろ?
「白だッ!!」
「黒よ」
くそっ!
見えそうで見えないが一番モヤモヤすんだよな!
つか、黒ってえr……
「顔に出てるわよ、変態さん。通報しようかしら」
清水さんが怖い笑顔でスマホを見せびらす。
「通報したら、捕まる前に意地でも中見てやるからな」
「……調子狂うわね」
清水さんが静かにスマホをポケットに戻した。
「まあ、いいわ。それで、『聖女と呼ばれとても優しくて笑顔が美しい早乙女桔梗』について言い訳しなさい?」
あ、そこも怒ってんのね。
眉がピクピクしていらっしゃる。
一応、俺の言い分は聞くが許さないつもりだろう。
許されなかったらどうなるんだろうな。
俺は頭をひねり考え抜いて、答えをひねり出した。
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