008. 難問だらけの設定ターン@5
「ステータスはジョブ決定の後ね。ヘルプ……は、標のことでいいのかな?」
「たぶんそう」
「それなら最初の儀を最後まで行って、所属を決めてからだね」
また知らん情報が増えてしまった。脱線しそうになる思考をもとに戻して、スイにスキルの説明をしてもらう。
この世界に残っている部分を教えてもらったときと同じ、中空に浮かぶ説明図を交えて伝えられたことはこう。
「種別の初期選択は一律SP5、種別の2個目からはSP10。戦闘用と、箱庭の運営用に一つずつは必須で、あとは好きにしていいってこと? で、私の場合はSP30しかないから、出来たらそれぞれの種別から選んだほうがお得、と」
「得というか……今後のことを考えたらスキル数的にそうするしかないかな。まあ、これも最終的にはホップが決めることだけど」
「後から取れはするんだよな」
「そうだね。顕現していないスキルなんかも、君たちが生み出すか世界が思い出すかすれば追加されると思うよ」
そうして見せてもらったスキルリストは……なんというかかなりの数があった。一応全部に目が通せるくらいの分量ではあるのだが、このキャラの方向性を決めないと迷うこと必死だ。もちろん、酒造を第一位に据えてはいるんだけど、生産ではなく戦闘スタイルの話である。あとは、他ゲームではあまり見ない運営系のあれそれ。シミュレーションだとよく見るものではあるんだけど、それがMMOだとどういう形に作用してくるのか。まあ、箱庭の運営、と、伝えられている通り、領地争奪戦ではないのが救いだ。
せっかく作り出した酒を誰かに取られるとかごめんです。
なんにしろまずは方向性。採取は自分で行うことが多いだろうから、それに適した戦闘スタイルをですね。
(やっぱり暗殺系方向かなあ)
生産寄りにビルドするとしてもある程度戦えたほうがいい。極振りするには飽き性なこの性格が邪魔をして、途中で苦しくなること請け合いだ。ソロでもある程度まで行ける構成にしないと、個人行動バンザイないつものメンバーと合流したところで、役に立てるとも思えない。MMOは持ちつ持たれつ、寄り掛かるだけなんざ楽しくない。
最初から方向性や役割を打ち合わせて〜なんて、それこそ面倒なのでやってなくて。
「とりあえず採取と隠密……おん?」
スキルリストは検索で絞れたので、まずは採取と打ち込んだところ二つヒットした。
【採取(基礎)】【採取(知識)】と表示されている。種別を見れば、【採取(基礎)】が <<採集系>> で【採取(知識)】が <<知識系>> らしい。
これは、あれでしょ? 知識持ってると品質が上がるとか、採れるものが増えるとか、そういうやつ。
まさかと思って調理で検索をかければ、同じように【調理(基礎)】【調理(知識)】がヒットした。
(のおおおおお!)
なお酒造や醸造はヒットしない。くそう!!予想はついてたけど悲しい!!
「ぐぬぬ……覚悟の上とはいえ結構きっつい」
概算2〜4個分のスキルを犠牲にしたことになるのだから、スキルで悩むことは解っていたけれどここまで細分化されてるなんて予想外!
「これはあれか、生産系は一旦捨てるか……」
もちろん初期に選択しないからといって諦める気は毛頭ない。採集と生産と秤にかけたとき、採集のほうが次に繋げやすい判断をしたまでだ。
集めたもので料理の真似事でもすればきっとスキルが生えるに違いない!そこから多分醸造とかいけるいける!!
というわけで【採取(基礎)】と【採取(知識)】を取得枠にせ……っとお??
「なんかいる」
スキル取得枠はまだまっさらなはずなのに、そこにいらっしゃるのは【剪定作業】と【水魔法】のお二つ。
「スイさんなんかいるんだけど」
傍らでこちらの苦悩をただ見守っていた神に問いかければ、興味深そうに覗き込んできた。ややあって納得したように頷かれる。
「精霊たちのいたずらだね。面白いからくれたんだよ」
「おもしろ……いや、これSP消費は」
「プレゼントなんだから消費はないよ」
「まっじか」
わー!なんか面白がられてるのは腑に落ちないけど助かるう!
そっか、これがラベルが反応した云々のアナウンス効果か。納得。
ちなみに【剪定作業】は <<運営:実務>>、【水魔法】は <<戦闘:魔法>> の種別だった。
風魔法取ろうと思ってたけど2個目はSP10だから考え直さないと。と?おや?これもSP5で取れるっぽい?
どうやらラベルで追加されたスキルは完全別枠扱いらしい。
うーん、ここで風魔法をとって魔法師系ビルドも悪くないっちゃ悪くないんだが。最初に暗殺系ビルドで考えてた分、変更すると調整が必要で。
悩むぅ。自由度が高いと時間が吸われますね……。
魔法師系だとお酒になんらかの効果もたせられそうだし、暗殺系は採集がしやすくなるだろうから原材料集めが捗りそうだし。箱庭内だけの採集で済むなら隠密とか考えなくてもいいんだけど、ぱっと見取れるものなさそうだから外での採集必要そうなんだよねえ。
ウンウン唸って、最終的にはこんな感じで落ち着いた。
【採取(基礎)】【採取(知識)】【気配希釈】【短剣】【鑑定】【水魔法】【剪定作業】
後ろ二つはラベル取得!運営系が入ってたのは考えること減って助かった。やっぱビジュアルより実用性が大事よ。見た目も良ければ言うことないけどね!
「決まった?」
「おう」
「せっかく箱庭内に入ったのに、試し撃ちとかしなくてよかったの?」
「え?」
そぉいうことは!はやく!言え!!
「考え直すのめんどいからこれでいいです!!」
「そっかあ」
ちょっと、ほんのちょっと勿体ない気持ちはあったけど!これでいいんですぅ!!
「じゃ、決定っと。最後にジョブ選択。んー、ホップのスキル構成だとこんな感じかな」
最終的な決定はスイが行うらしく、言葉と共にスキルリストのウィンドウが閉じる。代わりとばかりに開いたウィンドウには、いくつかのジョブが表示されていた。スキルリストに比べてかなり少ない。【剣士】【術士】【隠形士】の三つのみだ。
これ多分、スキル選択によってジョブ出現が変わるやつだ。このゲームはスキルの方に比重が置かれているらしい。
この中なら【隠形士】だろうな。
今回は悩むこともなく選択する。スイと最終確認を終えて、ようやく一通りのキャラメイクに区切りがついた。
「長かった!それでは、ステータスオープン!」
意気揚々と口にする。
何も起こらない。
シンとした静けさの中、風が草を揺らす音がただ流れる。
「どうして????」
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おわ、らなかった!
次回!ようやくチュートリアルから抜ける!といいな!!
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