240604
【2024年6月4日】
「えぇっ!?」
悲鳴にも聞こえる叫びが上がった。それはとても綺麗に重なっていて、まさか10人の声であるなんてわからない程だった。
「いやはや、はやいや。改めて素晴らしいステージだったよ。なんたって、このさいちゃんを唸らせてしまうんだからね……グエーって」
果たしてそれは唸り声と言っても良いものなのかいささか疑問ではあるのだが、さいちゃんさんは一昨日のライブで喝采を受けた五線譜メンバーに拍手を送った。
「さいちゃんさん、あの日は仕事でスタジオには来ていなかったですよね?」
「嫌だなぁ。ジュンじゅん、さいちゃんさんはちゃんと観ていたよ」
「怖い話ですか?」
「まっさか〜 文明の利器だよ。これ」
さいちゃんはそういうとスマートフォンを取り出してこちらに見せて来た。
「配信ですか」
「便利な時代になったよね〜 唯姐のライブ最高だったよ」
「ダメだ。話が通じない」
いつもの事だけど。
「ちょいと、ジュンじゅんってばさいちゃんさんを舐めて貰っちゃ困りんぐだよ。こっちもちゃんと観たよ。アーカイブで」
「それなら最初からそう言えば良いでしょうに」
「……はいっ! 話を戻すけど〜 五線譜の皆んなには卒業までにCDを発売してもらいます!」
「いやいやいや、彩香さん!? どうしてそんな話に?」
「あんな素敵な歌声を世界に知らしめないなんて勿体無い! 是非ともさいちゃんと世界を目指してみませんか?」
「えっと……音、どうしよう」
「私は別にどっちでも」
「いや、でもこんなチャンス中々ないよ」
「どっちでも良いけど、私たちだけ決められる事では無いでしょう。また礼堂先生に怒られても面倒だし」
「それもそっか……」
話を受けるつもりでいた伊吹先輩は冷静というか、話を受けるにしても面倒ごとには巻き込まれたくない様子の音先輩に諭されてしゅんと肩を落とした。
「連絡先はブッキーの携帯に入れてあるからなる早……具体的には今日の6時くらいには返事くれると、ハッピー・ラッキー・ラブ・スマイル・ドリ〜〜〜ムかな。よろちく」
そう告げるとさいちゃんさんはまるで怪盗のように煙玉を使って白煙の中に消えた。
本当になんでもありな人だ……。
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