第11話 実験の成果ー1ー

司令は資料を取りに執務室へ、俺と景子先生は医療部自慢の分析装置がある部屋に行った。

「どう?これが医療部自慢のデータ分析装置よ」

「・・・スパコンですかね・・・」

大きな研究所に置かれてるスパコンのような、というかスパコンそのものだった。

「確かに見た目はスパコンと瓜二つだけど、中身が違うのよ。我ら公安部の名だたる技術職人がエクシード・フォースの分析のためだけに作ってくれた一級品なのよ。これのおかげで汎用型武器も完成したし、超越者によりよいサポートを提供できるようになったの。」

「それは技術部が誇るべきでは・・・」と言おうと思ったが、一応医療部の誇りらしいのであえて触れないでおいた。

すると部屋のドアが開き誰かが入ってきた。はじめは司令かと思っていたが、入ってきたのは男だった。

「まったく、技術職人っていうのは古臭いからやめてくれって言ってるだろう、景子先生」

「あら、でも職人っていいじゃない。かっこいいわよ」

まったく見たことのない人だったので景子先生に尋ねる。

「先生、この人は?」

「あぁ、教えられてなかったのね。この人こそ、この分析装置の開発の責任者、フォードマン博士こと須藤明彦さんよ。技術部の偉い人なのよ」

「なるほど。よろしくお願いします」

「そうかしこまらなくていいよ。僕のことはわかる範囲なら何とでも呼んでくれ。ただ技術職人だけはやめてくれ。古臭くてかっこ悪いし・・・」

「でもいいと思いますけどね」

「君も景子先生と同じなのかい・・・」

と肩を落とし落胆する。

「僕の技術部内での役職はフォースエンジニア。フォースに関してのシステムなどの設計を担当してるよ。さっき、景子先生が言ってたと思うけど、その分析装置のシステムは僕が開発したんだ。技術面では役立てると思うからよろしく」

「こちらこそ。よろしくお願いいたします」

「かしこまらないでって言ったばかりじゃないか」

どうやらこの人はかしこまられるのが本当に苦手らしく、おそらく同じ目線で話したほうが事もいいように進むだろう。

「じゃあ、これからは普通に話させていただきます」

「助かるよ」

という会話をしていると司令が資料を持って来た。

「来てたのか。須藤。さて、全員そろった。始めるとしよう。隼人、君は帰っててもいいしここに残っててもいい。判断は君に任せよう」

帰ってもいいといわれたが、帰ったところで暇、そもそもここに来たのも暇が原因だったので、帰らず、残ることにした。

「では須藤は収集データの分析、先生は解析をお願いします」

「わかったわ」

「任せてくれ」

須藤さんのモニターにはおびただしい量の情報が表示されている。

「えっと、これらはなんのデータなんですか」

「これは先ほどの戦闘の際収集したもので君の力量や種類など合わせて三百種類以上の情報をもとに、見て分かるようなデータに変換し、分析するんだ。分析したデータを景子先生に送って君の覚醒状態と平常状態の違いを解析してもらうんだ」

「なるほど、どれくらい時間かかるんですかね」

「う~ん、情報が多いからなぁ。前後するかもしれないけど五分くらいかな」

「・・・え、五分?」

「遅いかな?」

「いや・・・はやい、はやすぎる気がするんですが」

「そうか?データ分析は僕の十八番だから、ちょっと遅いくらいだ」

「すごい・・・」

「そうかい。褒めてもらえるとは。うれしいな」

「さて、僕は作業に戻るよ。暇なら景子先生を尋ねるといい。僕がデータ送るまで暇だと思うから」

「わかりました」

俺は須藤さんから離れ景子先生のところへ行った。

「ん?あらどうしたの。何か用かしら」

「いえ、暇なので雑談でもどうかと」

「あら、いいじゃないの。ならさっきの戦闘のとき言いそびれたことを話しちゃおうかしら」

「さっきの話・・・?」

「あら、もう忘れたのかしら。私がエージェンシーを必要としないこと」

「あぁ、そのことですか」

「そのことよ。私がエージェンシーを必要としない理由は、とある実験が影響してるの」

「とある実験・・・?」

「ええ。題目はエージェンシーを介さない力の行使のための実験」

「結果として先生はエージェンシーがいらなくなったから成功した、ということでよろしいでしょうか」

「・・・題目の達成程度に至っては満点だわ。だけど、私はそれっきりで何を用いても治療系以外の力を使えなくなったの」

「さっき聞きましたね」

「えぇ。何を用いても、というのはあなたが使った汎用型武器もそう。葦名さんから聞いてるかもしれないけど、汎用型武器というのは自分の力を特定の力に変換できるの。だからフォースの素質がある人ならだれでも扱えるはずなの。でも私は扱えない。力の変換ができないの」

「なぜそんなことに・・・」

「理由はほとんどわかってるけど、これをわかりやすく話すには数時間必要よ?知りたい・・・?」

「いえ、またの機会に!」

「ふふ、わかったわ。あら、ちょうど職人からデータが送られてきたわ。今から解析するわ」

「つかぬことをお伺いしますが・・・どれくらいの時間で終わりますかね・・・?」

「そうね・・・ちょっと情報多いから時間かかるし・・・三分っていうところかしら・・・」

「・・・なんなんだここは。プロフェッショナルの集まりか・・・」

とつぶやくと資料を読み漁っている司令が声をかけてきた。

「あながち間違ってないぞ。この公安委員会の各部署のメンバーは日本全国から集められた精鋭でな。須藤は世界の技術系大会での優勝。二位と大差をつけた圧倒的勝利。景子先生に関しては、日本最大級の国立病院で実力だけで院長へと昇りつめた秀才だ。しかもたった2年でだ」

「精鋭だ・・・」

「まあ、お前もあんま変わらんかもしれんがな。ステージ マスター いわば最強の超越者だからな」

「でも・・・自分の力をコントロールできないし・・・」

「確かにな。コントロールできない君の状態では、君の力を発揮しきれていない。今のままだと、君の強さは執行者の中でも最弱レベルだ。覚醒下にならないと力を発揮できない、しかも覚醒の条件が分からない。となるとステージでいえばせいぜいⅡ相当だろう。まぁ、安心しろ。どうやら覚醒の条件の候補が出たらしい」

「え・・・?」

と後ろを見てみると、なにやらうれしそうな顔をしている景子先生がいた。

「覚醒下と平常時での違いが分かったわよ」

「何の違いがあったんですか・・・!?」

「まぁまぁ落ち着いて。詳しく教えてあげるから講義室に来てちょうだい」

「行くぞ、隼人」

「行こうか」

司令と須藤さんとともに講義室と言われる場所に移動した。

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