閑話・飯富火器妄察夜話 上

 今回、もう少しさらっと火薬について触れる予定でしたが、専門的な話題なので一応確認したり調べ直したりしてたら楽しくなって脱線して遅くなりました…が、文系が中途半端な知識に基づいて調べた結果ですので間違いがあればご容赦を(私の文章力ではこれ以上は平易にならなかったよ…ごめん、パトラッシュ…)。

 と、言う事で本編ではなく閑話にしました。しかも二回に分けて…今回はオタクが銃砲火器について熱く語るだけの回です。読み飛ばして頂いて結構です。読まなくても本編に何も影響は及ぼさないでしょう。なんなら途中から一人称が作者本人と混じって良くわからない状況になります。それでも物申したかったのです!

 ※※※※※※


 それはそれは沢山の硝石(仮)が採れたそうな。はい、回収した捨てた水を含む氷と土からです…冬で良かった。

 さて、と言う訳で硝石(仮)が採取出来た。目の前には灰色の釉薬が美しい小さめの壺に一杯の白い粉。数回鍋で煮詰めただけでこれだけ確保出来たので残りの土を使えばかなりの量が確保出来るだろう。

 但し、次に採れるのは数十年後のはずなので無駄使いは出来ない。確か、草と屎尿を熟成させると出来ると聞いた様な気がするのでそちらも雪が解けたら小規模にでも始めてみようとは思う。臭いがきつそうだな…土壌汚染とかするのだろうか?するなら川上は避けた方が良いか?そもそも適当な場所が無いな。空いている土地は門周辺なんだがあそこでは色々と問題が有り過ぎる。村に入ると糞尿が積み上がっていますとか何の嫌がらせだと言う話になる。まぁ、追々考えよう。何せ残りの硫黄に関して調達の目処が立っていないし、手に入るとしても年単位で後の事になるだろうから。

 因みに壺は蒸留器の製作に先駆けて釉薬で全面を覆われた陶器を焼く実験の一環で炭焼き窯で焼かれた一品である。釉薬で表面が覆われてないと折角蒸留したアルコール分が途中で染み込んじゃうかもしれないからね。釉薬については仁淳に多少の知識があったので全面的に任せている。今までが素焼きの土器で去年から釉薬無しの陶器を焼き始めたばかりだったので見た目の変化が大きく、村の特に女衆が、やれ碗が欲しいだの、瓶が欲しいだの、鍋は出来ないのかだの仁淳に様々言って寄越すものだから仁淳も大分参っている様子だ。


 さて、上手く行けば数年後に火薬が手に入る未来が訪れるとするならば、どの様に使うかも決めておく必要がある。火薬と一緒に火縄銃やら大筒が降って来る訳ではないのだ。

 取り敢えず、実現可能な案としてパっと考え付くのは四つ。小銃(火縄銃)、小口径砲(大筒)、擲弾(焙烙玉)、肥料である。四つ目を選べればどれ程有難い事かと思うがそんな未来は訪れそうに無いので肥料は除外する。

 ここからは横文字大目、文系軽度ミリオタのガバガバ知識(予防線)で失礼するが、上記を構造的に大まかに分けるならば小銃と小口径砲の組み合わせに対して擲弾が仲間外れと言う事になろうか。

 前者は密閉された筒(砲身)の中で着火した火薬の爆発による推進力で金属の(別に硬ければ金属である必要はないかもしれないが)弾丸を高速で打ち出して遠くの敵を打ち倒す。

 対して擲弾はグレネードと言う呼び方の方が一般的かもしれないが、読んで字の通り投擲する弾だ。硬い殻の内部に火薬と小さな鉄や石を詰め、敵中で爆発すると同時に内部の鉄や石を爆発の勢いで周囲に撒き散らし殺傷する。手榴弾が一番想像しやすいと思う。現代ではグレネードと言うと専らライフルの先や専用の器具で発射する物を指し、手榴弾と別の括りの様に扱われる事もあるが本来は投擲する武器である。最も簡単な例えをするならば爆弾を相手に投げつけると思って貰えばいい。


 では、三者の内どれが良いのか言う話をする前に銃砲から打ち出す弾丸(砲弾)と言う物について理解する必要があると思う。弾丸には大まかに分けて二種類ある。徹甲弾と榴弾である。

 前者は読んで字の如く(二回目)、装甲を貫徹する為の弾である。要するに鉄や鉛の弾である。科学技術が進歩すればそんな簡単な話ではなくなるが現状はその認識で良いだろう。弾の重量と速度による運動エネルギーで対象を破壊する。火縄銃や大筒の弾は球弾ラウンドショットなので当然こちらになる。

 後者は中に炸薬が封入された弾丸を打ち出し着弾地点付近で弾丸が爆発、周囲の敵を殺傷する弾である。超絶簡単に言うと爆弾を大砲で打ち出して可及的速やかにを敵陣にお届けする為の弾である。そう言うと擲弾と何が違うのかと言う話になるが投射距離の差だと思えば良いのではないだろうか。お手軽に近くの敵を吹き飛ばすのが擲弾。大仰に遠くの敵を吹き飛ばすのが榴弾である。

 先ほどの様に区別するならば発射方式から見れば銃砲から打ち出す徹甲弾と榴弾が同類で、投擲される擲弾が仲間外れ。敵への損害の与え方から区別するならば弾丸が破裂して着弾地点の周囲に被害を与える榴弾と擲弾に対して、弾丸の打撃力で当たった対象のみを破壊する徹甲弾が仲間外れと言えよう。

 因みに両者の合いの子の徹甲榴弾だの弾の行方を目視する為の曳光弾だのそれ以外も山程あるだろうが、そこは話がややこしくなり過ぎるし俺の知識の範囲外だ。何より関係の無い話になるので割愛する。


なんと次回に恐ろしいことに続く

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