【GL】二人がいいの4 私といつか出会う誰か
葉っぱ
第1話 消えるんだな
ある夕方。焼けるような夕日が沈むのを、私は行き当たりの知らない公園のベンチで見ていた。ほとんど人の居ない小さな公園だ。
「ああ。終わってしまった。」
言葉にしてみると、どうしようもない欠乏感に襲われた。
私は3年も付き合った彼女と今日、お別れした。
仕方ないと思う。喧嘩ばかりしていた。お互いに言葉が足りずに、不満ばかりが募っていた。愛なのか、それとも情なのかはもうわからないけれど、それでも私は別れたくなかった。
「後悔してるって言ったって、じゃあどうすれば良かったのって思うよ。。」
何度か別れ話が出る度に、お互いに、「これからは気をつける」「これからはちゃんと話し合おう」と言い合ったけれど、改善はなかった。相性が合わなかったと言えばそれまでだ。
「でも、、好きだったんだけどなぁ。。」
そう口に出してみると、ようやく涙が溢れてきた。この景色にこの出来事は泣くのが当たり前だろうと思っていたから、涙が出てホッとする。
すると、俯いた私が見る地面に黒い影が1つ現れたので、ゆっくりと涙を流しながら上を向いてその人物を見た。
「おばちゃん、泣いているの?」
おばちゃんかぁ。。まぁ、小さな子からしたらおばちゃんなのかな。。
「ん、ちょっと泣いちゃったけど大丈夫よ。」
「わんちゃん抱っこする?」
小さな女の子は小さな茶色い犬を抱っこしていた。生まれて間もないような小さい、、ああ、かわいらしいね。
「いいの?かわいいね。貴方のわんちゃん?」
「うん!生まれたの。私の弟だよ。」
「じゃあ、ちょっとだけ抱っこさせてもらおうかな。」
ああ、動物が癒やしになるって本当だね。小さな子も。あったかい。。
また目に涙が溜まりそうになるのをぐっとこらえて笑顔で女の子と犬を交互に見る。すると、
「おーい。そろそろ帰っておいでー?」
小走りで駆け寄ってくる女性。この子のお母さんだろう。
「はぁ、、すみません。うちの子が。」
「あ、いえ。わんちゃんを抱っこさせてくれたんです。」
「犬、お好きですか?・・・ってあれ?」
「はい?・・・あ。」
お互いによく顔を見てみれば、面影ですぐにわかった。同じ中学、同じクラスだったこともある、、私が2年くらいずっと片思いをしていた人だ。
「あは。同じ中学だったよね?私のことわかる?」
「うん。同じクラスだったことあるよね。」
ああ、そう。私、この子のことすごい好きだった。この笑い方、、目が細くなると横を向いていたずらっぽく笑う。
「久しぶりだね。お子さんだったんだ?」
「うん。結婚してこの辺に住んでて。あ、パートで近くのホームセンターにいるから来たら声かけてね?」
「へぇ。そうなんだ。うん、見かけたら声かける。」
「あ、ごめん。夕飯作ってる途中で迎えに来たの。そろそろ行くね。」
「ああ、うん。また。あ、わんちゃん抱っこさせてくれてありがとうね。また遊んでね?」
そう言って、昔好きだった人と、そのこどもが家に帰っていくのを手を振って見送った。
「ああ、好きだったなぁ。」
なんでこんな時に会っちゃうかな。ダブルパンチじゃないか。結婚してこどもも居て、幸せそうでって。。
もう公園には誰も居ない。私は上を向くと、止められなかった大粒の涙を流れるまま流し続けるしかなかった。
ああ、そっか。あんなに好きだったけど、もう今はそういう風に思わないんだなぁ。
かわいいと思った。あの頃の気持ちを思いだした。それでも恋にはならない。今は私が思うのはさっき別れたあの人のことだけ。
「ううっ・・・、そっか。この想いもしばらくしたらそうやって消えていくんだなぁ。。いやだなぁ・・・」
それでまた、別の人を好きになる、のだろう。
いやだな。だけど、そうなんだろうな。
夕日が沈み、そろそろ暗くて帰るしかなくなった。
家に帰ったら、あの人の私物をまとめて送らなければならない。
写真も削除して、あと、連絡先はどうしよう、、
ああ。。
今度こそ、っていつになるかわからないけど、、
大事だと、貴方と二人がいいのと、ちゃんと言えるようになろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます