夢の桜が散る頃に

春戯時:-)

第1夢 夢の桜が散る頃に

あぁ、もう無理だ。

私こと、柳 奏(やなぎ かなで)14歳は、ビル11階から飛び降り自殺しようと思う。

なんでかって言うと大好きだった吹奏楽部を辞めた、そして病んだ。

大雑把すぎて、分からないか。

まず、親友に「好きな人バラしたでしょ」と勝手に言われて、精神的に追い詰められた。

精神的に追い詰められた理由は、メールで私のアカウントをブロックされたから。

そして吹奏楽部の部活動にも参加できず、食欲も失せて、だんだん自分の存在意義を考えるようになった。

ゲームも楽しくなくなった。

これでTHE END、動機はこれで十分。

親にも「死ねば?」って言われたしね。

本心じゃないんだろうけど。

でも傷付いた心の傷は埋まらない。

親友には、「ブロックしたまま、消しちゃった~。ごめ~ん」って軽く言われた。

こっちはそれを気にかけて、おかしくなったっていうのにさ。

吹奏楽部で遅れた部分を取り戻すには、もう遅いと思った。

今の私じゃ、駄目だから。

親友と思っていたその子は、私の1番嫌いな子になった。

まぁ元々、親友じゃなかったんだろうけど。

私が死んで悲しむ人はいるんだろうけどさ。


「もう、戻れないよ……」


私はおかしくなった。

いや、少し感情が欠落したっていうか。

上手く、笑えなくなった。

人生の面白味が、分かんなくなった。

好きなものが好きじゃ、なくなった。

1番嫌いなその子に謝られても、私の中にぽっかりと空いたその穴は埋まらない。

いつも私を虚無感が包んでいた。


「でも、小説は面白かったなぁ」


自分で書いた小説。

そこに思うまま言葉を連ねた。

でも、私の穴は埋まらない。


「夢の桜が散る頃に、●●●●●●●●●●●●、か……」


我ながら、変な台詞だと思う。

でも主人公のこの言葉、凄く好きだったんだよなぁ。

主人公の"奏"。

私と同じ名前で、魔女設定だったんだよね。

でも本当はただの人間で、拾ってくれた魔女に魔法を教えられたっていう。

私の作った小説は、以外と人気だった。

いつもコメントをしてくれた、(仮名)冬(ふゆ)さん達。

申し訳ないなぁ。

いつも励ましてくれたりしたんだよなぁ。

冬さんは男性で、私と同い年の14歳。

一緒に猫カフェとかも行ってくれた。

冬さんは私の小説に出てくる冬宵(とうよ)というキャラが気に入っていたらしい。

冬宵は黒騎士という設定で、魔王軍幹部。

主人公である奏に小さい頃まだ奏が人間として生きていた頃に、奏に救われた。

色々な困難を越えていくうちに昔、出会っていたことに気付く。

そして最後は2人が家族をつくって終わり。

まぁ、その後は2人とも神様に昇格するんだけどね。


「そろそろ、やるかぁ」


スマホの小説投稿サイトに『みんな、今までありがとう。ばいばい』と投稿する。

すると、すぐに冬さんからコメントがくる。


『どうしたんですか?話なら聞きます。だから、悲しいこと言わないでください』


そのコメントに思わず涙がこぼれ落ちる。

やだ、死にたくなくなっちゃうじゃん。


「やめよっかな」


そう思って柵を跨ごうとした、その時。

強風が吹いて私はビルの11階から落ちてしまった。

あ、駄目だこりゃ……。

今さらになって、"死にたくない"という願いが脳内をよぎる。

謝るとしたら……


「ごめんなさい、本当の名前も知らない貴方。そして、ありがとう」


最後にそう言って、私の命の灯りは消えた。

あぁ、ごめんなさい。

お兄ちゃんは夢を叶えてね、お姉ちゃんは良い旦那さんと結婚してね、お母さんは長生きしてね、お父さんは病気治してね。

そして冬さんは……また会いたいな。

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