俺にやたらと付き纏う職場のパートで中年の女性、なんで俺なんだ?

神石水亞宮類

第1話 俺にやたらと付き纏う職場のパートで中年の女性、なんで俺なんだ?




俺は20年、同じ職場で働いている。

町工場の社員で、これといって給料がいい訳でもないのだが、

ここの社長が、偉く俺を大事に思ってくれていて俺にとっても

居心地のいい職場のはずだった。



・・・3年前までは、職場に新しくパートの女性を入れる事になり

俺はその中の一人の女性に何故か? 付き纏われている。

あとの二人はまだ若く彼氏と同棲中の女の子と50代のベテラン主婦、

そしてこの女性の3人を社長が採用した。

二人は別に男性に飢えている訳でもなく普通に俺達社員に接してくれる。



だがこのパートの中年女性は? 45歳で未だ一度も結婚せず独身で

彼氏も10年以上居ないらしい。

まあ、“10年前に彼氏が居たかまでは追求していないから分からない。”

なにしろ、目つきが男を狙う目で俺達を見ているんだ。

俺以外の職場の男性は、皆既婚者。

自動的にこの女性のターゲットが俺になったんだと思うのだが、

なんでこんな狭い職場で男を探すのか?

俺だって、“女性のタイプがあるんだ!”

若くて可愛い女性と付き合いたい!

なんでよりによって、“中年女性と付き合わなくてはならないのか?”



『橘さんって? なんで結婚してないんですか?』

『そう言われても、相手が居ないと結婚できないでしょ!』

『“こうなったら? 私と結婚しますか?”』

『・・・い、いや? 俺はまだ誰とも結婚する気がないから、ごめん。』

『“じゃあー私! 橘さんの隣の席予約しててもいいですか?”』

『あぁ、まあ、今だけならね、』

『今だけでいいんです!』

『・・・・・・』





・・・はじめは、職場だけでしか話す事はなかった。

でもそのうち、俺の住んでいるマンションの近くでちょくちょく会う

ようになった。

この女性は“偶然ですね?”と言うのだけど偶然でこんなにも会うモノなの?

やたらと俺と普段の生活の中でこの女性と会う事が増えていく。

そのうち、俺のマンションの部屋番まで調べてピンポンを押さないかと?

ヒヤヒヤして夜も眠れないよ。

俺はこの女性がどうも苦手らしい。

職場でもやたらとみんなの前で、スキンシップを取ってくるし。

どうでもいい話なのに、何故か俺だけに話してくる。

仕事帰りも俺と家の方角が一緒だからと言って俺と二人で帰りたがるし。

なんか怖い! 職場の昔からの同僚にもこの女性が俺は苦手だと話している。



ただ、パートの人達は面白がって俺とこの女性をやたらとくっつけたがって

いるみたいなのだが......。

“俺が唯一! 独身男性だからなのだろう。”

俺はこの女性がタイプではないし、付き合う気もない!




『もういい加減、俺に付き纏わないでほしんだよな。』

『“あぁ、ストーカーおばさんか?”』

『そう!』

『ズバッとお前が言わないからだよ! お前は優しすぎるんだ!』

『・・・傷つけてまで言う事か?』

『このままだと、“お前、ストーカーおばさんと結婚までもって行かれるぞ!”』

『まさか?』

『パートの女性達は、お前をストーカーおばさんとくっつけたいみたいだしな!』

『そんなの嫌だよ! 俺だって好きな女性のタイプぐらいあるんだ!』

『じゃあー彼女でも作れば?』

『・・・どうやって?』

『仕方ない! オレがお前の彼女、紹介してやるよ!』

『・・・で、でもさ、』

『勿論! タイプじゃないなら断っていいから!』

『・・・あぁ。』

『あのストーカーおばさんよりはマシだろう!』

『まあな。』





 *




・・・という事で、俺は会社の同僚から女性を紹介してもらう。



『・・・は、初めまして。』

『はじめまして!』

『な、なんか? 緊張しますね。』

『そうですね。』

『何処か行きませんか?』

『あぁ、車で来てるんでドライブとかどうですか?』

『それ、いいですね!』




初めて会った時は、お互い緊張して殆ど口数がなかったのだが、

車でドライブしている中で彼女と少しづつ話せるようになった。

彼女はもともとは、明るい女性でよく笑う女性だった。

俺はそんな彼女が凄くステキだなと想えた。



今では時間がある時は、彼女と一緒に車でドライブに行く仲になった。

いつ? 彼女が俺の彼女になってもおかしくない仲にまでなっていく。

俺は彼女の事で頭がいっぱいで、職場のあの女性の事はすっかり忘れていた。




『最近橘さん? 一人でニヤニヤしてるでしょ! いい事でもあったの?』

『いい雰囲気の彼女ができたんですよ。』

『えぇ!?』

『“今度会ったら? 告白しようと思って!”』

『・・・どうせ上手くいきませんよ、』

『えぇ!?』

『いえいえ、頑張ってくださいね。』

『はい!』




・・・この女性は、

俺にやたらと付き纏う職場のパートで中年の女性、なんで俺なんだ?

俺は既に俺好みのステキな女性と付き合える一歩手前まできている!

俺は彼女と付き合いたい!



だから俺の事はもう忘れてくれないか、、、?

“俺のストーカーおばさんよ!”

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