第44話 レイカの気がかり


「ふんっ、なんだタクミのやつ! あんな色気づいた女にふらふらと」


 レイカは一人きりの帰り道、ぶつぶつと文句を言いながら長槍を振り回して歩いて行く。


「絶っっっ対、怪しい!」


 レイカはまだビャクヤを疑っていた。


 では具体的に何が怪しいかと言うと、特に思いつかない。


「いーや、何かあるはずだ」


 そうでなければレイカはここまで腹を立てないだろう。


いて言えば、性格が良くないな。私の村を小馬鹿にした。それから、タクミにしがみついて……タクミもタクミだちょっと肌を出しただけで、あの女に鼻の下をのばして」


 またタクミの悪口になる。


 ふと気がつけば、ビャクヤを助けた森の近くまで戻っていた。


「…………」


 レイカは立ち止まって首を傾げた。


 ビャクヤを助けた時、彼女の身体を覆うほど乗っかっていた若草色の蛇は、毒もないし人も襲わない。


 ——蛇達はなぜ落ちて来た?


 あんなに大量に。


 レイカも見たあの光景は、今にして思えばおかしいのだ。


 ビャクヤは気を失って倒れていた。その上に身体を覆い尽くすほどの大量の緑色の細い蛇——。


「繁殖期でもないのに、あんなに群れるか?」


 レイカは気になって、ビャクヤを助けた森へ入っていった。





 つづく

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