第27話 泥だらけの二人
白蛇に礼を述べて、タクミとレイカは沼地を離れた。綺麗な水場があると白蛇に教えられ、そこへ向かっていた。
なにしろタクミは全身泥だらけでそれが乾きかけている。歩きながら乾いた泥の剥がせるところを落として行く。
レイカはそれが気に入らないらしい。
「跡をつけられる」
「誰も僕らを追って来る理由が無いよ」
「タクミ、忘れてはいけない。我々が人族であるだけで狙って来る種族もいる」
——そうだった。
たしか魔族とかだったな、とタクミは思い至り泥を剥がすのをやめた。そういえば白蛇は会話が出来たが魔族なのだろうか。
「白蛇殿は——神族かな」
神族とは『神に近い存在』だと言う。古くからこの大地に住み、長き営みの末に他者と関わらずに生きる者の事だ。ただ決して神では無い。
「白蛇殿は強く、かつ他の生き物に優しい。その知識もそこが知れぬと聞く。私は子どもの頃一度ご挨拶に伺ったことがある」
「知り合いだったのか」
「幼かった私の事も覚えておいでだった……。あ! 水だ!」
そう言うとレイカはタクミの手を取ると走り出した。さほど大きくは無いが綺麗な水を湛えた川が見えて来る。
「わ、わわっ! レイカ、待って」
「ええい、さっさと洗って来い!」
笑いながらレイカはタクミを川に突き落とした。
つづく
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