鉱石の方舟〜ミネラレ・アルカ〜運命の変転は三度まで

halhal-02

第1話 プロローグ 出発


 ——座標、一致。


「了解っと」


 ——転移まであと三分。


「……こうなると三分って長く感じるね」


 ——何か言い残す事でも?


「つれないね。厄介ごとを押し付けられた僕に、少しは同情してくれないかな」


 ——……無事に戻って来れば、将来は約束されてるでしょう?


「無事に戻って来れるならね。帰還方法がわからないのに送り出すなんて……そう、君は僕の死刑執行人だよ」


 ——冗談はやめて。そんなつもりは毛頭ないわ。


「戻ってきたら僕は君より歳上になっているかも」


 ——…………。


「最低限、返事くらいして欲しいね。それとも、それが君達の礼儀なのかい?」


 ——テラヘルツエネルギー充填。ヴォイド、開きます。


「厄介払いが出来て、嬉しそうだ」


 ——ひねくれるのはよしなさい。転移ポッド、射出!


 突然、身体に圧力がかかり、乗っていたポッドがぐるぐると回転するのがわかる。この不快な回転が収まるまで数十秒我慢すればいい。あちらの大気圏に入ればパラシュートが開くのだから……。


 酔いそうな揺れの中、僕は最後に彼女が放った一言を噛み締めていた。


『ひねくれるのはよしなさい。転移ポッド、射出』


 それが、僕が恋した従姉妹いとこがくれた別れの言葉だった。




つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る