第4話 サヨウナラ
「お待たせ」
「お待たせしました」
「ううん、今来たところだから」
今日は私が一番最初に来て、二人を待っていた。
今までとは逆。
私を大切に想ってくれている貴女たちを待たせるのは、今日で終わり。
多分、これから一生訪れることはない。
私が選ぶ道はそういうことだから。
私と春雨はウインナーコーヒーを、緑雨ちゃんはコーヒーを頼んで、メニューをテーブルの端に置く。
あー、美人姉妹が並ぶと絵面がすごい。眩しくてたまらない。
決して夕日のせいじゃないよ。
この席はカフェの一番奥にあるからね。鮮やかなオレンジ色は届かない。
それでも目をそらしたくなるほど暴力的な光が見えるような気がするのは、目の前の姉妹のせい。
芸能人じゃなくても生きてるだけで輝きを放ってる人っているんだよ。
それで、滅茶苦茶関係ないんだけど、春雨はなんで今日リュックなんだろう。いつもハンドバックなのに。
うーん。わからん。
考えても意味ないし、今日は関係ないし、前置きはここまでにしよう。
「今日来てもらった理由なんだけど、もうわかってるよね」
「うん。告白の答えだよね」
「わかってます」
頷いた姉妹を前に、静かに深呼吸をする。
これから私が紡ぐ言葉は、どう足搔いても彼女たちを傷つける。勿論自分も。
「毎日毎日考えた。授業中も、バイト中も、ただ歩いているときも。どちらを選ぶべきか」
「うん」
店員さんが運んできてくれた飲み物に口をつけることなく、春雨は頷いた。
「ダラダラ話を引き延ばすのは好きじゃないから、返事をするね」
二人が黙って私を見つめる。
本当にごめん。
どちらも選べない臆病で最低な私を許して。
「私は……どっちとも付き合えない」
頭を下げた私に対して、二人は相変わらず無言だった。
傷ついてるんだろうな。
謝っても謝っても足りないことはわかているし、許しを請うつもりはない。
貴女たちの想いに応えられない私が悪いんだから。
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