美人姉妹は手に負えない
佐久間清美
プロローグ 姉にフラれた1/2
「別れよっか」
「……は?」
折角の日曜日。雲一つない晴天。
お天気お姉さんが「今日の降水確率はゼロ%です」と楽しそうに話すのをバッグに、私の恋人――
「私、なにかした?」
突然別れを告げられた理由がわからない。
思わずフリーズしそうになる頭を必死に動かして記憶を漁る。
私たちは同棲していて、昨日の夜はそれなりに楽しんだし、彼女は妖艶で美しかった。
向日葵みたいに明るい笑顔を見せてくれていた。
それなのに、一体何故。
「ううん。なにもしてないよ。
彼女が首を振る。
「じゃあどうして」
「……」
私の問いに、彼女は視線を
多分、慎重に言葉を選んでいるのだと思う。
私たちが出会ったのは大学。
オリエンテーションで隣の席だった私たちは、他に知り合いがいなかったのもあってすぐに仲良くなって。
彼女の方から告白された。
「朝日のことが好きなの」
頬を赤らめながら想いを告げてくれた彼女の表情を、昨日のことのように思い出せる。
彼女の愛を受け入れたのは、私も少なからず春雨に対して愛情を抱いていたから。
友情よりも濃厚な感情を。
それからの毎日は本当に楽しかった。
趣味趣向が同じで、嫌いなものも同じで。
大学までバスで10分という近場に住んでいた私の家に彼女が転がり込んできたのはいつだっただろう。
覚えていない。
「あのね」
彼女との蜜月に思いをはせていた私は、春雨の呟くような言葉で現実に引き戻された。
「私たち、今年から4年生になるでしょ。卒業したら、それぞれ別々の道に進むことになるよね」
「うん」
一緒の会社に就職できたらいいな、なんて考えていたのは私だけだったみたいだ。
「そしたらさ、職場とか飲み会とかで新しい人と出会うよね。仕事はきっとしんどいだろうけど、希望に満ちあふれてる」
「……」
今度は私が黙る番だった。
なんとなく、彼女が言いたいことがわかってしまったから。
「だけど、私たちの関係には――」
「未来がない」
春雨の言葉を遮って発した言葉は、正解だったみたい。
彼女は静かに頷いて、
「いつかは認められるかもしれないけど、私たちは家族になれない。子どももつくれない」
泣きそうな顔で言った。
ねえ、貴女がそんな表情をしていたら私が泣けないじゃない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます