💃銀髪幼女のノンストップ異世界学校作り。ヌケてる超有能ハケンのプロ、危険な極小国で奮闘す。0から資金を稼ぎ、世界平和を目指す。脳内ブレインの先生方ご指導お願いします!駄女神はノーセンキュー

🅰️天のまにまに

第1話:異世界転生憑依したアラフォー、ハイパーハケン女性の決意表明📢


「このままでは、この国は滅びます!」


 ばぁああああ~~ん!!


「⋯⋯了解した。それで?」


 し~~ん⋯⋯


 私、ユーリア。

 プレゼン用に自作したボロボロの黒板モドキを平手打ちして必死なアピールをした。


 銀髪三つ編みが尻尾のように大きく揺れる。


 シスター修道服という勝負ドレスのフードが、スポンと頭を隠すくらいの気迫をこめた!


 しかしそれを涼しい顔で受け流しやがりましたよ、このレオナルド公子様は⋯⋯


「ですから、国の根幹は教育なんです! 人への投資は国の使命、予算を惜しんではいけません!

 最低でも国家予算の15パーセントは使わないと!!」


 と、力説するけど、この国の他の首脳陣は興味がなさそうだよ。


 アクビの声が連鎖していく。


 首脳たちは、完全に眠ってる農家の爺さんがほとんど。

 日本の国会。いや、村の寄り合いかい、ここは!


 こんなに可愛らしい乙女が真摯に説明しているというのに、なんちゅう無責任首脳部。



 この国。

 私が今住んでいる、というか御厄介になっているラインシュタイン大公国は、この大陸で支配権を争っている二大国のちょうど中間あたりにある。

 人口は約1000人。


 実は私、つい最近ここへ引っ越してきたんだ。

 転生憑依とも言う?


 ぽわぽわした女神の気まぐれによって、六歳のユーリアちゃんの身体を乗っ取っちゃった。


 で、ユーリアちゃんはというと、今、女神見習いという役職に新規採用されています。


 ここは21世紀の日本からみたら異世界の、まるで産業革命真っ只中のような地域。


 あれですよ。

 ドイツとフランスがアルザスとロレーヌ地方を、その地下資源をめぐっての奪い合い戦争をし始める時代。


 そのど真ん中の東側スイス寄り。そこにある山村。

 ヤヴァい場所にあります。


 ドイツ側が新興の軍事強国、ローゼンフルト帝国。

 フランス側が伝統と文化を誇る、フラマン王国。


 その間で、この小国が今まで無事でいられた理由は、占領してもなんの利益もないから。


 あるのは古代神聖帝国の末裔だという権威だけ。国同士のいさかいがある時なんかに仲裁役として名義貸しをするという存在。


「質問があるのだが」


 ダルダルな大公国首脳の農民爺さんの中、さっきから真面目に私の話を聞いてくださっているかた。


 たった一人だけ貴族風の衣装を着た、クール系アイドル顔がまぶしいけど眼光に圧のあるレオナルド公子様が声を上げた。


「はい! 何でも聞いてください」


「一応、言っておくが我が国の予算、というか使える金はほとんどない。大公の第一公子である私の使える金ですら一カ月で精々金貨一枚だ」


 この漆黒ロングヘアのクールビューティ公子、私をここでプレゼンしてもいいとチャンスをくれた人。レオナルド公子様。

 その人が厳しい現実を突きつける。


 だけど負けない。

 負けるわけにはいかない!


「はい。だから初期費用は自前で稼ぎます。いくつか簡単に作れて皆が欲しがる商品のアイデアがありますので、それを使って予算を増やしましょう」


 よくある異世界転生で使われる技術チートを目いっぱい使わせていただくよ。


 私はジャパニーズお辞儀をして、自分が着ているダブダブ修道服の中から、ニッコリ幼い童女スマイルを浮かべる。


 しかし。ジーさん達は口々に


「どう見てもやはり任せられんな」

「うちの孫よりもちっこいの」

「十歳にもなっておらんじゃろ?」

「いくらレオ坊ちゃんの紹介でもなぁ」


 転生前はアラフォー、実年齢は聞かないのがマナーだよ。

 教師を手始めに、二十種類以上の職業を経験してきたハケンのプロ。


 け、決して職場を追い出されてばかりなわけじゃないんだからね!


 それが今は百センチにも満たない六歳の幼女になっているのだ。

 銀髪三つ編み修道女見習い。


 この姿でいくら優秀なプレゼンを行っても、だ~れも聞いてくれないよね。


 フリフリドレスという最終兵器リーサルウェポンがあれば、じーさんの目もこじ開けられたのか?


 このダブダブ修道服では迷彩服に等しいよ。


 でも、見捨てずにチャンスをくれるクールビューティ殿下。


「爺たち、私もこのままではいけないと思っている。

 大国間のいさかいは深刻になっている。

 ワラにもすがる思いでいろいろな手を毎日考えている。

 ……だからユーリアよ、予算と必要な口利きはする。

 毎月金貨一枚だ。これ以上は出来ん」


 なんという名君!

 ご自身のお小遣いを全部私に投資するなんて。


「だが、これは国としての事業ではない。私の趣味という事にする。なにか問題があったらすぐに切り捨てる。そのつもりでいるんだな。

 それから期限は一年間。

 その間に成果を出してみよ」


 あ、訂正。

 やっぱ無茶振りする人だ。

 一年間で何ができるのよ?


「どのような成果を期待します? レオナルド公子さま」


 メガネなしゲンドウポーズでこちらを見つめていたレオナルド公子は、一回目の無茶振りをぶっこんで来た。


「お前の世話になっている修道院とその孤児院の独立採算。そこの孤児たちが稼げるようになるだけの知恵を身につけさせる事。

 それができたらその収入を全部使ってよい」


 一年で独立採算ですと?


 今修道院が、どれだけ国民から寄付をされて維持されているかわからないけど、これを自前の財源を構築。

 それを孤児だけでやれと?


 一瞬、クラッときたけど答えは決まっていますよ。


「了解しました。感謝いたします。必ずやこのチャンスを生かして、この国、いやこの世界に教育の機会均等を実現いたします!」


 21世紀日本での数々の問題の原点は、その教育にあると思っている。

 このまま列強の戦いが近代戦へと移行すれば、富国強兵のため必ず均一な義務教育が始まる。


 そして教育はどんどん歪んでいくのだ。


 勝ったものが世界を支配する時代。

 それを防ぎたい。


 私はこの異世界で、歴史の必然性に逆らいたい。


 優秀なものが弱いものの味方になる世の中にしよう。

 そのために私が理想とする学校を作る。


 未練を残して死んだ中年元女性教師に、転生役女神の気まぐれで与えられた非常に細い糸。


 失った命の代わりとして貰えた大事なわらしべ。


 異世界でチート知識と技術を使い放題のチャンス。


 この希望の糸をたぐって、みんなが進んでいける太いロープを紡いでいくんだ。


 私一人では何もできない。


 仲間を作ろう。

 いなければ育てるんだ。


 だから第二の人生、まだ肉体年齢六歳の私が、どこまで可能性の糸をたぐり寄せられるか。


 地球にいる大変な目に合った教え子のみんな。


 先生頑張るよ。

 君たちのような苦しみを味わう人を、この異世界の未来で出さないために。


 これから私ユーリアは、この異世界を全力で走っていこう!


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