第17話:結婚しました……が




 鬼人の王であるティムール様と、その番であるとても小柄で可愛い鳥の獣人のディープローズ様から、お祝いの言葉とプレゼントをいただきました。

 ディープローズ様はハクブンチョウという小鳥の獣人なのだそうです。

 ディープローズ様からも、サファイア様と同じような小袋を、やはり「明日の朝開けて」と渡されました。

「私も少し人間の血が入ってますので」

 そう言って笑ったディープローズ様に、意味も解らずヘラリと笑顔を返してしまいました。


 ティムール様はディープローズ様に鳥串をオススメしてます。

 何となく微妙だと思うのは私だけでしょうか?

 ディープローズ様が笑顔で頬張っているので、鳥類と鳥の獣人はまた別モノなのかもしれません。



 竜人の王のローガン様は、おひとりでの参加です。番様は同じ竜人族で、今は抱卵ほうらん中なのだそうです。

「まぁ!おめでとうございます!卵を温めているのですね」

「いや、冷やしている」

 ローガン様に即訂正されました。

 思い込みで恥を掻いてしまいました。

 でもローガン様は怒っておらず、なぜか笑顔です。


「性格悪いよねぇ。他種族が間違えるの判っててわざと最初に教えないんだよ」

 カリナン様が呆れた口調で言います。

「抱卵中にしか出来ない悪戯いたずらだ、許せ」

 ローガン様がカリナン様の言葉を認め、笑います。

 王様達と言えど、普通の友人同士のようで、ちょっとホッコリしてしまいました。



 妖精の王のテオドラ様は、ご家族での参加です。

 番である蝶のように華やかなウパラ様、テオドラ様によく似たご長男のバイーア様、とても妖艶なご長女のアンドラ様と華やかで艶やかな一団となってます。

 お子様二人は、カリナン様よりも年上だそうです。

 え?テオドラ様はお幾つなのでしょう?


 アンドラ様は既に結婚して、お子様もいらっしゃるそうです。

「お子様達と一緒じゃなくて大丈夫なのですか?」

 子供と聞いて小さい子を想像して質問したら、大笑いされてしまいました。

「子供と言っても、貴女の倍は生きてるわよ」

 種族の差って、私が思っているよりも大きいようです。

「妖精族は特に長生きだからね」

 カリナン様がコッソリ教えてくれました。



 食べて飲んで踊って、皆楽しそうです。

 私も、唐揚げと鳥串は隠れて食べました。

 後はグーラが差し入れてくれたクッキーで、お腹を満たしました。

 あの後も何度かコッソリと渡してくれたのです。

 色々と味が有り、途中でチーズ味とかのしょっぱい系も入れてくれたのは、さすがとしか言いようがありません。




 空が薄紫色になり、公園内の街灯が点いたのを機に、披露宴はお開きになりました。

 私は、いえ、私達は、【天人の国】にある新居へと向かいます。

 まぁ、カリナン様の魔法で一瞬なのですけどね。


 そして初夜です!

「どうだろうねぇ……」

 私がお風呂からあがって寝室へ行くと、カリナン様が難しい顔をしてベッドの上であぐらをかいて座ってました。

 ちょ!全裸です。


「カリナン様!?もう少し慎みを持ってください!」

 手近にあったクッションを投げつけると「あぁ、すまない」と、そのクッションで大切な部分を隠します。

 それもどうかと思いますが、とりあえず近くに行き、ベッドの端へと腰を下ろしました。


「どうかしました?」

 顔を覗き込むように質問をすると、眉間に深い皺を刻んだまま、私と視線を合わせてきました。

「ねぇ、前に話した魂の番の話を覚えている?」

 えぇと、人間が番と子作りをすると相手の種族と同じ寿命になるってあれですよね?

 それをそのまま伝える。

「まぁ正確には、人間に限らず寿命の長い方の種族と同じになるんだけどね……」

 カリナン様が目を伏せながら訂正する。


 そういえば、カリナン様は番が同じ寿命になるとしか言っていなかったわ。

 そこで気が付いた。

 カリナン様の眉間の皺の理由を。


 私達は、そもそも番では無いのです。



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